デビューシングルのドッキドキ

個人的な選考のとっかかりが「魔法」「オーラ」「理屈抜きでイイ」「これ選ばなきゃ自分にウソついてる」だというのは先に述べたとおり。これらに該当する楽曲は、はたして他にありやなしや。

遠回りして昔のハロー系のアルバム引っ張り出して聴いてみたら、程度の差こそあれどれもこれもそれなりにかっちり作ってあって、思考停止になっちゃうのね。

そんな中で松浦亜弥の 1st アルバム「 FIRST KISS 」(2002)のトップを飾るデビュー曲「ドッキドキ! LOVE メール」(2001)は、デビュー曲でありながら、いや、デビュー曲だからこそなのか、メロもアレンジも歌詞も肝心の歌声もまったく破綻がなく、全身にスーッと無抵抗に入ってくるようで、それでいて上京してメールを介して恋にときめく女の子の初々しいドッキドキ感が胸にときめいて、熱っちくて。たまりません。

ためしに歌い出しから歌詞をブックレットなんて見ないで一行づつソラで暗唱して歌ってみる。するとどうか。別に意識して記憶しようとしたことも無ければ、何百回と聞き込みまくったわけでもないのに、「♪ジーパン履くのに慣れた〜」から「♪ウォォォ 会いたくなった〜」までスッススッスと歌詞の世界がおそろしいほどスムーズに出力され続けて止まらない。無意識に染みこんでいた。

傑作、なのかも知れない。あんまりこの曲がそういうふうに派手に誉められてるのは見たことないけど、つんく♂流のさほど奇をてらっていない正統派ポップスの系譜においては、快心の一作、と断定しても構わないと思う。転調もテンポアップもしないけど、ラストまでの昂揚感が尋常じゃない。

あとシングル CD としてもカップリングの「待ち合わせ」(2001)という曲がまた高い完成度を誇っていて、最近あらためてよく聴いている。小さな淡い物語に悶々とする。