モーニング娘。新譜「プラチナ 9 DISC」ざっくりレビュー

2007 年半ばからの Perfume みたいに売り上げやら人気やらライブ動員やら話題性やらがすべてのぼり調子なアイドルのうれしい潮流にはホイホイホ〜イとご相伴にあずかりましょう、というムシのいい考え方が、まずひとつ。

他方、売り上げ低迷中のアイドルのジタバタともがきあえぎ苦しんでいる時流について、「みんなわかってないなぁ! もぅ!」とまるで他人を見下したような判官贔屓の姑息なポジション取りに執心するのも、もうひとつ。

どっちみち市場の論理の手のひらでいいように踊らされてるだけって感じもしますが、ついついあまのじゃくな行動原理に突き動かされてしまいがちなのも、また是であります。特に昨今の斜陽ないわゆるハロプロ界隈を追いかける上においては、ますますその傾向が強まります。

たしかにモーニング娘。の勢いは下降線を辿るいっぽうで、ユニットのイメージとしては客観的に見てしまえば半死です。ゾンビ。もう遡上俎上に乗せちゃいますけど今般リリースされたばかりの新譜「プラチナ 9 DISC 」もオリコン 10 位以内に入っていない。あぁこりゃ厳しい状況ったらないわけですね。

ただ、売り上げが落ちたとか外部的な指標を理由にモーニング娘。を聞くことを辞めたりとかは決してしたくありません。なぜかというとつんく♂がまだほとんどすべての曲を作っているからです。つんく♂おろしの風潮がぼくには解せないこと極まりない。コンスタントにイイ曲書いてんじゃん!

というわけで「プラチナ 9 DISC 」は GEO でレンタル解禁になったのでさっそく借りてきて聞きました。でかい口を叩きぎみであるにも関わらず購入に至らず申し訳ありません。経済的な要因がすべてです。

以下、このアルバムに関してレビュー的な繰り言を書き散らしていこうと思います。ざっくりざっくり。


いきなり旧聞になりますが、2008 年 11 月 25 日に発売されているモーニング娘。の「 COVER YOU 」は故・阿久悠が作詞した過去の歌謡曲のカバー集でした。五木ひろしが「監修」という企画アルバムです。

あまりにも訴求力に乏しく正直まだ聞いてません。

阿久悠は言うまでもなく歴史に残る作詞家だし、五木ひろしも一流の歌手でありましょうが、モーニング娘。と組み合わさった途端、ぜんぶ台無しになります。

まるで堂島ロールにちりめんじゃこのふりかけとナムプラーを混ぜ混ぜしてトッピングするような、それぞれは一流の食材なのに食べ合わせはとてもじゃないが最悪、というようなマイナスの化学反応を起こしたものだろうと思ったのです。「一流の食材」のたとえはまったく浮かびませんでした。

五木ひろしミーツ阿久悠ワークスも聞けば聞いたで温故知新って感じでそれなりに楽しいのでしょう。ガチッとハマったこれだという優れたカバーはオリジナルに優ります。

でもそうじゃないときは超悲惨です。

紅白歌合戦阿久悠がらみで出演する目論見だったのかも知れませんが、結局これもあえなくハズされてしまいました。不運であり結果論でいえば失策。売れないからといってマイナス評価にはつながりませんが、プラス評価のしようがないものが売れないのも事実なのです。

と、年末年始にモーニング娘。についてはひとしきり落ち込んでいたところに、待望の新譜「プラチナ 9 DISC 」がやってきた。全曲つんく♂ちゃん作詞作曲だぜヤァヤァヤァ!


オリジナルアルバムとしては前作「 SEXY 8 BEAT 」が 2007 年 3 月 21 日の発売。途中にベストアルバムと先述「 COVER YOU 」が入ったせいで、リリースまで 2 年間というインターバルがありました。

本作は 2009 年 3 月 18 日発売。アイドルソングのリリースペースとしてはぐだぐだというかゆっくりしすぎ、リリースが後手後手になってしまっているのはひとつ明らかなマイナスです。

しかし、リリースまでは辿り着かないものの、モーニング娘。は動き続けていました。シングルを含めてアルバム用の楽曲さえ、ずっと前から何曲かちゃっかり出来ていた。音源未収録曲ながらもライブでは披露していたんですよね。

本来のスケジュールどおりにオリジナルアルバムを発売しようとしていたところで急遽いきなり「 COVER YOU 」の発売がドタバタと決まってしまい、その余波であらかじめ作っておいたアルバム曲が宙に浮いてしまったわけです。

じゃあいいやライブで先に歌っちゃえ〜!

と、そんな流れになったというのがもっぱらの噂ですし、おおむね真実であろうと思われます。本当のことなんて誰にもわかりません。

よって、リリースの遅れ具合がプラスに作用したことが何かあるとすれば、「プラチナ 9 DISC 」の制作におそらくいくらかの余裕ができたことによって、『練り直す』という作業が可能になった、ということに尽きると思います。

わかりやすいつんく♂批判のひとつに「手クセで曲つくりすぎ」というのがあります。歌詞やメロが、どこからから適当に引っ張ってきたようにひねりがなく、ちぐはぐな、既に聞いたことある、しかしノスタルジーを喚起させもしない。そんな楽曲が多いと。これが悲しいかな、ままあるっちゃある。

ところが今回ばかりはめずらしく『練り直し』を施すことができている。


つんく♂オフィシャルサイトで自分の作品に関するセルフライナーノーツを掲載しています。もちろん今回のアルバムに関しても。いつものことです。つんく♂語みたいなよくわからない言い回しが数多くありますが、このサイトを更新していること自体、ひそかにつんく♂の客に対して律儀で誠実なところです。

今回のアルバム曲について『練り直し』がおこなわれていたことが示唆されています。曲によっては「サビを 3 回書き変えた」とか「ライブとは違うアレンジにして BPM も下げた」とか言ってます。

つまり、これまで短慮でスピーディに納期に合わせてホイホイ世に放っていたものが、とうとう長考の上で解き放たれることとなったわけです…!

いやこれまでも考えに考えて練り上げてきたのかも知れませんが、今回は特に客観的な準備期間の長さと結果としての音源の充実ぶりがそれを如実にあらわしています。

またその意味においてのみ「 COVER YOU 」の存在意義もあったといえますね。皮肉なことです。


プラチナ 9 DISC 」にはカバー曲が一曲も収録されていません。またリアレンジ、あるいはリミックスなんてものも一曲もないです。曲数かせぎのアイドル小芝居ぶりぶりトラックとも無縁。それはそれでいいんですが。すなわち徹頭徹尾オリジナルのガチ曲で勝負してきました。

既発シングル 5 曲はちょっと多いかも知れませんが、全 13 曲とそれなりの曲数で、かつ CD 初収録の楽曲が 8 曲あります。繰り返しますがライブで数曲が既に発表され、かつライブ DVD にも収められてはいるので、ぜんぶがぜんぶ未発表曲というわけではないです。

ただ、これはぼくのヲタ活動の甘いところなんですがモーニング娘。のライブからすっかり遠ざかっていて、シングル曲をまともに聴いてないのも含めて、YouTube とかでこっそり聞いたことがあるのをのぞけば、ことごとく初めて聴く音源でした。

お得でした。どうやら捨て曲みたいなスカスカな作品は無いようです。もちろん聞く人によって主観で意見が分かれそうですが、偏見や雑音を抜きにすれば「ふつうに」聞けます。


あと嫉妬なんですけど、どうも最近モーニング娘。のライブ行ってる人が、ちゃんと愉しそうなんです。愉しいからライブ行ってるのか、ライブ行ったコストを回収しようと、むりやり愉しんでるのか。

んなこと言ってる自体がヤボなんですけどね。

偶像=アイドルに実体を求めたところでなにが「実体」かわかりゃしませんが、イメージが先行した口に出すだけでも恥ずかしいいわゆる「モーニング娘。」というのが漠然とあって、それは「実体の」モーニング娘。とは、かなり距離があるように思えてきました。

はぁ傀儡傀儡。

でもほんとに今のモーニング娘。をエンジョイしてる人が多いんだもの。

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