KAN BAND LIVE TOUR 2008 『NO IDEA』

10 日は Zepp Sapporo の KAN のライブに行ってきた。

東京では音楽ガッタスの初回公演があったそうでその内容にも興味津々なんだけど、地理的もしくは心情的な条件をもってして最終的に足を運んだのは同じアップフロントでも石川吉澤里田紺野真野ちゃん真野ちゃんあと真野ちゃん他を擁する音楽ガッタスよりも 45 歳のぐったり中年シンガーソングライターたる KAN のライブのほうであった。ていうかガチファンなので黙ってても行くんだけど。

どうせ誰も見ちゃいないと完全に開き直って完全ネタバレでセットリスト的なものを掲載します。あとはひたすらアバウトな一言コメントに終始したい。


KAN BAND LIVE TOUR 2008 『 NO IDEA 』


スコットランドの「キルト」とおぼしき民族衣装(上着はブレザーで下半身はチェックのスカートみたいなの)的なアレで登場。バグパイプ的なものを抱えて礼儀正しく出現する。意味はよくわからない。


KAN をはじめ、ギター中野豊、キーボード矢代恒彦、ベース西嶋正巳、ドラム清水淳の全員がこの格好。「男性が正当にスカートみたいなのを履くため」にこの格好を選んたのだろう。おそらく。本当はぜんぜんキルトって「スカート」じゃないらしいんだけど、そう見えるんだから仕方ない。

1.IDEA
こないだ出したばかりのベスト盤『 IDEAS 』のほぼタイトル曲。詞曲ともに出来の良さは随一ながらも特別な仕掛けはなく、まったりワイパー。
2.CLOSE TO ME
ロッテグリーンガムのテレビ CM でも流れたシングル曲。正直あまり人気はないが作品としての密度は高い、ような気がする。ただ 2 曲目で客席が温まってない中での出現は唐突かも、と思う。
3.サンクト・ペテルブルグ−ダジャレ男の悲しきひとり旅−
タイトルのわかりにくさで損をしているが、世界旅行にまつわる愉快な描写と淡い恋心をかけあわせた KAN 独自のセンスの歌詞とポップな曲調が組み合わさった秀作。「世界ウルルン滞在記」のエンディングテーマにぴったりだと思ったがそう都合良くはならなかった。
4.Happy Time Happy Song
ベスト盤からの選曲が続く。「ナイナイナ」のテーマソングだったがそんなことは誰も覚えちゃいませんね。ポールマッカートニー丸出しの牧歌的な曲調に載る歌詞は、「ぼくは恋を占う占術師と見せかけて実は音楽家なんだけれど 3,000 円ほどの金をもらってお客さんを勇気づける意味では同じような商売なんだよねー」みたいなシニカルに過ぎるもの。99 年のライブツアーでは途中もっとふざけて演奏してたが、今回は妙にまじめだった。
5.秋、多摩川にて
隠れ名曲にして「なぜベスト盤に収録されなかったのか」との声が噴出した楽曲一位。今回のライブでやらないわけにはいかなかった。それゆえとばっちりを受けたのがやや似たような曲調の「 Songwriter 」で、こちらも人気は抜群ながら逆に今回のライブの選曲からは漏れてしまったわけだ。
※MC では「特に喋ることがない。なぜなら公式サイトのコラムで書いたりラジオのレギュラーでほとんど喋ってしまっているから」とのぶっちゃけ話。
6.彼女はきっとまた
前回のライブツアーは「遥かなるまわり道の向こうで」というアルバムをリリースしたばかりのツアーで、ほとんどの選曲がそこからだった。そこで演奏されなかったのが今回に持ち越し。
7.まゆみ
愛は勝つ」に続く代表作でシングル 20 万枚売ってるから知ってる人も多いと思うんだけれど、93 年のシングルながら演奏はこの期に及んでまだ進化を遂げている。今回随一と思われた迫力に圧倒された。
8.世界でいちばん好きな人
長大でシンプルなどバラード。Mr.Children桜井和寿がこの曲すげー好きとか一昨年から頻繁に公言していて、いろんなイベントで何度も我が物顔で歌っている。たぶん桜井がミスチル名義でしれっとシングル切ったりでもしたらミリオン売れちゃうんだろうなぁ。でも KAN がシングルで出してもオリコンチャートでは 3 千枚とかだった。歌い手の力量さと言ってはそれまでだけれど、曲はイイんだよ KAN は。ただ声が・・・。

ちなみに以下、かなりいい動画なのでリンク貼っておきます「世界でいちばん好きな人を KAN と桜井がイベントで共演している、の図」→http://www.nicovideo.jp/watch/sm2237384

9.何の変哲もない Love Song
バンドはひと休みで単身ピアノ弾き語り。これもミスチル桜井がライブで歌ったり「 Bank Band 」名義のアルバム「沿志奏逢 2 」でカバーしたりしてる。オリジナルの KAN もかなり丁寧な歌唱で実にいい調子。
10.星屑の帰り道
アコースティックコーナーへ移行。アコギでしっとり。本来この曲のあるべき姿かも知れない。ただ個人的には弾き語りツアーでのピアノ独奏バージョンで泣きそうになった印象が強い。
11.言えずの I Love You
こちらもアコースティック。欲を言えばフルバンド編成での標準的な演奏が好ましかったが、もう作曲から 20 年以上経過しているらしく、いつまでもオリジナルやってる場合じゃないわな。
12.Cover Girl
バンドに戻って「ここからベスト盤に入ってない曲が続きます」宣言。あらこのあたりはいちげんさんにも優しい話しぶり。曲はホールアンドオーツを下敷きにした力強いピアノバッキングに身体も小刻みに揺れる。
13.僕の GENUINE KISS
超初期の 2nd アルバム収録でベストには入っておらずともすればマイナーな感があるけれど堅牢にジャジーかつテンポアップテンポダウンも自由自在のもっとも真剣に音楽的でバンドの底力を聴かせつける強力な一品。
14.TOKYO MAN
ビリージョエルのアレンタウンとイメージ的にかぶりながらも「♪ダッダッ ダダ」のキメが気持ちよく実に正当派なピアノマンぶりを発揮。
15.愛は勝つ
ミスチルつながりで小林武史が昨年この曲にアイデアを加えたらしく、基本的に盛り上がりっぱなしのこの曲の終盤でブレイクというか一時的に「静」の時間を設けて、もう一回あらためて盛り上がればよりいいのでは? というアレンジにもなったことがあるみたい。で、今回もそんな感じになるのかなぁ、と思いきや、従来どおり、もうずっと盛り上がりっぱなしだった。小林武史、採用されず。
16.テレビの中に
「デビュー 20 周年を迎えたということでデビュー曲を披露します!」という真っ当な流れのあとで、ブリブリのアイドルソング『センチメンタル 17 歳』を歌い始める、というギャグを披露した。「センチメンタル 17 歳」なんて曲は存在しないのだが。ノリノリのすっとぼけ。爆笑。別にこれ以上の説明は要らんですね。
17.West Home Town
ライブの流れとしては「テレビの中に」で完結しててもよかった。ただこれもシングルカットされても特におかしくない望郷はっちゃけソングで久しぶりに聴けて嬉しい。終盤のお尻でピアノ弾くのとかは恒例だしビリージョエルさんのマネ。躍動感はライブビデオ「牛乳飲んで来い」に収録されているもののがある。年取ったなー。
18.ぼくの彼女はおりこうさん
ってなわけで、オリジナルの歌詞では「♪もうすぐ 30 歳〜」と歌っていたが、いつぞやのライブツアーでは「♪ 37 〜」となり、今回はとうとう「♪英語でフォーティファーイブ( 45 歳)」になってしまった。長年やってるバンドメンバーも揃って 40 代後半で、特にドラムの清水さんはとうとう大台の 50 歳に到達! そして記念にドラム座ったままソロで「メリージェーン」を独唱! しみじみ。
19.すべての悲しみにさよならするために
本編ラストは壮大なバラードでやや声もかすれ気味。おなかいっぱいです。
※アンコール
オープニングで持ってたバグパイプ的なものをふたたび携えて登場。バグパイプだと思ってたら、それは「リコーダー」だった。大の大人が集まってリコーダーでどっか西欧諸国の国家のような曲を五重奏。たまに演奏ミスったところで笑いが起こる珍現象。やっぱり意味はよくわからないが、翻弄されるのが心地いい。
20.適齢期 Love Story
いつものアレ。全曲つなげではアップフロントのスタッフが登場し、ピアノの上に乗って「千の風になって」を熱唱。歌っているのは KAN 。なにがなんやらの盛りだくさんなカオス。
21.50 年後も
ベスト盤に収録されてるとおりのピアノ弾き語りバージョン。これまで聴いた「 50 年後も」の中でも演奏や歌が研ぎ澄まされていて納得の出来。


※そしてライブ終了後の閉演を告げる女性アナウンスは、いつも「ライブツアー名でボケる」という小ネタを仕込んでくるんだけれど、今回の場合は、「本日は KAN ライブツアー『スコスコスコスコスコティッシュ おじさん達の雪まつり』にご来場いただきましてまことにありがとうございました」だった。

『スコスコスコスコスコティッシュ おじさん達の雪まつり

無論こんなツアータイトルでは本来ない。完全にボケである。『おじさん達の雪まつり』はともかく、『スコスコスコスコスコティッシュ』に関しては、スコットランドとブリティッシュロックとシコシコシコシコという若干下ネタ的な響きとスコッティとティッシュをごちゃ混ぜにしたもので、なんだこりゃ。ってなわけで最後まで堪能しました。