「クイズ!ヘキサゴン 2 」がスタート地点の『おバカタレント』出世街道は 2008 年にちょっとした栄華を極めた感があり、そりゃ島田紳助もウハウハなわけです。
お勉強ができないタレントをただのアホバカ扱いで終わらせず、『おバカ』という愛着の湧きやすいような目新しい用語を持ち出して、『おバカタレント』というそのジャンルごと売り出した。
お勉強のできないタレントはいくらでもいるためその後も続々と似たような人は出現してくるのですが、羞恥心や Pabo あたりの牙城に割って入ることは滅多にない。もっぱら番組冒頭「ペーパーテスト」の点数が低い misono が追い上げているが、これとてヘキサゴン発。
それくらい「ヘキサゴン」と『おバカ』は固い結束で結ばれています。
『おバカ』売り出しの最大の看板タレントが島田紳助だとするのは異論のないところでしょう。裏でなにか巨大な組織が野久保直樹ブレイクのために暗躍してるとか言われても別に知りません。
ただいっぽうでは、島田紳助の発言とその番組内容との関係性において、ときどき「あ、これ完全にダマされてる」と訝しい気持ちになったりすることがあります。
というのは具体的には、番組内に表示される「テロップ」が、島田紳助の言葉遣いを巧妙にすり変えてることが、よくあるんです。
以下にその例をいくつかご紹介します。
「クイズ!ヘキサゴン 2 」の例
島田紳助はけっこうダイレクトにタレントに対して「バカ」とか罵詈雑言を吐くんですね。口悪いなーとは感じますけれどたいていが確実な笑いにつながるからいいんです。
でも、画面テロップの段階で、そんな口の悪さが、いくらかフォローされてる。
島田紳助が羞恥心あたりのタレントに「バカ」とストレートに口に出してみても、文字のテロップでその言葉はちゃっかり『おバカ』と変換されてたりするんです。
テロップの果たす役割は、出演者の言わんとしてることをカッコ書きで補完したり、滑舌の悪い人の話をわかりやすくビジュアル化したりと、本来的にはいろいろありますよね。
ヘキサゴンでは、島田紳助のトゲのある「バカ」という言葉づかいについて、編集してる人がその言葉をやわらかく、あまつさえ『おバカ』という番組の根幹を為すようなキーワードに変換して画面にテロップで出してるんです。
「翻訳」「意訳」とでも言うべきなんですかね。「捏造」は言い過ぎでしょうか。
「人生が変わる 1 分間の深イイ話」の例
もうちょっとわかりやすく。
こちらも島田紳助メインの番組ですが、ヘキサゴンが『おバカ』ならこちらは番組タイトルにもあるように『深イイ』のキーワードが最大の売りといえます。
「深い話」も「イイ話」も世に数多く存在するけれど、それらのイメージを統合して『深イイ』という概念を生み出すことによって番組も軌道に乗る。ポジネガの「う〜ん」と相乗効果を挙げてもいます。
この番組で島田紳助は共演者と一緒に、いろんなエピソードに対して深い深くないの判断を下します。
で、やっぱり気になるのは、話の内容が「深い」と思ったら「これは深い話ですよ」もしくは「深い話ではない」と、島田紳助はもう「そのまま」言ってしまうことです。
番組側は『深イイ』の用語を初めから推しているというのに。島田紳助も『深イイ』って言えばいいのに。言わない。
そこでテロップでもヘキサゴン同様、島田紳助の「深い」という発言を『深イイ』に置き換えてしまいます。置き換えざるを得ないのです。
11 月 3 日放送内での出来事です。このとき紳助は『深イイ』なんてことは言ってません。『深い』と言ってます。まぁ画像だけじゃ実証できませんけれど、参考までに。
「行列のできる法律相談所“一時代を築いたビッグな芸能人大集合!スペシャル”」の例
旧聞に属しますが 6 月 22 日の「行列のできる法律相談所」は円広志や堀江淳、ダンディ坂野などが出演した「一発屋特集」でした。
でも番組内ではなるべく「一発屋」という言葉を使わないように、遠回し遠回しにそのことを表現しようという流れになっていたのです。この日のサブタイトルの“一時代を築いたビッグな芸能人”にあったように、松本志のぶアナとかも腐心してた気がする。
決して「一発屋」が NG ワードだったわけじゃありません。言い換えたほうが独自の概念が発生しておもしろいから、くらいの理由だと思います。それこそ『おバカ』『深イイ』と同じ理屈です。
でも、そんな中でも島田紳助はおかまいなく一発屋、一発屋、と実も蓋もなく連呼してました。
その「一発屋」はテロップでまるごと変換されることになる、と。なんだったかな変換された後の言い回し。
半年前のことで記憶がおぼろげで本当に申し訳ないんだけど、ぼくが当時から「ヘキサゴン」の上記の件が気になってたこともあって、違和感があったことだけはうすらぼんやりと覚えています。
島田紳助は『おバカ』や『深イイ』というオリジナリティのあるフレーズの有効性を誰よりも知っているはずなんです。だのに自分ではあんまり言わない。その概念自体が「言い換え」で成立している部分が多いのに、その言い換えはもっぱら島田紳助によるものではなく、テロップによるものなんです。
めんどくさいんでしょうか。
重箱の隅といえばそうですし、他のタレントにも似たようなことはあるんでしょうが、目立って「言い換え」がキーポイントになってる番組への出演が多いからなのか、島田紳助がテロップに頼ってる場面がとても多いなぁ、という本稿でございました。