AKIRA はヲタ芸を拒絶する

そんな Berryz 工房のデビュー曲「あなたなしでは生きてゆけない」(2004)をベリーズ流れでうっかり聴いてしまった。この調子でまた一からハロプロの歴史を掘り起こすことになるのだろうか? 部屋の片付けをしていたら昔のカセットテープとか本棚の奧に埋もれていた本とか出てきて懐かしさに浸っていたら結局なんにも片付かなかったみたいな不毛な作業に似ている。

「あななし」のアレンジャーは AKIRA 。この AKIRA って人は異彩を放つ特殊ブラッキーなアレンジ全開でハロプロ音楽に長く関わっている。いつもリンク貼ってアレですけど AKIRA の仕事はhello! progress!!さんにほどよく詳しい。

AKIRA という人の奏でる楽曲世界を音楽的に論評する術をぼくは持っちゃいない。けれどもわかりやすい現象としてひとつ大きく挙げられるのは、AKIRA 楽曲はどうやら「ヲタ芸を拒絶する」。お約束の PPPHOAD、ロマンスをはじめとするいわゆる「ヲタ芸」と極端に相性が悪い。コンサート会場などでヲタにおいそれと容易には身動きさせないような仕掛けが意図的にか自然にかは知りませんが着実に施されているのです。

ミディアムやらバラード系のスローテンポな曲に関しては他のアレンジャーでも基本は同じ。しかし AKIRA の楽曲だけがアップテンポな作品においてすら、ヲタ芸とは絶縁状態にある。またヲタの側でもそんな通例を知ってか知らずか AKIRA の音楽世界をむりやり領海侵犯しようとせずに、だいたいの場合しおらしくしている。もしくはすっかりハロプロに飼い馴らされちゃってコンサートでヲタっぽくしか身体を動かせない御仁あたりは退屈しちゃってるかも知れませんけど。

例外もあって W「愛の意味を教えて!」(2005)やごまっとう「 SHALL WE LOVE? 」(2002)などは PPPH 入っちゃう。俄然楽曲のテイストに合ってない気はしますけれども。そしてその他に何十曲とある AKIRA 楽曲はヲタ芸とは無関係、でしょう。すべてのコンサートを観ることが出来てるわけじゃないから断言しかねるものの、おそらく、ね。なんでもかんでも PPPH 入れたがるヲタすら徹底的に制御するこの特異性は並じゃない。

かといって AKIRA 楽曲がコンサートで愉しめないのかといえば無論そんなことはなく、たとえば美勇伝「クラクラディナータイム」(2005)ではおそらくハロプロ初であろう終始クラップをフィーチャリングしたあげく会場のみなさんもいっしょに叩きましょうパチパチみたいなノリになっていたり、やはり美勇伝「美〜Hit Parade〜」(2005)の B メロなんて結果的にあんな感じのコミカルテイストに色づけされたりしている。こうなるとなにかもうヲタ芸とはまた別次元でのハロプロ音楽のあり方を提唱している感すらある。

AKIRA、演者、ヲタの微妙なトライアングルは続く。




ちょっとづつつづく