KAN がミュージックフェアに出るよ

「日本音楽界の“盲点”に君臨する」

と自称して憚らないミュージシャンの KAN が、 8 月 30 日のフジテレビ系「ミュージックフェア 21 」に出演する予定です。「愛は勝つ」の一発屋として世間ではすっかり名の知れた存在ではありますが、裏を返せば「名前だけ」知られている存在でもあるわけで、みんな KAN という人のことはたぶんあんまりご存知ないはずだし興味もないものと推察されます。

というのもムリのない話で KAN はここしばらく全国放送の地上波のテレビにまともなかたちでは出ていない。むろん懐かしのヒット曲特集みたいな感じでは愛は勝つがよく流れていますし、ちょっと前に「僕らの音楽」で今井美樹のピアノ伴奏でチョイ役くらいで出たこともありましたが、一歌手として、一曲すら、歌ってません。ひょっとすると 2000 年代に入ってから一度も全国放送の地上波テレビでは歌ってないんじゃないでしょうか。ローカルとか CS とかでもあやしいくらいです。

要するに本人の立ち位置が微妙なんだと思います。

完全に開き直って「一発屋」扱いでたとえば堀江淳とか円広志とか山根康広とか大事 MAN ブラザーズバンドの人たちとか本当に枚挙にいとまはありませんけれどいわゆる「あの人は今?」的なポジションに収まれば、そのラインでちょいちょいテレビでお見かけすることはできる。そのかわり諸刃の剣で、ともすれば「行列のできる法律相談所」でひな壇に並ばされて島田紳助から小バカにされるような邪険な扱いをされかねません。しかしぼくの知るかぎり KAN 本人がそういう扱いでテレビ出てきたことは一度もないです。たぶんオファー来ても断ってると思います。

かといって、同じようなベテランでも、たとえば槇原敬之だったり小田和正だったりのような一流シンガーソングライターさんの領域に達するには、なんとなーく足りないようなものがある気がする。はたしてその足りないものが歌唱力なのかルックスなのか、あるいは「キャラのわかりやすさ」みたいなものなのか、もっと大きな芸能界的バックボーンなのかはわかりませんが。ともかく今の数々の音楽番組になかなかキャスティングされにくい人材ではあるわけで、その結果「まぁ消えたみたいだしどうでもいいか」な空気になっちゃうのは必然なのかも知れません。


でも実はすごく「惜しい」ポジションにいるのもまた事実なんですよね。

ぼくは「めざましテレビ」をちょいちょい見ていて、特に軽部アナの伝える芸能情報とか、うすっぺらかったり時に偏向的だったりもするけれど、わりと好きなんです。そしてそんな中に「 KAN 」の名前の入り込んでいけるような隙間はまったくない。いくらベストアルバムを出そうが何をしようが。

でも、最近、すごく「惜しいッ!」んです。カスってるんです。

たとえばついこないだ FM ラジオ局 J-WAVE のライブイベントがあったとかでめざましテレビでは平井堅のライブのときの様子が流れ、さらにそこに特別ゲストとして三谷幸喜清水ミチコが登場する、という場面がありました。芸能ニュースとしてとても見栄えのいい光景ではあります。

で、その場面で平井堅が歌っていた「Twenty!Twenty!Twenty!」という曲は J-WAVE の開局 20 周年を記念して作られたものらしいんですが、作詞・作曲・編曲したのは KAN だし、あまつさえそのライブでピアノを弾いていたのも、また KAN なんです。そこにいるんです。しかし音はすれども姿は見えずってもんで、まったく紹介されやしない。めざましテレビのフィルターからは排除されてしまうわけなんですね。三谷幸喜清水ミチコとの扱いの差を痛感しました。

あと毎年夏にミスチル桜井と小林武史がやってる「 apbank 」フェスにも KAN は二年連続でまともなミュージシャンとしての扱いできっかり出演しているのですが、これもぼくの見たときのめざましテレビでは出演者がわりと個別に名前入りで丹念に紹介されていくなか、KAN はやっぱり「いない人」で、画面に映りさえしません。

「日本音楽界の“盲点”に君臨する」を地でいく活動ぶりなんです。

しかしそんな apbank での総合的な演奏ぶりが「ミュージックフェア」のきくちプロデューサーの目に留まったらしく今回の出演につながったわけですから、誰がどこで見ているかわかりゃしません。歌唱力は相変わらず微妙でしょうがトークはうまくいけばかなりいい意味ですっとぼけて最大級にくだらない仕上がりになってるはずなので、必見です。ちなみに今さらミュージックフェア初出演らしい。遅れてきた再ブレイクなるか?