吉木りささんと言葉のない世界に行きたい

「言葉」というものはひょっとすると何の価値も持たないのではないだろうか? ということを、吉木りささんのファンになって痛感している次第です。
吉木さんは上記「エンタテイメントDASH」2010年9月号の表紙でもわかるように、ルックスもスタイルも超絶的によすぎてしょうがない。歌も完全にプロでちょっとグラビアイドルの域を超越している。それでいて性格も温和で謙虚で礼儀正しくて、他人に決してイヤな思いをさせません。絵心もあるみたいで、レギュラー出演していた「キャンパスナイトフジ」でもBL紙芝居を披露してましたし、こないだバースデーイベントではファン4名をステージにあげて1人ずつ丁寧に似顔絵を描いたりしてました。めちゃくちゃ上手いってわけじゃないけど、このイベントで似顔絵の完成品を「はいっ!」と客席に向けた瞬間に「おぉぉぉー!」と低いどよめきが沸き起こるくらいの上手さではありました。
その一方、吉木さんの目に見える弱点を僭越ながら挙げるとすると、正直お喋りがあまり得意ではない。もちろん最低限の仕事はできるわけで、ラジオに出ればそれなりにペラペラ陽気に喋るし、ライブでもひとりでMCをきっちりこなして笑いを取ったりもしてました。でも聞いててハラハラすることが圧倒的に多いのです。吉木さんは劇団ひとりのラジオ番組「劇団サンバカーニバル」(FM-FUJI)のアシスタントを務めていて、最初のうちは劇団ひとりも耐えていたようなんですが、なんかもう最近ひとりから「あのー、吉木さん、すごい噛むよね?」みたいに辛抱たまらず毎週のように指摘される状態になってしまいました。番組オフィシャルサイトのアドレス告知で「スラッシュ(/)」と言うべきところをいつも「スラッス」と言ったり、数字の「9」を「くー」って言ったり。そういったことが毎週のようにあり、またなかなか改善されないのです。
この問題は決してお喋りだけじゃなく、吉木さんのオフィシャルブログ「吉木日和」のほうとも地続きのこと。たしかにこのブログは絵文字や顔文字に頼ることもなく、載せてくれる画像も雑誌撮影の水着オフショットとか私服とか本当にいちいちすばらしくて、一読者としては本当に大好きなブログなんです。だからといって文章も超すばらしいかといえば、なんか事あるごとに「にゃんにゃん」とか「はふぅ」とか「ぬぼーん」とか言ってて、よく意味がわかりません。自分のグラビアが掲載されている「ヤングチャンピオン」についても「ヤングチャンピョン」と記載されています。
「もしかしてこの人はあまり『言葉』というものに依らずに成長してきた人なんじゃないか?」という気持ちが日増しに強まっている昨今です。
ぼくは人としての真心に欠ける部分があるので、どうしても人のことをパラメータで測ってるようなところがあります。吉木さんの場合、ルックスやスタイル、歌声、絵心といった「芸能」分野でのあまりの常人離れしたすばらしさの代償として、「言葉」を用いる能力にかなりの弱点を抱えているのではないだろうか、しかしそれが一人間のパラメータ値としてのバランスを取ることにもなっているのではなかろうか、と思っています。
ただし吉木さんは歌うときには完全に別人。先月のバースデーライブではその迫力の歌声に本当に圧倒されましたし、ふだんのおぼつかない喋りの印象を微塵も感じさせないほど、歌詞もはっきりと言語明瞭で聞き取りやすい。「歌だからこそフルパワーを解放できる」という気持ちはよくわかります。ひょっとすると「自分の言葉」というものをあまり信用していないのかも知れません。
ところで、ぼくが吉木さんを好きになってる理由として「まったく話が噛み合わないから」というのがあります。これには逆説的な理由があって、もし万が一、相性ばっちりとかでトークも抜群に咬み合って、万が一本気で好きになっちゃったらマズいじゃないですか? その点、吉木さんとはまったくつながる部分がない。年齢も出身地も趣味も、そもそも生きている世界が違う。さらにこれまで何度も握手会とかで話していていよいよ確信していることには、吉木さんも自分も引っ込み思案の性質で、喋りベタで、基本的に敬語で、お互いによそよそしく、いつも社交辞令で終わってしまう。常に平行線です。だからこそ深入りするような気持ちにならず、安心、と自分にセーブをかけたりしてるのです。わりと他の現場系のアイドルファンの人って大胆な人が多いらしくって、どうやらグイグイお互いの関係性を築いていったりしてるらしいんですよね。人間関係が成立してる人が多い。ぼくも吉木さんにはいい加減顔を覚えてもらってはいるとは思うんですが、特にアピールをしていないので別に名前で呼ばれるわけでもない。向こうから「お名前は?」なんて聞いてくるわけもありません。吉木さんが他のファンとは親しげに和気あいあいと話しているのを見て、いつも臍を噛んでいます。
そんな中、最近、妙なことに気づきました。
今年6月に開催されて自分も赴いた「グラビアクイーン撮影会@豊島園」。当サイトにもレポを書きましたが、このイベントに吉木さんは出演していたんですね。土曜日の午後のこと、撮影会の合間にも物販の時間が設けられており、ぼくも吉木さんにサインをもらったり握手をしてもらったりしました。このとき吉木さんは明らかに忙しそうで、いつも以上に会話がこれでもかというくらいまったく噛み合わず、イベント自体は実に楽しいものでしたが若干の心残りを感じたのも事実です。
その日の夜、代々木STUDIO VIVIDでの「劇団サンバカーニバル」公開生放送を終えた吉木さんに対して、ぼくは「撮影会楽しかったです!」と挨拶しに行きました。すると吉木さん「あー! 今日はおつかれさまでしたー!」。たしかに顔は認識されている。それはいいんです。で、ここからこの文章はドン引きされることを覚悟で綴っていくんですけど……なんていうんですかね、この日この夜この瞬間ばかりは、一日の時間をともに過ごした後、お互いに惹かれあって念願の逢瀬を果たしたというか、特にぼくのほうからガッツいていくわけでもなく、吉木さんから迫ってくるでもなく、なんかこうただ自然とこういつの間にか、あのー、握手をしていたんです。握手を。どちらともなく。
ここで肝心なのは「握手してください」と頼んだわけでもなく、なにより“別に握手会でもない”ということです。言葉もなく、それはまるでN極とS極が導かれ合うように……。
この感覚を引きずって、さらにちょっと頭おかしくなりそうな事態が起きたのが先週、8月7日のことでした。東京・品川で「東京アイドルフェスティバル(TIF)」が開催されたこの日、吉木さんはTIFのイベント2カ所に出演。それぞれを最前列、2列目というバカみたいなポジションから観覧したぼくは、イベント終了後の物販でも信じられないほどかわいい森ガール風の吉木さんに圧倒されながら、本当にどうでもいいような話をして一度握手を終えたのです。これはCDを購入したついでという感じのお仕事的なもので、まだここまではほわほわしながらも平常心を保っていたんです。
焦点は、やはりこの日の「劇団サンバカーニバル」放送終了後。吉木さんは本当に人気で、ファンからのプレゼントを渡す行列が絶えません。軽く挨拶だけしようとしても時間すら取れない。15分くらいファンと触れ合ったあと、さすがにマネージャーさんも「そろそろ時間です」ってファンとの逢瀬を打ち切ろうとします。しかし「さすがに今日挨拶できないのはマズい」と思ってしまったぼくは、吉木さんの前にむりしゃり出ていって「今日は吉木さん、杉(ありさ)さんの共演が見られて楽しかったです」的なTIFの感想をボンクラ全開で言い放ちました。吉木さんは「わー! 今日はありがとうございます」。ほんとに虚礼的な会話です。
しかし、そのとき!
吉木さんがぼくのほうに向けて、右手を差し出してきたのです!
しつこく繰り返しますけど、別にぼくのほうから手を差し出したわけでもないですし、そして“これは握手会ではない”んです。他のファンの人たちの行動もわりとじっくり見ていましたが、別にそんな状態にはなってない。吉木さんのほうから! ぼくだけに! 手を差し伸べてきた! まただ!
据え膳食わぬはヲタの恥ってものですから、すぐに吉木さんの行動を察知して握手しました。だって向こうから手を差し出してきたんだもの。そしてここから超絶キモい握手観を簡単に綴りますと、他のアイドルに比べて吉木さんの手というのは、やわらかすぎず、かたすぎず、細すぎず、太すぎず、熱すぎず、冷たすぎず。完全に「肌が合う」状態です。本当になんのストレスも感じません。もっと言ってしまうと「身体の相性がいい」。
お互いに喋りは苦手ですし、会話も本当に弾みません。しかしこういうことが立て続けに発生すると、もはやこれは言葉を超えた動物的なところでお互いに「通じ合っている」と言っても差し支えない状態なのではないでしょうか? と思わずにはいられないのです。もう時空とか理屈とかぜんぶ飛び超えて吉木さんと言葉のない世界に行ってしまいたいですし、行ってしまったあとはなんかこうニャンニャンしてはふぅって感じになりたいです。わーッ!!

先月の吉木さん。超かわいくて言葉があやふや