野沢トオルという人

ごっちんの最新ライブ DVD 「はたち」をふまえてのお話。

舞台上ではいつもごっちんただひとり+ダンサー数名だけが堂々たるパフォーマンスを繰り広げているように見えても、いざ DVD のエンドロールなんか見てみると、実に膨大な数の人がコンサートに関わっているとわかる。カメラ、音声、メーク、衣装、なんてところは素人にも比較的わかりやすいお仕事であるが、今ひとつピンと来ない肩書きのスタッフも中にはいる。

Play Director:TORU NOZAWA


「プレイディレクター:野沢トオル」である。

プレイディレクター。少なくともあまり耳慣れた言葉ではない。しかも他に「ステージディレクター」「ステージマネージャー」とか同じような名前のつく人はたくさんいて、そんな中での「プレイディレクター」。どこに違いがあるというのか。

やはり「プレイ=演じる」ということであるから、さしづめ「プレイディレクター」ってのは、決して『演出家』とかいうほどのお偉いさんでもないけれど、舞台上でのダンスを含めたあらゆる所作とかなどに関してあれこれ詰めていく上でなんとなくそれとなーく権限を持っているような人なんじゃないか、ってすごい漠然と思ったりしている。

しかし実態は不明。

ちなみにこの DVD には「アシスタントプレイディレクター」という人も名を連ねていて混迷はますます深まる一途であるが、その人はどうやらプレイディレクター・野沢トオルと同じダンスユニットに所属している人らしく、なるほどこのふたりがタッグを組んでごっちんのプレイをいろいろ具体的にディレクションしているものと思われる。

案外「現場の良きお兄さん役」といったところなのかも知れない。


ところで、どうしてこんな妙に細かい部分に固執するのかというと、本日のお題に即してもっとも肝要な結論を出してしまえば、この『野沢トオル』という人は歌って踊れるいっぱしのタレントさんでありながら、KAN の '90 年代のライブツアーのほとんどに同行していた主要ツアーメンバーの一員なのだった。

いちばんわかりやすく例えると、KAN にとっての野沢トオルが、後藤真希にとっての稲葉貴子。二人三脚のコンビネーション、まさに「側近中の側近」と呼ぶべき人物である。野沢トオルのほうが KAN よりは遙かに年下だけど。


「はたち」 DVD に収録されている「来来!『幸福』(ライライシンフー)」という曲の間奏に、なんか「稲葉いじり」みたいな感じでわざわざメロディをいったん止めてまで小芝居を繰り広げる一幕がある。ごっちんと他三人のダンサーの短いソロパートがだだだだとあって、最後の稲葉のパートに差し掛かったときだけ、まるで流れを止めるかのようになぜか銅鑼がドシャーーンと鳴っちゃって「アレ?」みたいな。

曲と曲のあいだに寒いミニコントをするようなハロプロお得意の稚拙なエンタメ精神はあまり歓迎したくないところだが、この程度のお遊びは少しでもステージをおもしろく魅せようとする工夫の一端として評価していいナイスな演出だ。

で、この小芝居の空気感こそが、懐かしい昔の KAN ライブのそれと、とてもよく似ているのである。「曲中にサラッとボケる」「客、とまどう」といったようなボケ方、雰囲気のつくり方がいっしょ。


どうやらプレイディレクター・野沢トオルの一仕事のおかげで、 KAN の遺伝子は、まったくつながりのなさそうだったイメージのごっちんコンに脈々と、しかも百倍かわいく受け継がれているようである。

ましてや「はたち」の場合は本編ラストが KAN 作曲の「スッピンと涙。」の静寂に包まれた魂の熱唱ということもあって、もうこの両者の精神的な「近さ」といったら。

いわゆる「 KANごまカップリング ハァ━━━━━;´ Д `━━━━━ン!!!」、ってやつである。