つるの剛士の魂のアルバム「つるのうた」発売前の総まとめ


つるの剛士の歌唱力というかそこを超越した魂の熱唱ぶりに心を揺さぶられています。たまに泣かされます。

そんなつるの剛士のカバーアルバム「つるのうた」が 4 月 22 日に発売になるのを受けて、今回の更新ではアルバムに関連するあれこれを、どこよりも詳しく総まとめしよう(そしてあわよくば amazon リンクを経てポチッと予約して頂きたい…)ともくろんでおります。

8 日放送のフジ系「クイズヘキサゴン 2 」のラストでつるの剛士が「永遠」という楽曲をフルコーラスで歌ってました。「永遠」は '91 年に発表された KAN のピアノバラード曲で、もちろん「つるのうた」に収録されています。ヘキサゴンでは販促キャンペーンの一環で歌われたわけです。

では、なぜ KAN の「永遠」がカバーされたのか。そして他にも曲は収録されているはずなのに、なぜプロモーション上、さほど有名でもない「永遠」のような楽曲がパワープッシュされているのか。

などなど含めましてつるの剛士が「つるのうた」発売に至った経緯を細かく追っていきます。

ではどうぞ。

歌がうまい王座決定戦」のインパク


つるの剛士はフジ系「歌がうまい王座決定戦スペシャル」のシリーズにピンで 3 回ほど出演してきました。羞恥心の活動とカブった時期もあります。

最初の出演では準決勝でタカアンドトシのタカに敗れたりしたものの、続く 2 回の出演では、ともに優勝を飾っていました。

もともとクラシックギターから吹奏楽、あるいはバンド活動まで多彩な音楽経験があるらしく、アマチュアセミプロの中にひとりプロが紛れ込んだようなものではありましたが、人気者ついでの「出たもん勝ち」というか、結局は圧倒的な歌唱力でねじ伏せてました。

荒稼ぎでした。


合計 3 回の出演で歌ってきた歌を総ざらえします。

「第 10 回お笑い芸人歌がうまい王座決定戦スペシャル」(2007年12月4日放送)


1 回戦 OH MY LITTLE GIRL / 尾崎豊
2 回戦 世界中の誰よりきっと / 中山美穂&WANDS
準決勝 HOWEVER / GLAY

「第 11 回お笑い芸人歌がうまい王座決定戦スペシャル」(2008年3月4日放送)


1 回戦 今夜月の見える丘に / B'z
2 回戦 M / PRINCESS PRINCESS
準決勝 離したくはない / T-BOLAN
決勝 未来予想図 2 / DREAMS COME TRUE


第10回+第11回

http://www.youtube.com/watch?v=9fZVmI-tIC0
第 11 回は「未来予想図 2 」で優勝。
高木美保も泣いているがそもそもつるのの歌声が泣いているのです。

「オールスター芸能人歌がうまい王座決定戦スペシャル」(2008年11月14日放送)


1 回戦 ラヴ・イズ・オーヴァー / 欧陽菲菲
2 回戦 しるし / Mr.Children
準決勝 M / PRINCESS PRINCESS
決勝 さよならの向う側 / 山口百恵



http://www.youtube.com/watch?v=MNUqitcbRVo
「さよならの向う側」が圧巻すぎて優勝。
賞金 500 万円です。いい稼ぎですね。

「つるのうた」の全容


おバカキャラ」イメージを払拭するようなまさかの快進撃のインパクト。2 度の優勝という実績。あまつさえスタジオの女性タレントや客がつるのの歌声を聞いて泣いちゃったりする。

つるの印のカバーアルバムの発売が企画されるのは必然的な流れといえました。番組内でも堺正章あたりから「アルバム出せばいいんじゃないの?」的なことが言われてましたっけ。

この「つるのうた」の選曲については百者百様の感じ方があるわけですが、けっこうシブいと思っています。

なにより「歌がうまい王座」という、今となってはこれ以上ないほど絶好のプロモーションの場で歌ってきた多くの大ヒット曲を、まるで収録していない。というか番組で歌った中で収録されているのは唯一「 M 」だけです。地味におもいきった選曲じゃないでしょうか。

つるの剛士は 1975 年 5 月 26 日生まれの 33 歳。とはいえ楽曲の発売された年代にはバラつきがあるようです。ましてや各世代の大ヒット曲をただ並べるだけではなく、「つるの自身が歌いたい名曲」をテーマに選んだようで、メジャーからマイナーまで個人の趣味が反映されている様子。

こういう選曲をすると、ヘタすりゃ多くの客への訴求力を失いかねません。「知らない曲ばっかじゃん」なんてそっぽ向かれたりして。

ただ、歌う側のモチベーションが保たれることはもちろんのこと、聞く側にとっても「つるのが好きならば聞いてみたい」とコアな納得につながる可能性も多く秘めていそうです。


以下に「つるのうた」収録されている楽曲をリストアップすると同時に、それぞれの楽曲について限りなく「オリジナル」な音源ないし動画への YouTube リンクもこっそり置いておきます。

つるのがカバーした「元歌」たちです。


1.M / PRINCESS PRINCESS / '89
http://www.youtube.com/watch?v=MTJNxOgKi8E(スタジオライブ)
2.プライマル / オリジナル・ラヴ / '96
http://www.youtube.com/watch?v=k1-aHl-qxAA(PV)
3.最後の雨 / 中西保志 / '92
http://www.youtube.com/watch?v=nBkF1TzJld8(PV)
4.愛し君へ / 森山直太朗 / '04
http://www.youtube.com/watch?v=f0Xip8mV--A(「僕らの音楽」)
5.歩いて帰ろう / 斉藤和義 / '94
http://www.youtube.com/watch?v=M3W53L5kxmk(「MUSIC FAIR 21」)
6.君に会うまでは / 浜田省吾 / '77
http://www.youtube.com/watch?v=cNJFMxLcLf0(※※一般人の動画)
7.One more time,One more chance / 山崎まさよし / '97
http://www.youtube.com/watch?v=BqFftJDXii0(PV
8.WINDING ROAD / 絢香×コブクロ / '07
http://www.youtube.com/watch?v=THZT_oEQQfs(PV)
9.何もかもが君だった / 羞-shu-(つるの剛士) / '08
http://www.youtube.com/watch?v=VP8zFL98iRU(PV)
10.オリビアを聴きながら / 杏里 / '78
http://www.youtube.com/watch?v=jq6cWEqcyTQ(PV)
11.永遠 / KAN / '91
http://www.youtube.com/watch?v=Hoi6V5RNzyE(どっかのTV番組)
12.ペガサス幻想 / MAKE-UP / '86
http://www.youtube.com/watch?v=pstGMfJNdTE(聖闘士星矢」オープニング)


最後の「ペガサス幻想」というのはいわゆる「ボーナストラック扱い」なんでしょうか。どうやらアルバム全体がばかばかしいハイテンションで終わるような構成が秀逸そうです。

で、あらためてリストアップしていって自分にできることはといえば、KAN の「永遠」について掘り下げていくことです。上にリンクした KAN オリジナル歌唱の動画では声が完全にヘロってますが、ピアノアルペジオ細かく刻みながら歌うのでたいへんです。

そのたいへんさも含めた「永遠」エピソードです。

ミスチル桜井や平井堅もカバーした「永遠」


「永遠」はシングル曲ではありません。

もともとは「愛は勝つ」フィーバー中の '91 年に発売された KAN の 6 枚目のアルバム「ゆっくり風呂につかりたい」の 6 曲目に収録されています。また翌年発売のベストアルバム「めずらしい人生」('92)にもラスト曲として収録。ライブではピアノ弾き語りが定番で、よくアンコールの〆に歌われてきました。

そして近年では Mr.Children桜井和寿平井堅がライブでカバーしたりしています。


桜井和寿の「永遠」
http://www.youtube.com/watch?v=J71QXJF3K74

桜井が KAN と共に「パイロットとスチュワーデス」というユニットを組んで出演した '08 年開催のライブ「ラッキーラクーンナイト 2 」で歌われました。桜井はボーカルとギターとハーモニカを担当。KAN はピアノとコーラスです。


平井堅に至っては、KAN が '07 年にベストアルバムをリリースした際、「永遠」が収録されていないことについて「なぜ『永遠』を収録しないのか…!?」と KAN 本人にファン目線で怒りを露わにしています。2008 年の年明け J-WAVE のラジオ対談で言ってました。

またMSN ミュージックというサイトのインタビューでも「平井堅お気に入りの 5 曲」の中に「永遠」は食い込んでます。

「永遠」はどうやら“男ウケ”する曲のようです。

KAN 流セルフライナーノーツ


いっぽう KAN 本人は昔の自著「ぼけつバリほり」('92)のセルフライナーノーツで「永遠」についてこう書いています。少々こっ恥ずかしい記述ではありますが…。

はっきり言う。ぼくは一人の人を何年も愛している。それがかなうものかどうかは別として、愛し続けている。この詞を書いているうちに、人を愛することの苦しみは頂点に達する。予定外に悲しい歌になってしまった。
これ以上、人を愛することはないだろうし、これほどの歌は書けないだろうと思った。
ぼくは初めて「ラブソング」と言えるものを作った気がした。そして、それはとても悲しいことである。

ノーギャグです。マジです。


そして時代は流れてKAN 公式サイトにもセルフライナーノーツが置いてありますが、こちらは 2008 年 10 月と最近書かれたばかりのもので、40 歳代半ばにさしかかった KAN があらためて冷静に「解説」をするという趣きが強いです。

06.永遠
(略)
音楽的にはビリー・ジョエルさんの『She’s Always A Woman』に、歌詞の精神性は『And So It Goes』に強く影響されています。(略) 歌詞は不充分な部分がいくつかあるものの、全体的には秀作と思えます。(略) 歌唱がたいへんに難しく、しかもピアノを弾きながらとなるとその難度は自己最高レベルであるため、これまた満足に表現できた感触が未だになく、何十年かかってもやり遂げなければならない自分自身にとっての大きな課題曲。

ちなみにこの曲の目標となったビリー・ジョエルさんの『She’s Always A Woman』は、The Beatles のアルバム『Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band』に収録されているポール作品『She’s Leaving Home』を目標に作られたであろうと私は決めつけています。

<参照楽曲>
She’s Always A Woman / Billy Joel < The Stranger < 1977
She’s Leaving Home / The Beatles < Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band < 1967
And So It Goes / Billy Joel < Storm Front < 1989

ファンクラブ会員限定の読み物であるため、なんとなく一部抜粋の略しっぱなし方式でお届けしましたが、洋楽の「元ネタ」をいくつか引き合いに出すなど、すっかり客観的でデータ重視な分析です。

ただ「満足に表現できた感触が未だになく」とか「歌詞は不充分な部分がいくつかある」とか自己批評が率直すぎですけれどね。そこがいいんですけど。

あと KAN が呈示している「元ネタ」の動画リンクを貼っておきますので、「永遠」を過去の洋楽にまで遡ってとことん掘り下げたい方はお好きにお使いください。おすすめは「She’s Always A Woman」です。


ビリージョエルさんの「She’s Always A Woman」
http://www.youtube.com/watch?v=D4nQB3V10i8
ポール・マッカートニーさんの「 She’s Leaving Home 」
http://www.youtube.com/watch?v=jkJciEf-ENA
「 And So It Goes 」(歌詞つき)
http://www.youtube.com/watch?v=wXUCVUui554

「つるのうた」における「永遠」


そんな隠れたアルバム曲「永遠」をつるの剛士がカバーするということで PV も制作されたようです。

シングルカットは今のところないようで、しかもアルバムの収録曲中 PV が制作されたのは「 M 」と「永遠」のたった二曲だけ。

つるのの一存というわけではないでしょうが、この「永遠」、相当な「推されっぷり」です。


【参考】つるの剛士が「ヘキサゴン 2 」で歌った「 M 」

里田まいはメイク剥げるほど号泣


こんなふうに「歌がうまい王決定戦」で二回ほど披露したことのある「 M 」がプロモーションの顔になるのは、まだわかるのです。

だからこそ一見これまで何のゆかりも無さそうだった「永遠」が推されているのは、ちょっと不自然ですらあります。なぜだろう?


「永遠」の PV は奥さんのカメラによるプライベートな撮影らしく、お子さんがいっしょに映ったりもしてます。

「永遠」に関するエピソードがORICON STYLE 記事に掲載されていました。

今回のカバーアルバムの選曲のなかでも一番最後に決まった曲。高校時代、ほとんど邦楽を聞かないパンク少年だったつるのが、「愛は勝つ」で KAN を聴き、購入したアルバムのなかにこの「永遠」が収録されていた。当時は、歌詞のなかの幸せな世界(結婚生活)に憧れを抱いていたつるのが、奥さんと初めてカラオケに行ったときに歌った曲という

購入したアルバムは「愛は勝つ」も収録されているベスト盤「めずらしい人生」でしょうか。

というわけで、4 月 8 日の「クイズヘキサゴン 2 」で歌われたつるの剛士「永遠」を一度あらためて聞いてしまいましょう。

http://www.youtube.com/watch?v=fJNCGaesPAE

メロディの構成が絶叫系ではないので跳ね上がるような昂揚感には届きませんが。

で、歌詞の中にあるという「幸せな世界(結婚生活)」を確認してみる。

もしも恋事に罪をおかしたら
その罰はぼくに受けさせてください


たとえば


ぼくがちょっと痛がっていても
少しの間だけむこうを向いててください


ああ愛しき君よもう泣かないで
いつも隣に永遠にぼくはいるから

フジ系の「とくダネ」や「めざましテレビ」「スーパーニュース」などで、この PV の撮影風景や、あるいは握手会への密着取材などが行われていました。

もはや「つるの剛士ファミリー」は、一家五人、奥さんも子どもも全員総出演、家族ぐるみの丸腰で、ブログやらメディアやらにすべてさらけ出しています。

それでも芸能界で、生きて、歌って、食っていこう、という侠気さえ感じさせるような決意がすごくにじみ出しているようです。

アルバム収録曲の中でなぜか推されている「永遠」の、ちょっと自罰的で「あえて大げさ」な歌詞世界は、実はそんなつるのの現在の心境といちばんうまく合致している、ということなのかも知れませんね。


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