見られている世界

アイドルが究極的に「見られる」職業であると同時に、多くの人を「見る」職業でもあるということ。

「アイドル=見られる人」という先入観に一面的に囚われ続けて早三十余年、それを自明のこととして疑おうともしなかった。

アイドルは「見る人」。それを教えてくれたのは吉木さんです。

こと仕事の運び方に限っていえば、あくまで大人の人たちのなすがままなのかも知れない。昨年2010年の誕生日イベントでお客さんからアンコールを要望されたとき「えー、どうしよう?? ただ、わたしに主導権はいっさいないのでwww」って自ギャグ的に戸惑ったりしていた。

それでももちろん一人間、能動的な主体としてきっちりアイドルしてる。己の努力と才覚と知見で、道を切り拓いてきた。

吉木さんに見えている地平をずっと考えている。


動物的勘、敏捷性、集中力などに著しく優れている吉木さん。いわゆる右脳タイプの人だと常々感じている。

その能力を下支えしているのは、ひとえに透徹しきった「眼力」。

いまは時間がなかなか取れないのだろうけど、お絵かきが趣味。キャンパスナイトフジやWeb番組、イベントなどで、淡い人物画、リアリティを追求した似顔絵、そして得意の「BL紙芝居」を見せてくれた。

これまで何百枚、何千枚と積み重ねてきたか知れない。お絵かきで培った眼力が、アウトプットと直結している。

人のことをむげに貶めたりすることはめったにないけど、たまに素敵なスマイルを浮かべながら「気持ち悪いwww」「くだらないwww」とか直接的な本音がこぼれる。簡単に折れやすそうでいて、言葉を濁しながらも「どうなんですかね??」と真正面から疑義を呈する。

そのものの本質を見抜かないことには、描写も批評もままならない。ひとりの時間、自分と向き合うお絵かきの中で、吉木さんの批評性はひそやかに練磨されてきた。



2010年10月4日

2010年10月27日


ちょっとした空き時間にもお絵かきがしたい様子で、上の絵がその例。あふれだす絵心。

また昨年12月に行われた撮影会の休憩時間、ファンが見守る中でおもむろに塗り絵を始めたのには、心底ほんわかさせられた。


眼力といえば、番組やライブなどで共演者の目を黙ってじーっと見つめることも多い。握手会ではお客さんひとりひとりを凝視。現場でファンをじっくり見る人は強い。ファンも単純に「レスくれる」とか「リアクションがいい」とか、それだけ意気に感じる。

アイドルさんの職業マナーとしてはいずれも基本的なことだろうけど、けっこうな胆力を要するものと思う。私生活では引っ込み思案だという吉木さんなだけに、なおさら。

「他人のことなんか気にしない」「オレがオレが」という芸能人の人も多いだろうし、アイドルでも「天真爛漫」「マイペース」みたいなことが賞揚されることもある。

でも他人を観察し、ひいては自分自身を客観的に見つめることが、より高みにのぼりつめていくための秘訣だろうと思う。もともと司会業とか芸人のツッコミの人って、対象をちゃんと見つめないことには最低限の仕事さえ成立しない。ある種のふてぶてしさも必要。

一流の見巧者こそ一流の被写体たり得る。吉木さんもその中に入ってしかるべき素養を持った人だと思う。


最近「カメラが欲しい」としきりに言っている。もう手に入れたでしょうか。

「カメラ女子」とか「メガネ女子」なんて、ともすれば表層的なレッテルで、世にフェティシズムの一端として流通されることが多い。またスクールガール決め込んで黒縁メガネですてきデザインのカメラぶら下げて、なんて、絵になりすぎる。想像するだけでお似合い。

「プライベートの目標は一人旅」。そう年始のブログで綴っていた。

被写体としてではなく、あくまで一カメラガールとして。時間がとれたら吉木さんにはうろうろ世界に斬り込んで、視界の地平をさらに押し広げて欲しい。