「だまし絵ファッション」の流行とテレビ的起源

ゆるゆる流行観測


5 日放送の TBS 系「うたばん」に出演していた上地雄輔が、ネクタイの「絵」がプリントされた T シャツを着ていました。


上地


また 2 月 28 日放送の TBS 系「恋するハニカミ」では藤本美貴が大きなリボンの柄をプリントした七分袖の T シャツを着ていました。


フジモン


ネクタイやリボンのように装着するのに一手間を要するグッズがプリントされた T シャツを「フェイクプリント」あるいは「だまし絵ファッション」と呼んでも差し支えないと思いますが、そういうファッションが今テレビの中でほんのり流行しているようです。たしか先々週あたりの「笑っていいとも!」で南野陽子も着ていました。

ふわふわファッションチェック


こういうテレビ出てくる人のファッションって、基本的に「最先端」を自認してると思うんです。ダサダサな衣装で公衆の面前に姿をさらずなんざ、タレントとして恥でしょうし、スタイリストにとっては死活問題になりかねないはず。

上地雄輔藤本美貴南野陽子もポジションや年齢はそれぞれに違えど、曲がりなりにもアイドル的な役割を担ったいっぱしのタレントでしょうから、ファッションリーダーみたいなレッテルはさほど背負わされてないにしろ、少なくとも流行に鈍感ではいられないでしょう。

「流行」ってものがそんな正しいとか絶対的なものではないのですが、あくまで 2009 年初頭のテレビの送り手側の意識として、この手の「だまし絵」ファッションをいわゆる流行りモノと捉えて発信しているふしは、近ごろビンビン感じ取れるわけです。


ネットでうっすら検索かけまくってみると、世の中では 2008 年、昨年あたりからうっすら流行り出したようです。



左からネックレス、ヘッドフォン、サングラス(ぜんぶ虚構)


小物づかいはおしゃれのキーポイント。それがあらかじめプリントされてるのって、まぁすごい超便利! ってところかしら。

フォーマルな装いには不向きのようですから、あくまでお遊び感覚でカジュアルに着こなすのがベターかも。わざわざ小物を買って装着するという一手間がざっくり省けることでおしゃれの幅が広がって、きっとコーディネートも愉しいはず! ピーコです!

うすら疑問符


でも率直に疑問なんですが、「単に絵で描いてあるだけ」というフェイク、つまり言ってみれば「ウソ丸出し」が、あまりにも公然と堂々とまかりとおっていることに、本当にこんなんでいいのかな?

と思わずにはいられません。

「フェイクプリント」って、別のものにたとえていうなら、ハゲ頭に黒マジックで「フェイク髪」をびっしり塗りたくって「はい、ファッションです」ってうそぶいてるようなもんじゃないでしょうか。おまえは井手らっきょか、っていう。

「アイテムが描いてあるだけ」というのがおしゃれとして成立しちゃってるのが今ひとつスッキリ腑に落ちません。

もう『カジュアルな服にプリントしてあるというスタイルそれ自体が流行してる』ってことなんでしょうけど、流行っていることを免罪符にされるのもどうなんでしょう。

「おしゃれは我慢」


4 日水曜日の「笑っていいとも!」オープニングでレギュラーのマリエがこんなことを言ってます。

「おしゃれは我慢ですから」

まぁ冬なのにわざわざ半裸でビッチな衣装を着て「寒い寒い!」とか言ってるマリエのような人の発言を真に受けることもないんでしょうけど、一理あるとは思います。

フェイクプリントってこういう我慢というか出費とか手間暇とかをぜんぶ取っ払っているのに、おしゃれとされている。逆に「フェイクだからこそおしゃれ」なのでしょう。

我慢しないでおしゃれ、という意味で、フェイクプリントは最強のファッションなのかも知れませんが、根本的に「うそ」ですから。他人の眼をあざむいてるわけですから。そこを忘れちゃいけません。

種の起源


「だまし絵」ファッションのテレビ的なルーツとして思い浮かぶのは、やはり 1976 年 2 月の「徹子の部屋」第一回放送です。

第一回のゲストは森繁久彌でした。スタジオに登場して立ちトークを始めるなり森繁が黒柳のおっぱいをこうペロッとさわってしまったえげつない公然セクハラ場面はすっかりおなじみですね。こないだテレ朝 50 年の企画でも見ました。

で、この日の黒柳はフェイクプリントのシャツを着ていたのです。タキシードに見せかけた。



第一回目から「フェイク」


「日本初のテレビタレント」だけあって、黒柳徹子はファッションの分野でさえもテレビ界を引っ張ってきた第一人者といえるかも知れません。

徹子の部屋」で一度着た衣装は二度と着ないといいますし、それでいて 2009 年の現在でも結局みんな同じような衣装を着てるんだもの。黒柳徹子のあとに道はできる・・・!

単にファッションの流行が 30 年ぶりに一周まわってきただけかも知れません。