28 日に放送されたナインティナインの「 99 プラス」(日テレ系)は鳥居みゆきがゲストの回の後編。
二週にわかれた前後編で鳥居みゆきは基本的にエスパー伊東みたいな「無茶なことを自信満々でやる(麺早すすり、エアホッケー絶対ゴールさせない等)」というお遊び対決にナイナイを付き合わせていてそれも良かったのですが、終盤はもうひとつの企画として「除霊体験した〜い!」ってことで鳥居みゆきが「除霊」されてました。
こんな企画はふだんはうさんくさいしあんまり笑い所もないのでスルーするんですけど、今回はナイナイの土俵の上で行われるといういろんな意味での安心感と、「除霊」された鳥居みゆきはいったいどんなリアクションを取るのかしら? という単純な興味があって見てみることにしました。
「除霊師」を名乗る神島さんという坊主が登場します。「これまで 2000 人以上を除霊してきた」という触れ込みです。
坊主は座っている鳥居を見るなり、まず「カンガルー、犬、猿、猫などの『動物霊』が憑いてる」と「念視」し、「動物霊が極端に憑依すると危ないから自分だけは見失わないで」とアドバイスを口にしました。
基本笑っちゃいけない雰囲気です。ナイナイもカメラに映っている限りではおおよそ神妙な面持ちで見ています。腹の中ではどう思っていたか知りません。
そののちお祓いみたいなことをして、鳥居に取り憑いているという「悪霊」を追い払おうとします。
坊主はなんか変な楽器みたいなのをシャラシャラ鳴らしながら、鳥居にわけわかんないお念仏みたいなのをブツブツと唱え始めます。辛うじて聞こえてくるのは「悪霊退散!悪霊退散!」。
だんだんお念仏のボリュームが上がっていきます。で、最後は「ドゥエーイ!」と一喝。
ひと山超えたあとで坊主は「悪いものみんな吐き出して」とか言いながら鳥居の背中をバシバシ叩きます。鳥居は悪霊を吐き出すかのように目を見開いて「ウワー!ブワー!」とやたら吠える。ここはさすがにナイナイも「出せ!出せ!」とか煽って笑ってました。
ぜんぶ「出した」あと、坊主が「がんばったね!」と呼びかけると、鳥居も「がんばった!」と自らを褒め称えます。
そして坊主が最後の最後に鳥居に近づいて、一言ささやきます。
ただしこの坊主の言いぐさが我々の想像を凌駕するものでした。
坊主「これから先、イケイケだよ!」
唐突にこのセリフ。
完全にウケ狙ってるとしか思われません。どこのトレンディードラマですか。
「シリアスから一転してくだけた雰囲気を演出する」という、まるでコントの基本のような、それを坊主がやるのだからちょっとズルい気もする手法をもって、坊主は「イケイケだよ!」と鳥居を激励するのでした。
さて、「お祓い」がすべて完了し、鳥居みゆきはいったいどう変わったのか? 焦点はやはりここです。
スタジオの照明が明るくなり、うつむいていた鳥居が顔をあげます。
鳥居「…なんですか? あ、どうしたんですか?」
矢部「爽やか!今までの鳥居みゆきと違う!」
鳥居「なんですか?」
岡村「ほんまに霊が取り憑いてたんや」
鳥居「そういうのちょっとわかんないです。あたしぜんぜん普段からこうなんで」
なんと鳥居がいきなり「イイ女」風の所作を見せ始めたのです。
文字どおり憑き物が落ちたようなしとやかさ。声もまるで小鳥のさえずりのよう。俗に言う「きれいなジャイアン」状態です。
岡村「動物霊の仕業だったんや」
鳥居「なにか憑いてたんですか?」
矢部「除霊したんですよ神島さんが」
鳥居「あ、神島さんとおっしゃるんですか。すいませんありがとうございました」
岡村「『これからは鳥居、イケイケだよ』」
鳥居「イケイケなんですか、ホントに?(口に手を当てながら)ありがとうございますー。すいませーん(ささやくような声で)」
岡村「それのほうがカワイイで鳥居さん」
これまで少なくともテレビではあまり見せたことのないような所作や言葉づかいをもって、鳥居みゆきは生まれ変わった。なるほど「除霊」の効果もあったというもの。これまで見せていた特異な風貌や言動は、すべて「悪霊」の仕業だったんですねー。
こうなるとネタの質も変わってきます。
矢部「ネタやってたの覚えてる? ヒットエンドラーンとか言って」
鳥居「あぁヒットエンド…はい」
岡村「できる?」
矢部「ちょっとやってくれへん?」
鳥居「♪ヒットエンドラーン ヒットエンドラーン バッティングセンターでバ・ン・ト(「セーラー服を脱がさないで」のフリで)」
岡村「かわいー!」
矢部「めっちゃかわいいやん」
鳥居「うふふ」
悪霊を追い払ってもなお「ヒットエンドラーン」ネタはやるんです。ま、このネタ自体が悪霊に取り憑かれた人のやるようなネタだという気もしますが…。
番組はエンディングを迎えます。
岡村「今度機会があったら来ていただきたいと思います」
鳥居「はい、また!」
岡村「ぬいぐるみは」
鳥居「あ、はい(落ちてたクマのぬいぐるみを駆け足で取りに行って拾い上げる)」
岡村「鳥居さんのぬいぐるみですから」
鳥居「じゃ、わたし先に、失礼します!」
岡村「また遊びに来てくださいね」
矢部「鳥居みゆきさんでしたー」
さっき放り捨てていたぬいぐるみを胸に、鳥居は颯爽とスタジオを後にするのでした。
めでたしめでたし…
…と思いきや!
鳥居「…ウワーーーッ!!」
急転直下!
一度は手に取ったぬいぐるみをふたたび床に叩きつけてドーン!
そしていつものようにわめきながらバタバタと走って、鳥居はスタジオから姿を消すのでした。実際「除霊」されてもなんら変わっていなかった! そりゃそうだ!
スタジオ拍手&ざわざわの中。
矢部「えーみなさんいかがでしたか?」
岡村「すったもんだコントでしたけども」
矢部「今日はこんな感じで」
岡村「たぶん霊がついてるとかよりも性格やと思う」
というわけで、全部ひっくるめて除霊コントでしたよ、ってお話でした。
虚も実も織り交ぜた鳥居みゆきに関してもはや素もキャラもなにもわかりゃしませんが、こういう具合のすったもんだに揺り動かされて、呆然として、でもそのスリルが味わいたくてもう一回見たくなる、って感情にさせられます。
それがおおむね「暴走」と片付けられるのがテレビでは常であるところをうまいこと決めて見せたのが今回でステキでした。ナイナイがいると鳥居も安心してボケられるようです。
ただ、こうして鳥居が除霊されたあとの「いい女」な反応がぜんぶ「コントの演技」だと公にしてしまうと、おそらくマジなのであろう坊主のやってた「除霊体験」ってのまでが全部ひっくるめて効果ゼロだと証明したことになるんですよね。心霊エンタメ業界にとってはある種の「信憑性」を失いかねない気もしますけど…。いいんでしょうか。
今回登場した坊主のお払い中の言動が超キュートだったので、そのあたりのエンタメ性も含めて、結局は「信じるも信じないもアナタ次第」ってことなんでしょうね。除霊をする坊主が最後に言った「これから先、イケイケだよ!」自体がなによりもコント的でした。