バカまん

めちゃイケスペシャルの『国立め茶の水女子大附属高校 中間テスト』は、 12 名の女性タレントが国社数理英の五教科のテストを抜き打ちで受けさせられ、その成績によって、お勉強ができる 1 位の「できマン」からお勉強ができない 12 位の「バカマン」までを決めますよ、と同時並行的にいろんな珍回答や珍キャラをいじっていじっていじり倒していきますよという恒例企画で、これが非常におもしろかったので今日はもう脊髄反射的に出演タレント 12 名全員の名前を挙げつつ、あれこれ感想を書いていきたいと思います。


1 位:光浦靖子
そういえば「めちゃイケ」の女性レギュラー陣には他にも鈴木紗理奈雛形あきこ、あと光浦の相方のオアシズ大久保佳代子といるのだが、今回出演したのは光浦ひとりだった。女性タレントスペシャルみたいな今回の出演者陣の顔ぶれだったわけで、この 3 人が入っていたとしてもまったく不思議ではないのに。鈴木紗理奈はヤンキーキャラが若槻千夏と若干かぶるからだろうか。雛形あきこ小池栄子イエローキャブで同部屋対決になるから問題だという説もあるだろうけど、先輩後輩関係でひとつ対立のアングルが発生するからいいとも思うしなぁ。オアシズ大久保もその成績はまったくの未知数であった。 3 人とも森三中に枠を奪われたか。


2 位:麻木久仁子
学習院大出身というそつのないインテリぶりと、光浦靖子にやたら対抗心を剥き出しにする負けずぎらいぶりを遺憾なく発揮。社会の「銀行の合併問題について解説せよ」みたいな長文問題ではテレ東の経済ニュースの原稿もかくやと唸るばかりの模範解答を述べてはいたが、これは 2003 年の「めちゃイケ」期末テストで「 J.F. ケネディについて述べよ」との問いに石田純一が無駄に詳しい完全回答で賞賛を浴び、しかし「ただの自慢だろ」という理由でテスト的には減点などされていたのと同様、少し調子に乗っていた。あとふだんは年齢不相応に若いイメージを保ってはいるが、さすがにセーラー服姿での加齢感を拭うことはできず、しわしわ。


3 位:叶美香叶姉妹
週刊誌やワイドショー的なゴシップには十人並みにしか興味はないので、叶姉妹は実は赤の他人? だとか元々は三姉妹だった? みたいな数々の噂などふだんは素通りで、相変わらずぼくにとってこの人たちは謎のゴージャス姉妹な初歩的段階で踏みとどまっている。ただ叶美香という人は明らかに、露出度の高すぎる服装や不自然な胸など外見的にはあらゆる点で奇天烈極まりないおばさんなのだけれど、たとえばダウンタウン DX などトーク番組に一ゲストとして出演したりナイナイのオールナイトニッポンにピンで出たりしたのを見聞きしたかぎりでは、まっとうで常識的な話のわかる女性という印象しかなく、まるっきりゲテモノとして扱うに躊躇する箇所があるとすればその凡人ぶりだった。で、今回。学力テストで麻木久仁子に次ぐトータル 3 位の成績、かつ数学は 1 位と。いくらセックスと嘘とビデオテープで彩られた叶姉妹といえ「めちゃイケ」のテスト結果だけはおそらくガチンコであろうと考えざるを得ず、なるほど、叶美香はふつうに勉強のできるおばさんであった。ますますふだんの外見的なわけわかんなさとのギャップがわからない。


4 位:叶恭子叶姉妹
ガリマン光浦とそのライバルとして位置づけるしかない麻木久仁子を除いて、今回の学力テストは叶姉妹が事実上のワンツーフィニッシュを飾ったといっても良い。妹の美香さんに続いて、多少教科によって偏りはあるものの姉の恭子さんもまたお勉強はできる人であった。英語が満点だというのはまぁこの人はふだんのグッドルッキングガイとのスゥィートなピロートークで鍛えられたものだろうから仕方ないとして、そんなお下劣な部分とはまったく関係のない理科という教科が、なんと驚愕の 98 点。この事実を告げていたナレーションの木村匡也叶恭子の理科名人ぶりについてたしか何ごとかを言及してたはずなのだけど、聞き逃してしまった。なんか資格を持っているとかどうとか。空耳だろうか。ともあれ叶姉妹はふたりともまともにお勉強ができる。お勉強のできるおばさん姉妹だった。なんだ。こうなるとこれまで単なる天然なすっとぼけなのかなんなのか、さっぱり存在意義や発生プロセスなどが今ひとつ不明だったゴージャス姉妹ぶりも、緻密なマーケティングリサーチのもとに成立したものとしか考えられないじゃないか。お姉さまの顔面の造作はいよいよ人間離れしてきた(むしろ般若?)とはいえ、その徹底的ともいえる企業努力は影ながら讃えたい。


と、ここまでが A クラス。


5 位:千秋
ほっぺた膨らませて、ぷぅー、の表情を延々と崩すことなく、周囲からの総つっこみにも「カメラがわたしを録りつづけるからわたしも膨れ続ける」みたいな…この長回しは名場面のひとつに数えてもいい。「ゴールドラッシュ」からの芸歴の長さ、ベテランぶりを強調されていたそんな千秋は、おそらくココリコ遠藤章造の妻になったその日から、「めちゃイケ」班はもちろんお笑い番組をつくってるようなさまざまなスタッフの人たちから、よりいっそう深い信頼感を寄せられているというか、仲間、身内、いやほとんど家族扱いされていて、要するにすっかり厚遇されるようになった。結婚して子どもまで生まれて不思議っ子少女キャラはいったいどうなるのかという危惧も、不要で、そもそも「いい大人なのに不思議っ子って」というキャラの土壌が成立していたことを思えば無問題。むしろそれどころか結婚や出産というごく普遍的な人生行路、あるいは今回のテストなどを契機にしたちょっとした賢さの露出が、見ている者に安心感を与えている。たしか千秋の最終的な目標は小森和子だったか。へたすると墓場まで揺がないようなポジションが確立されようとしている。めちゃイケもナレーションで千秋の発言能力をふつうに誉めてしまっていた。


6 位:アジャ・コング
ドッキリから始まった番組の展開上、アジャコングとはいえ終始ノーレスラーメイクのほぼ素顔で出演していたのだけれど、もうそんな出方にも抵抗はないのだろうか。志村けんがいつの日からか他人の番組にヅラもメイクもない素の姿でゲスト出演することを自ら解禁したことを思い出す。そういえば先々週のいつだったか、デーモン小暮NHK 総合の朝の情報番組「生活ほっとモーニング」にいつもの完全武装で出演していて、なんか古書の魅力とかを語っていた。悪魔が「生活ほっとモーニング」で古書を語る。この人は一生をメイク顔で貫き通すつもりだ。そして氣志團幼児語なアイツはいつテレビでまともな人間語で話し始めるのだろう。と、そんなキャラ者のことはともかく、アジャコングは国語のことわざ問題にちゃんと全問正解するなど、それなりの頭のよさを見せていた。最近ぼくの知るかぎりだけでもヘキサゴンとかミリオネアで知的な部分を見せてはいる。それでも社会の問題では「作文は苦手なんだよ!」とかキレ気味で言ったりもして。ビバ中卒。


7 位:大島美幸森三中
放送作家鈴木おさむの妻になった人。この人も千秋と同様、お笑いに深く通じる人を夫に持ったことで、森三中というグループごとひっくるめて近ごろのバラエティ番組で優遇されてる感がある。でも能力的にはまだ発展途上というか、ネタは支離滅裂で救いようがないというか… はたして今後「いいともレギュラー時期尚早」説を覆すことができるのか知らん。めちゃイケでのお役目そのものは、収録の途中に大便を催して席を外すという、最近では「爆笑問題のススメ太田光以来の失態を演じたわけだが、その辛そうな面持ちからは笑っていいものかどうなのか判別がつきにくく、直感的にはただ「本当におなか痛そう」というだけでこのあたりのくだりは大ネタのわりに物足りなかった。テストで思いのほか点数が取れてしまったのも軽い誤算。ただ小池栄子との殴り合いは苛烈であり、ときおり見せるふざけた表情もよかった。あと矢部が指摘していた曽我ひとみさんにはそんな言うほど似てない。


8 位:村上知子森三中
こないだの「おしゃれカンケイ」で『月収 20 万』と暴露していた人。「とんねるずのみなさんのおかげでした」の『マネー ハイ&ロー』とかの企画でも森三中は年収の話をしていたが、ここまで具体的な数字はテレビではあんまり聞かない。で、村上は大島と並んでこの B クラスに甘んじていたわけだけど、今回のテスト企画での辻加護もしくは濱口山本のようなツートップによる爆裂並走は、芸人としては森三中のメンバー同士でこそやるべきだったのではないか。とそんな理想はありつつも現実的には森三中はそこまでバカではなかった、バカとして中途半端だった、そのせいで B クラス入りを果たしてしまい、これは不運という他ない。いっそのこと A クラスならまたそれで視聴者の見る目も変わることになっただろうに。そしてもし仮にこの順位づけがめちゃイケの操作によるものだというのなら、メンバーふたりの「バカマン」争いで特番を引っ張れるほど森三中には訴求力がない、と番組側から判断されているわけで、どちらにせよ森三中にとってはベストな結果ではなかったといえる。小池栄子を見下しての巨乳アピールはくだらなくて是。


と、ここまでが B クラス。そしてバカマンまでの C クラスへ。


9 位:小池栄子
すっかりバラエティ慣れして自称「なんとなく頭いいと思われてる」小池には、もはやテストの回答いじりなどという生易しい受け身な脚光浴び法など用意されていない。「いじられて不満顔、でも内心ではおいしいと思ってるんでしょ」といった、このテスト企画自体が内包してるようなそんなバラエティの常套手段を飛び越えて、「小池栄子の回答は一切いじりません」という、周囲の出演者より一段高いハードルが待ち受けていた。こんなもの小池は「いじれよ」とかつっこむしかない。でまたそんな用意されたハードルを軽々と飛び越えるように、ことごとく打てば響く小池のリアクションは秀逸であった。岡村先生や光浦や森三中大島など数々の共演者からぼろくその扱いを受けたあげく、泣いたり怒ったり大島を殴ったりの大活躍。番組からもナレーションで『今回の MVP 』みたいな称号を与えられるわけだ。しかし、表向きは「できマン」「バカマン」を決める企画でありつつ、非公式記録とはいえ『 MVP 』を明言してしまうのも突飛な話だとは思う。


10 位:松野明美
この人の持ち味がケタ外れなウザさだとすると、きっちり交通整理のされているめちゃイケのテスト企画ではそのウザさも必然的に鳴りを潜めてしまうわけで、いつもよりも多少のトーンダウンの感は否めなかったがそのぶんだいぶ見やすい感じにはなっていた。ウザいぶんは特異な感性で珍答を連発していたのでプラマイゼロ収支。トーク的には岡村からのマラソンに喩えた質問をただストレートに答えるような場面ばかりで、他のタレントに比べて能力の劣る部分は垣間見られた。


11 位:黒沢宗子森三中
ただでさえデブのブサイク 3 人組でキャラが被っているというのに、加えて今回のテスト結果によって「 3 人ともバカ」ということまで判明してしまった。黒沢のメガネの意味は単純にキャラクター付けのはずでキャイ〜ンの天野やさまぁ〜ず大竹とやってることは同じだけど、そんなメガネがビジュアル的に異彩を放っていることを差し引いても、森三中はグループとしてのバランスはあんまり良くないと思う。たとえば「恋愛戦隊シツレンジャー」の後浦なつみは、後藤真希松浦亜弥安倍なつみというハロプロのエース級 3 人が勢揃いしていて、たしかに理屈としては豪勢なメンツなんだけどお互いがお互いの存在感を食い合っている。大味というか、平ぺったい印象だ。ミニモニ。は出自(ハロモニ企画の「ヤングモーニング」)からして辻・加護・矢口の 3 人限定で結成すれば話は早かったものの、ココナッツ娘。のミカという異物を混入させることで他の 3 人がより引き立つ形になり、それが結果的には成功の一因だったのだろうと考えられている。ミカは単純に抱き合わせという意味しか無かったのかも知れないけれど。森三中の「全員デブでブサイクでバカ」という過剰なプロフィールは、はたして破壊力になり得るのだろうか。大味すぎるのではないか。「黒沢はメガネなのにバカ」という結論は、話としては軽いオチがついていて良いのだけれど、長期的に考えて収まりがいいのは「黒沢は秀才で森三中をトータルプロデュースする頭脳」という決着だと思う。


12 位:若槻千夏
若槻が自称して元気に言い放つところの、やる気マンマン、略してヤリマンです! といったような冒頭からのフリが、うまくラストにつながった。この企画は「できマン」だの「バカマン」だの、スタート当初からマンマン連呼してる時点で下ネタロマンチック街道一直線。森三中大島の大便や光浦の想像妊娠エピソード、小池栄子の「ツンコ」回答、あるいは叶姉妹なんて存在自体が下ネタみたいなものであり、女性タレントと下ネタとの付き合い方の理想形なんてものは突き詰めて考えれば考えるほど難しいものだけど、これ今回の出演者 12 人をズラッと俯瞰してみても下ネタをさほど重荷にはしてないであろうメンツばかりではあった。むしろ大好物というか。さすがバラエティ界の女性オールスターと謳うだけはあると思う。若槻も一応はアイドルとして、普段はテレビ番組のマスコット的存在としてただ微笑んでいたり、グラビアで水着になってみたりとまっとうなお仕事に励んでいるが、もちろんそのいっぽうでは凶悪な顔で共演の女性タレントを弾劾したりもする。「ヤリマンです!」発言は、そんな便利屋アイドル若槻の真骨頂かも知れない。少なくとも岡女。のモー娘。面々にこの発言が許されるメンバーは皆無だ(うんことかはみんなよく言っているけれど)。若槻のヤリマン発言。それが最高に輝いていたのはテストの決着がついてからのことで、「バカマン! バカマン!」と周囲からさんざん冷やかされて泣きそうになっている最下位・若槻であったが、しかし「わたしバカマンじゃないです!」と啖呵を切って、一瞬すべての空気が止まったあとに、「わたしヤリマンですから! ヤリマンです!!」と大絶叫した場面である。最高の切り返し。そのヤリマンという言葉も元を辿れば「やる気マンマンの略」なんですよ、いやらしい意味じゃ決してありませんよ、という逃げ道もしっかりあって、そこがまたアイドルらしいと思うのである。