お笑い世代交代論とナインティナインの可能性

ナインティナイン岡村隆史が「上がつかえてるから下があがっていかれへん」というようないつもの口癖を「 26 時間テレビ」の「真夜中の大かま騒ぎ」でもこぼすので、今年はその流れで翌朝のテレフォンショッキングに出てきた島田紳助さえも、タモリに対して同じような話題を振っていました。

テレビお笑いの大御所がいつまでも健在で、だからこそじゃまくさい。若手中堅レベルは「なかなか超えられない」と感じていることを隠さないし、実際にもさほど風穴を開けられていない状況ではある。

ただ、それを「上のせい」に毎度しちゃうというのは、たとえお約束のネタ話だとしても、なんかちょっと自己弁護っぽく聞こえちゃいます。


岡村さん、来年で 40 歳です。

やぁ時間が経つのは早いもんだ…という感慨もありますが、そろそろ四の五の言わんとズバッとその場を圧倒的に制しちゃえ、みたいなもどかしさもあります。

ナイナイ自体テレビの第一線で常に戦ってきているし、「お笑いトーク」に関してはとことん王道を突き進んでる実力者です。しかもその実力を披露できるような場は、わりと自前で整備できてる。

めちゃイケ」では「やべっち寿司」、「ぐるナイ」では「ゴチになります」が、それぞれゲストトークの場として番組に根ざしている(ゴチは状況が目まぐるしく変わりますけど)。「99+」は基本的にトーク番組だし、そうじゃなくても二人だけの立ちトークの時間がおおむね設けられている。テレビ芸としては「上」に引けを取ることもなく、むしろ長けまくっている印象です。


こと「 27 時間テレビ」に限っていえば活躍できる場が制限されてしまっているのが惜しいです。

2004 年に放送された「 27 時間テレビ」でのナイナイの活躍は記憶に新しいところですが、現状ではこの年のようにメインに立たないかぎり、05 年、そして今年 09 年の「真夜中の大かま騒ぎ」にしか出演できていない。

矢部がさんまパロディでの進行役、岡村が女装お笑い芸人のうちのひとり、という役回りですが、そのキャラの内側にしか活躍の場がないような気がします。企画としてもプライベート暴露トークが主で、この設定に縛られるあまり、ことナイナイに関しては本領を発揮できてるとは言い難い。

たしかにやべっちの進行ぶりも岡村の紳助への質問も企画の要ではあるけど、別に「すごい!」でもないし、新しいものを生み出してるとは思えません。

ナイナイは「めちゃイケ」とまだまだ一蓮托生でしょうから、おのずとその流れには従わざるを得ない。他の出演者との兼ね合いもあるはずで企画としての大人数でのワイガヤはありきなんでしょう。

もっと他の方向性で、ナイナイ流の深夜トークを演じることは不可能じゃないはずなんです。「オールナイトニッポン」を長年続けてきた強みもある。今すぐに、というのはさんま中居があるかぎり難しいでしょうけど、それがもしも十年後二十年後のことになったら不遇です。生かすも殺すもめちゃイケの命運次第かも知れません。

さんま紳助は今年、結局お酒を飲みませんでした。ハプニング頼みというわけではなく、ほんと「いいちこ」ロック飲み交わすくらいの勢いでグダってみるのもいいんじゃないかと思います。今田東野は言うに及ばずアラフォー世代ともバチバチ絡んで欲しいです。さんま紳助の世代が一線を退いたときに現実味があるのはこの年代の応酬です。


正月の「爆笑ヒットパレード」がナイナイの新境地を築き始めているんじゃないか、と思っています。

昨年から 2 年連続で司会をつとめている。1 年目を自ら「テスト」の場であると冗談まじりにとはいえ宣言したうえで、きっちり場を盛り上げて 2 年目につなげている。堅実なステップアップ。次々と出てくるお笑い芸人を相手に、生放送の長丁場を仕切れる。中継先のコント展開にもつっこめる。雰囲気も朗らか。

これは本人たちも誇ってますけど、いわゆる「空気」を読むのに長けている。最大の強みです。

爆笑ヒットパレード」は歴史のある番組で、たまたま今ナイナイにお鉢が回ってきているだけなのかも知れませんが、歴代ではさんまや鶴瓶ダウンタウンウンナン爆笑問題などが通ってきた場です。たかが年に一度の司会とはいえ、正月という華やかな日取りでの長丁場だからこそ、そこを任されてるという実績には重みがあります。

さんま紳助ほどの笑いに飢えたハングリーなもののけ同士による肉弾戦には、ナイナイではもしかしたら抗えない気もします。ナイナイのアベレージの体温がちょっとだけ低い。それは諦観でも行きすぎた客観視でもなく「対象に対して適度な距離感を保ってる」ということです。

鳥居みゆきとのやりとりでも思ったんですけど、ナイナイならではの「懐の深さ」って間違いなくありますよね。共演者が安心して泳げる。過度に深入りせず、かといって突き放しもしないからこそ可能な絡み方です。

コンビ同士が向き合うとどうしても照れくさくなるみたいだから、ひとりふたり鍵になる人物を加えることで、熱量が高まればいいんですよね。あとは上とか下とか関係ないくらい開き直ってくれれば、いくらでも弾けちゃうんじゃないでしょうか。

3 日(月曜日)の「笑っていいとも!」テレフォンショッキングに岡村隆史が登場します。また世代交代論に話が発展するのかな。口だけに留まって欲しくはないところです。