「第8回ハロプロ楽曲大賞2009」と私怨

web の有史方々が年末に開催してくれる「第8回ハロプロ楽曲大賞2009」に投票します。

PerfumeAKB48ももクロだと束もの女性アイドルは活況を呈してますが、ただその中でも「楽曲大賞」という図抜けてデカい企画があり、なんだかんだ多くの新曲が発表されてきたハロプロは、依然として活動の基盤に「音楽」が流れ続けている。

で、そんなハロプロ楽曲の数々をこの2、3週間、ひたすら聞き倒してみたところ、「なんだよつんく♂絶好調じゃん」ということですっかり歯止めが効かなくなってしまいました。

というわけで以下に投票した 5 曲とその選考理由を書いていきます。


5位 世界は サマー・パーティ真野恵里菜/0.5pts

世界はサマー・パーティ

選考理由:
もともと自分はガチの KAN ファンなのでハロプロのピアノのお嬢様・真野恵里菜が KAN さんの作曲でシングル出し続けてくれたことが本当に嬉しくて仕方なかったんですよ。と完全に理屈から入った 5 位です。真野ちゃんは歌唱における「音域」が一オクターブ半とめっきり狭いらしく、その範囲内で曲をつくるのが大変だけど良い勉強になったなどとKANさん本人がラジオで言っているように(参照)、必ずしもド低音から A メロ入ってサビで一気に裏声バリバリ歌姫絢香ですヨロシクみたいな楽曲が作られてこなかったのはたしかで、その点ダイナミックさに欠けてはいます。そのかわり「ザ・オーダーメイド作曲」みたいないかにも真野カラーですよという作品は数多く量産されましたね。決してこれまでのライブでノリノリで騒ぎたいタイプのヲタにはさほどウケないかも知れない。そこへ迎合するかどうかは判断が迫られるところですが、KAN はそんなヲタとか気にすることもなかったと。「マノピアノ」「ラララ-ソソソ」「乙女の祈り」と激シブですからね。そんな中で適度にポップで平和なラブソング「世界は サマー・パーティ」はともすれば万人受けしかねないイイ曲です。とってもかっちりしてる。いわゆる「ダッダンダーン ダッダッダダーン」という「恋はあせらず」なモータウンビートのよくある作風ではあるんです。ただ細部を見ていくと A メロが始まるときの「♪シャラリララーン」という効果音には心が洗われるようですし、そこで真野ちゃんがクルって回転するのも抜群の清涼感ですね。天文学的にいうとあれは「自転」です。真野ちゃんというお星さま(スター)がアイドル宇宙空間で可憐にまたたいているんや! また間奏もギターソロとかじゃなくて「SUMMER PARTY」のアルファベットを一字一句言っていくギミックがなんとも平和。世界旅行をテーマにしている三浦徳子の歌詞にはご苦労なことにフレーズの「くりかえし」が用いられておらず、フルコーラス覚えるのはハロプロの歴史の中でも過去最高の難度を誇っているような気がします。「マチュピチュ」の発音や言葉の響きそのものがかわいい。真野ちゃんの歌唱ボリュームは控えめですが耳心地がいいですね。S/mileageとのダンスは楽しさ満点で手拍子とか身振り手振りが覚えやすい。健全です。しいてむりくり難癖をつけるとすれば、楽曲タイトルの「世界は」と「サマー・パーティ」の間に半角スペースが入るのが、字面的にどうなんでしょう。


4位 以心伝心〜キミはマブダチ〜/キャナァーリ倶楽部/0.5pts

エエジャナイカ

選考理由:
キャナァーリ倶楽部はいくらつんく♂プロデュースで作詞作曲もつんく♂が手がけてるつんく丸出しのプロジェクトとはいえ厳密にはハロプロの人たちではないですし、なんだか売れるのをワザと拒んでいるのか露出もさほど多くないため、そんなに聞く機会もありません。いわゆる一般へのユニットとしての訴求力はかなりつらいものがある。でもキャナヲタみたいな特異でありがたすぎる知人のスズキさんから CD を頂戴してしまったので、きっちり聞かせてもらいました。感想としては「ほぼ全曲がイイ!」。嘘偽りはありません。あやうくこのハロプロ楽曲大賞の投票もキャナ関係で 2,3 曲占めそうになりました。クオリティ的には本当に何曲も上位に食い込んできておかしくない出来。ただ、いかんせん一般層どころかアイドルヲタの人たちにさえさほど浸透してませんし、さすがに今年一年を締めくくるのに「キャナばかり」というのはありえない。なのでここでは絞り込んで「以心伝心」が 4 位です。ちなみに他にはまっとうなつんく♂的ファンク「KAPPORE エエジャナイカ」や、キャナじゃないのですが近似値の「めちゃモテ! サマー」(MM学園合唱部)も候補でした。つんく♂のリソースの注ぎ込み方おかしいんじゃないかと思ってます。どれもこれも空気感が 2002 年あたりのつんく♂ワールドを彷彿させるんですよね。モーニング娘。のアルバム「4thいきまっしょい!」や松浦亜弥First Kiss」あたり。「KAPPORE エエジャナイカ」なんてモー娘。の「インスピレーション!」の子孫です。この「以心伝心」はあややの「ドッキドキ!LOVEメール」やモー娘。「いいことある記念の瞬間」の空気にダブります。いいですよ「以心伝心」。イントロやアウトロのシンセリードの直球勝負だけど少しコネましたみたいな流れるようなメロも見事で、「イェーイ」とか「フゥー」とかのテンションは常套句ですけど無理なくハマってます。終始歯切れがよく、サビ前の似非ラップみたいなものもだいじょうぶ。「♪キミはマブダチ みんなトモダチ 明日へ旅立ち レッツゴー!」なんてきちんと韻踏んでますしね。陽気で能天気、朗らかで元気が出てくる曲ですよ。つんく♂先生も終始いっしょに力感込めて叫んでらっしゃいます。


3位 雨の降らない星では愛せないだろう?/モーニング娘。/0.5pts

プラチナ 9 DISC

選考理由:
ライブでの初出は今年よりもっと前の 08 年とかそれ以前なんですかね。かっちり定まった音源としてはアルバム「プラチナ9DISC」に収録されたのが初めてだけど、それ以前にもライブ会場ではすでに定番だったと。そんな曲の歴史は不勉強で完全にはわからないのですが、モーニング娘。のオリジナルアルバム収録曲として初めて聞いてみましたら、そのトータルパッケージとしての完成度にビビりました。曲の発生から時間があったせいなのか、歌唱やアレンジみたいなものがブラッシュアップされていった、ということなんでしょうか。厳かに始まる静かなピアノとキーンと張り詰めたシンセストリングスに始まり、貫禄さえあるようなワビサビ編曲。ちょっとしたクラシックのようです。つんく♂楽曲としてはめずらしくメロ展開に破綻がなく、かといって手癖感もさほど感じない。サビメロもキャッチーです。最後の最後まで徐々に盛り上がりを見せていって、無音に収束、やがて再びピアノとストリングス、吹奏楽的な音に包まれた静かなアウトロに戻っていく、という流麗な構成です。流麗すぎてつんく♂楽曲っぽくはないくらいです。また特に耳にいい意味での異物感を抱かせるのが 2 コーラス目が終わった直後のサビの繰り返しで、リンリンもしくはジュンジュンによる中国語の歌唱。いわゆる C メロ? 大サビ? 正式名称はわかりませんが、これまでのつんく♂楽曲では実現していなかったグローバルな盛り上がりを演出していてすてきです。この曲のためにジュンジュンとリンリン加入したようなもんだ、とは言わないけど、たとえばパラレルワールドの話でこの曲がシングルカットされて大ヒットしてたりすれば、そんな物語をもってしてジュンリンが加入したことによる反発などの諍いは一挙にカタがついていたのだろうと夢想します。実際楽曲としてはそれだけのタマです。ざっくりいえば「でっかい宇宙に愛がある」系の大きなことを歌った曲なので恋愛がなんちゃらとかではなく「24時間テレビ」でテーマソング的に歌われていてもおかしくはなく、どっしりした抱擁感と、それだけではない軽快さを兼ね備えている。つんく♂お得意の「説明的なタイトル」にはたいてい閉口しますが、この曲については字面がいいのでさほど気になりません。


2位 消失点 -Vanishing Point-/Buono!/0.5pts

Buono! 2 (通常盤)

選考理由:
なんですかこのせつなさは。こんな曲ハロプロで聞いたことないですよ。Buono! は基本的にポップでロックで若さ爆発だよでもかわいいんだよ的な非つんく♂によるハロプロらしからぬ曲を得意としていて、最近でこそつんく♂作曲がシングルで連発されていることが賛否両論を引き起こしてますけれども、基本的にいい曲ばかりなので逆にどれを選べばいいかわからないという混迷の度合いを深めたりしてるんです。もしかしたらアルバム全部がこの「消失点」みたいな曲ばかりだったら逆に別のギター激しくギュインギュインな曲をこの楽曲大賞に選んでたのかも知れない。でもこれまでにもありそうでなかったような曲調だとは思うんですよね。ただ地味とか暗いとかいうんじゃなくて、しっかり物語めいたものが一本芯を通していて、歌詞とメロとアレンジがすべて別の人の手によるものなのに世界観をかなり深い部分で共有しているうえで、Buono! の 3 人の声がいずれも憂いを帯びまくっている。一人称がサラッと「僕」だったりして男性目線の歌なんですが、少年っぽいというか両性具有的です。「あのとき」を振り返って「♪運命は変えられたのかな」というほのかな後悔と郷愁がフラッシュバック。ギターも鍵盤も弦もコーラスも全部少しづつ泣いてる。「引きの美学」ってんでしょうか。引いて引いて残ったのが寂寥感だけだったみたいな半泣き J-POP って感じです。作曲はシンガーソングライターの崎谷健次郎。知りうるところでは斉藤由貴バージョンの有名な「夢の中へ」のプロデュースを担当したらしく、オリジナルの作曲はもちろん井上陽水なんですが斉藤由貴ver.で崎谷氏はアレンジを担当したのだそう。作曲家としてもかなり膨大な量の歌手の人たちに楽曲提供をしているそうで、Buono! どころかハロプロに携わったのがこの一曲だけという縁はふしぎですが、いいぞもっとやれって気持ちです。


1位 Bye Bye Bye!℃-ute/8pts

Bye Bye Bye!

選考理由:
この曲を一言でいえば「虚無」です。サビでひたすら「バーバーバーイ」と連呼して前向きなメッセージを伝えようとしてはいるのですが、特に何もありません。「歌詞に何もない」ことにおいてここまでの高みはちょっと奇跡です。しかしつんく♂が作詞家としての魂を悪魔に売り渡した引き換えとして「Bye Bye Bye!」が手に入れたのは、ただ圧倒的な「音」でしょうが! ハイハイろくに音楽のことを語れもしない楽曲派うざいうざい。でも何百回聞いても最高でしょうこれ。℃-ute メンバーが携わっていないであろう部分で挿入されるコーラスの声もイントロからサビ前の一呼吸に到るまで一貫して何が歌われてるのかさっぱりわかりません。聞こえません。イントロは「kiss in a virtual」って言ってるの? サビ前は「stay control」?? 間奏は「get me up」??? 英語の聞き取りがまったくおぼつきません。これは自分の英語力のなさに起因する部分もある。しかし要するに音楽をたのしむのに言葉なんかいっこも要らないんですよというよくある達観ですら正当な言い分にしてしまえそうです。1コーラス目の B メロ「♪ダメダメ」「キラキラ」のところでこっそりウィスパーボイスで「ダメダメ…」「キラキラ…」って囁いてるのがくすぐってくるじゃないですか。矢島さんの「夏DOKIリップスティック」「青春ソング」に匹敵するサビの無理っぽい高音がたまらないじゃないですか。特にオーラスの「♪バイバーーーイ!」なんて完全に断末魔の叫びじゃないですか。また中高音域でピョコピョコと軽快に動きまわったり、ことあるごとにブレーキがかかったような濁りと鋭さの共存した「ビャー!」みたいな音色を奏でたりするシンセ打ち込みも耳に一抹の不快感も残さずジャストフィットすぎる。B メロの歌メロの後ろで鳴ってるリードのなんて心揺り動かすことか。一瞬のブレイクもメリハリも。なかさきちゃんの A メロ「♪踊りましょう」における機械的な声いじられぶりも。ラスサビ萩原舞の「♪コッコッコッコ イエーイ」もライブで自分で再現しちゃったのはウケましたね。トータルで若干大味な部分もありますが総じてつんく♂グッジョブ、そしてアレンジの平田祥一郎には絶賛の言葉も見つかりません。めくるめく打ち込み音源の愉悦に浸ります。で、ここからが私怨なのですが、ベストアルバムが発売される記念に公式的に℃-ute楽曲人気投票が開催されていて、結果的にこの「Bye Bye Bye!」が 20 位にも入らなかった、という「事件」がありました。正直ぼくは投票してないのでその結果については一ミリも文句が言えません。よみうりランド EAST でのイベントでも人気 TOP10 がカウントダウン形式でしかも全曲フルコーラスで披露されていて、いろいろとすばらしい試みでした。でも、ファンひとりが手持ち投票できる曲数が「 3 曲」あるってのに、「Bye Bye Bye!」入れない人がこんだけ多いってのはどう考えてもおかしいでしょ! 歌詞がダメすぎるからですか! というわけで今回完全あてつけの意味を込めまして ℃-uteの「Bye Bye Bye!」、ぶっちぎりの 1 位です!