幕、開きっぱなし

書き出しをアップした時点で、早くも「もう別にこれといって書くことない」といった方向性の満足感に浸りきっている己の向上心の無さには驚きを隠せない。

本題に入る気力が皆無。

というか、ネタの本題よりもその他の些細な枝葉末節についてぼんやりした言説を積み上げることのほうがよほど好きだというどうしようもない悪癖が発覚した。問題の核心に触れようとすると、にわかにキーボードを叩く手は震え始め、顔面は紅潮、喉はしわがれ、沈静化していた虫歯も疼き始めるのである。


まぁ、そんなウソはどうでもいいとして、いや虫歯が疼くのは本当で死にそうなんだけど、とにかくサクッと書きたかったことを書いてしまうと、先週の 18 日水曜日に KAN の札幌ピアノ弾き語りライブに行ってきたわけです。

開場時間から 10 分くらい遅れて会場のライブハウス「 KRAPS HALL 」内へ入ってみたところ、前記の通り、既に KAN が舞台の上でピアノの練習をしていた。噂には聞いていたし、もう何度も KAN のライブには行っていて「本物本物」みたいなミーハー心が突き動かされることもないのだけれど、この現場に初めて居合わせてみると、やっぱり「あッ! もういる!(笑)」ってなる。

KAN 本人にしてみれば多少のウケ狙いもあるにはあるものの、しかし本当にウォーミングアップをしたいから、という理由でやってることらしい。練習とはいえさすがに本番で演奏する曲目とかは無関係にひたすら指慣らしの基礎練習ばかりを延々と。練習の総仕上げにはビートルズとかビリージョエルとかのカバーをまるで「セルフ前座」みたいな感じで歌うのだ。

で、そのあいだ客がいったい何をやってるのかといえば、ボーッとその様子をただ見てたり、あるいは見てなかったり、隣の連れの人と雑談してたりする。舞台上ではカネ払ってまで観に来たお目当ての歌手がピアノ弾いてるというのに、まるでそこに存在しないかのように・・・。そして KAN はたまに練習を小休止するたび、「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ」などと客を小粋に出迎えたりしている。

と、こんなふうに情景描写をしていても、その演出がはたしてライブとして「客との距離が近い」みたいな魅力的な部分なのか、それとも「練習してんなよ」と幻滅すべき部分なのか、よくわからないが、ともかくシュールな空間ではある。

「開演」というが、最初から最後まで、幕、開きっぱなしなんだから。