有吉弘行の『クソトーーク』を夢想する


23 日放送のテレ朝系「アメトーーク」で放送された「芸人ドラフト会議」は、脳内遊びでタレントをひとりひとりピックアップしては、その人の芸能界でのポジショニングなり能力なりをさまざまな角度から考えながら番組企画案をコロコロと好き勝手に転がしていくのが、もうテレビ好きにとっては実にたまらない企画でした。

今回の更新では有吉がドラフトで提案した「クソトーーク」を特に取り上げて、妄想を膨らませます。


「芸人ドラフト会議」概要


「芸人ドラフト会議」企画では有吉弘行、ロンブー田村亮出川哲朗上島竜兵の 4 人が、「日曜夜 10 時に自分の冠トーク番組が持てるならどんなキャスティングをしたいのか?」というお題のもと、プロ野球のドラフト会議形式で 8 巡目まで獲りたいタレントの名前を挙げていきました。

もともとは有吉の番組内プレゼンによる企画。しかし居酒屋でのお笑い好き同士の酒飲み話や、ブログでの手慰み、2ch での清濁入り混じったスレで試しにやってみたあげくおおよそ支離滅裂になりそうな発想を、「アメトーーク」はしっかり番組として成立させちゃうんですね。

最初、上記 4 人のキャスティング自体が、多少不自然な気もしました。

仮にも自分の冠番組のアイデアを提案するというのなら、もっと企画者的な広い視野を持ってそうなタレントのほうがふさわしいんじゃないか、と。司会の雨上がり宮迫も「もうちょっと出来のいい 4 人がくると思っていた」「(亮、出川、上島に対して)ポンコツ 3 人組」とオープニングでいきなり評しています。

でも、たとえば世界のナベアツとか本気で作家的な人を呼んじゃったら、あんまり空想の翼がハネを広げられない気もします。マジ感が出てしまって、お遊びとしては逆に不自由っぽい。それはそれでガチが前提でまた別の趣もありそうなんですけれどね。「 QuickJapan 」とかの誌面上でそのうち作家集めてやるかも知れません。

今回の場合、狙いとしては「有吉の存在をより際立たせる」という方向性もかなりあった気がします。

結果的にロンブー亮、出川、上島は有吉の噛ませ犬としての出演だったんではないでしょうか。もちろん宮迫いうところの「ポンコツ 3 人組」にもそれぞれ見どころはあったのですが、どれもこれもぜんぶ有吉によるドラフト指名の妙味を引き出すための比較対象だった気がするんです。

有吉の選択


有吉は自分の冠番組として『有吉のクソトーーク〜腐ったリンゴ達〜』を提案しました。

有吉「ゲスなメンバーを中心に、くさったメンバーでやっていきたいな、というのはあります」

というのが有吉の番組づくりにおける基本的な考え方のようです。あとはこんな深夜丸出しのコンセプトと日曜夜 10 時という時間帯を、どう折り合いをつけていくか、ですね。

さて、「クソトーーク」をつくるにあたって有吉がドラフトで指名したのは以下の 8 名でした。有吉のコメントつきで並べていきます。

1 位「ブラックマヨネーズ小杉竜一

有吉「小杉のガヤの力とかですね、あとはハゲだなんだかんだでイジって場をつなげますし、達者だという。やっぱひとりは欲しいな。『ちょっと長いかも知んないな』というのはありますけどね。『一個一個のツッコミが長い』のでちょっとアレですけど…まぁサプライズ指名です」

※サプライズ指名。ただしこの小杉 1 位サプライズ指名はロンブー亮とカブってしまいました。抽選の結果、亮が交渉権を獲得。有吉は「はずれ 1 位」を選ぶハメになったのです

はずれ 1 位「おぎやはぎ矢作兼

有吉「 2 位にしようと思ったんですけど、繰り上げで 1 位ですね。やっぱり『混線』になったときの(役割)。雰囲気が違いますから。番組のチェンジオブペースをする、っていうことではいいですし、あとやっぱ毒も。『クソトーーク』にはぴったりです。はずせないです」

※「チェンジオブペース」

2 位「清水ミチコ

有吉「ひとりちょっと大御所というかベテランを置いておきたいというのと、あと猛毒がありますから。『クソトーーク』にはいいですし、矢作とのバランスも考えて相性もよさそうだなというのもありますしね」

※「矢作とのバランス」

3 位「次長課長河本準一

有吉「ひとりユーティリティプレイヤーっていうか何でもできる選手を置いときたいというのがありましたね。安心感ありますね」

※「ユーティリティプレイヤー

4 位「堀越のり

有吉「これは女性タレントのなかで今いちばんタフです。“タフガイ”ですね。女ですけどタフガイと呼んでいいんじゃないですか。どんなに攻撃しても打たれ強いというのがありますし、笑いの能力もそこそこおもしろいですし。あと伸び悩んでたりもするので、モヤモヤッとしたものがあるのでクソトーークにはもってこいです。(なぜ 4 位指名なのかという問いに)ここは敬意を表したかったです」

有吉「アシスタント起用です。あとなんかちょっと“ヤレそうだな”っていうのもありますしね。ちょっとイケそうだなっていうのもありますしね。MCとしてね。MCってアシスタントを食うんでしょ?」

※「 MC ってアシスタントを食うんでしょ?」

5 位「森三中・黒沢かずこ」

有吉「ダークサイドな面もありますし、病んでますし、そこはぼく好きなところですし、このメンツでいうと動きがあまりないので黒沢のダンスに期待。ダンスと歌と、華やかな面での、エンターテイナーとしての起用です」

※「エンターテイナー」

6 位「蛭子能収

有吉「まぁね、こんだけのクズは日本にいないでしょうね。まークズでしょう! 他人の葬式行って笑ってるんですから。まーウチの番組には絶対必要な。なんならエース的存在です」

※「エース的存在」

7 位「ムーディ勝山

有吉「これはいわゆる大学の同じ派閥から選ぶみたいな感じで、一発屋業界からひとり引っ張ってきた、という感じですね」

※「大学の同じ派閥から選ぶみたいな感じ」

8 位「雨上がり決死隊蛍原徹

有吉「宮迫さんだと現実的じゃないんですよ。ひな壇にくるようなタレントじゃないから。(これまで選んだメンバーが)ちょっと毒強いし個性も強いですから、一服の清涼剤というか、マスコット的な存在での起用ですね。まぁ蛍原さんの内面っていうのはギャンブルが好きだったりとか、ブスな嫁がいたりだとか」

有吉「日曜夜 10 時だ、って、そのために起用してるわけですから。ぜんぜん欲しくもないですけど、まぁ 10 時だってことで一応」

※「マスコット的な存在」


というわけで選んだ 8 名が、矢作兼清水ミチコ河本準一堀越のり、黒沢かずこ、蛭子能収ムーディ勝山蛍原徹

1 位指名のブラマヨ小杉を抽選でハズしてしまったとはいえ、おおよそ有吉ならでは、というチームカラーが出ているのがすごいです。特に堀越のり、蛭子、ムーディあたりを拾ってくるのが有吉色。

なんだかこういうセンスって一昨年あたりからテレ朝・テレ東の深夜番組で短期間のうちに培われたようなイメージがあります。堀越のりを「伸び悩んでる」、蛭子能収にいたっては「こんだけのクズは日本にいない」と評しながらも登用しようという意志を見せるあたり、なにかと共演者の縁を重んじてきたらしい有吉の芸人的生き方のあらわれでしょうか。これで上島竜兵が選択できたら指名してたでしょうしね。

ちなみに今回は有吉のコメントだけ抽出しましたが、あたかもスポーツチームを構成するかのような指名コメントの言葉のチョイスが、自ら提案した「ドラフト会議」企画の主旨によく添っていたのが印象深かったです。

この回は雨上がりとコメンテーター役の関根勤を中心に、他のタレントもほとんどの発言がやや客観的な「タレント評」に終始していて、もう興味深いことをずーっと言いっぱなしでした。今さらながら必見であります。

「クソトーーク」を夢想する


で、ここからは、じゃあ実際「有吉弘行のクソトーーク」が放送された場合、はたしてどんな番組になるのだろうか? こうなったらばかばかしくてよいのではないだろうか? という企画案を、ド素人ながらもためしに考えてみることにします。


夢想スタート。


日曜夜 10 時の一時間番組。現状でテレ朝は「日曜洋画劇場」が動かせなそうですから、実際に放送されるとすれば今「ソロモン流」やってるテレ東になるでしょうか。ソロモン流には枠異動してもらいましょう。

番組のテイストとしては、テレ東らしく「モヤモヤさまぁ〜ず 2 」「怒りオヤジ」「アリケン」「ゴッドタン」等に関わっている人たちがまっとうなスタジオトーク番組を制作しようと試みるものの、どうしてもどこか大きく歪んでしまっている、という空気感に支配されているといいですね。


タイトルコールは誰かプロのナレーションで『有吉弘行のクソトーーク!!』。

と同時に SE で「カラカラカラカラ」とトイレットぺーパーを巻く乾いた音が聞こえてくる。

有吉「はい、というわけで始まりました『有吉弘行のクソトーーク』。選りすぐりのクソが集結しております」


スタジオには少数の観客。まばらな拍手。

司会は有吉でアシスタントに堀越が画面右に立って並んでいる。

いっぽう画面左のひな壇には、上段左から蛍原、ムーディ、河本。下段左から黒沢、蛭子、矢作、清水。これは有吉が「芸人ドラフト会議」で呈示したとおりの人員であり、ひな壇での並び順。


スタジオセットには巨大なうんこのモニュメントがあしらわれている。

しかし、あまり生々しくならず、逆にちょっとかわいらしい。Dr.スランプの巻きグソと同義と考えるとよい。

例)
矢作「ちょっとすみません」
有吉「はいなんでしょう?」
矢作「あのセットは何なんですか(と指をさす)」
有吉「あ、あれはソフトクリームです」
矢作「それにしちゃ色がだいぶくすんだ感じなんですが…」
有吉「チョコ味のソフトクリームです」
矢作「チョコ、ってあんな鼻にツンとにおってきそうな色じゃないでしょうよ」
有吉「いや、でも現にそうだって言ってるでしょう?」
矢作「あれうんこでしょうよ」
有吉「はい?」
矢作「あれうんこでしょうよ、って言ってんの」
有吉「この言い訳クソメガネが…!(舌打ち)」
矢作「…あれ、なんかすみません」


河本「え、この番組って有吉さんの気にくわないと舌打ちされるんですか?」
蛍原「これ気ぃつけんとヘタに逆らったら番組降ろされるで」


ゲストの座る椅子も洋式便所風の便器を模したもの。

例)
清水「すみませんちょっといいですか」
有吉「なんですか」
清水「わたしこの椅子にすごく抵抗あるんですけど」
有吉「なにがですか」
清水「便器じゃないですか」
黒沢「そうですよ! あたしたちレディにこんな…」
有吉「いいじゃないですか別に。だってあなたたちクソなんだから」
堀越「みなさんお似合いですよ」
清水「アンタに言われたくないわ!」


「クソトーーク」ではお題に沿った自由なトークがウリ。

ただしゲスト陣のクソぶりをぞんぶんに炙り出すためのトークテーマがあらかじめ設定されている。

「初恋の記憶」「家族自慢」「感動した話」「異性のこんなところにグッとくる」「最近のマイブーム」

などのテーマは、ふつうならほのぼのしたエピソードが語られるはず。

しかしエピソードの内容、話の進め方、うっかりにじみ出てしまう自意識など、それぞれに違うタレントたちのクソぶりを、有吉は見逃さない。

例)
ムーディ「で、うちの彼女がですね…」
有吉「え、おまえ彼女いんの?」
ムーディ「有吉さん知ってるじゃないですか! 同棲してる彼女ですよ」
有吉「とっくに別れてるもんだと思ったけど」
ムーディ「一言も言ってませんよ」
有吉「生活苦で」
ムーディ「余計なお世話ですよ! 否定はしませんけど」
有吉「もう別れちまえよおまえそんなのとは、さっさと」
ムーディ「勝手でしょ!」
有吉「だってそうでしょうよ、金を稼ぎもしない一発屋が彼氏とくりゃ向こうだって迷惑ですよ」
蛍原「有吉それはひどいんちゃう?」
有吉「あ、嫁さんがブスの人はちょっと黙っててw」
蛍原「言うぞ! 嫁に!」


番組の途中で『堀越のりのウォッシュレットタイム』が挿入される。

アイドル業界で長年辛酸をなめ尽くしてきた堀越のりがアイドルにまつわるえげつないイニシャルトークを 30 秒にまとめてお届けします。30 秒ぴったり経ったタイムリミットを知らせる合図として有吉が携帯型ウォッシュレットの水を堀越のりの顔面にピューッてぶっかけます。毎回ぶっかけます。


そんなミニコーナーも挟みながら、番組は終盤。

「誰がいちばんクソか」を最終的に有吉がジャッジする。

例)
堀越「では、有吉さん」
有吉「はい」


(スタジオ暗転。緊張感のある SE が流れる)


有吉「本日もゲスなメンバーによる数々のクソトーークをお届けしたわけですが、もっともふてぇクソを垂れ流した『本日の一本グソ』を発表したいと思います。

『本日の一本グソ』は…」


(一瞬の静寂)


有吉「蛭子能収!」


(明転。画面に蛭子の顔面がズームアップ。ファンファーレ的な BGM。スタジオ拍手)


蛭子「え、俺?」
有吉「一本グソです」
堀越「おめでとうございます」
蛭子「おめでとうじゃないよぉー」


(このやりとりのあいだ画面下部にスタッフロール)


有吉「えっと蛭子さんの選考理由なんですけど」
蛭子「うん」
有吉「あんたはエピソードがどうこう以前に話がクソつまんねぇ」
蛭子「なんだよそれー」
有吉「これ致命傷です」
蛭子「もー、どうすりゃいいのさー(顔を両手で覆いながら)」
有吉「がんばってくださいw」
蛭子「はぁ〜? なんだよぉー」


そしてクライマックス。

有吉による決まり文句のかけ声を合図に、最後のお仕置きが待ちかまえる。

有吉「それでは今日の『クソトーーク』、すべて水に流します!」


大量の水が『本日の一本グソ』に認定されたゲストの頭上にザバーーーと流れ落ちる。「クソもなにもかも水で流す」という意味づけ。「ひょうきん族」のザンゲの部屋より激しいとよい。

ビショ濡れのゲストは呆然。他のゲストは「いよっ!」かなんか適当に言いながら拍手。

例)
有吉「ではまた次回『クソトーーク』でお会いしましょうー」
堀越「さようならー」


矢作「なんだこの番組」


最後はエンディングの雑然とした画面に乗せて提供アナウンス。

例)
提供『この番組は、TOTOネピア小林製薬の提供でお送りしました』


以上、夢想終わり。

「悪魔の契約にサイン」の放送回数(全 9 回)を上回るのが当面の目標になりそうです。