亜空間せっかちガール

吉木さんの話を聞いてると、稚気をまといながらもときおりおなかの底からドスを効かせることのできる声質の二律背反ぶりもさることながら、およそすべて世界を肯定的、ポジティブに捉えようとする人徳、懐の深さにありがたみと非現実感を同時におぼえる。相手の目を凝視してなにごとにも基本的には「そうですね!」「ですよねー!!」と会話をひたすら潤滑に右から左へつるつる運搬。異様にノリがよく、しかも他人にイヤな感じをまるで与えない。ザ・女子トークの極致であり、理想郷という印象でもある。

それでいて吉木さんがややヘンテコだなと思うのは、オイルが潤滑すぎるせいであらゆる出来事に対するレスポンスのスピードがあまりにも速すぎる、というか、若干いわゆる「食い気味」になっていることで、相手が何か言葉を発するか発しないかのうちに発せられる「そうですね!」の瞬発力がとにかく凄烈。吉木さんはFM NACK5の生ラジオ番組「おに魂」にアシスタントとして出演中なんだけど、パーソナリティのバカボン鬼塚さんに合いの手を入れるとき、たまにバカボンさんのマシンガントークを前のめりになって追い抜きそうになっている。

1月から期間限定で配信されているUstream生番組「ヒラメキTV」に、吉木さんはエレキコミック今立さんと出演中。この番組には「ヒラメキ」というキーワードから大喜利コーナーが設けられていて、吉木さんも常にウキウキで参加している。

このコーナーで一度、吉木さんがスケッチブックを使って解答を繰り出したあと、周囲のウケたないしウケないといった反応を確かめる前に、誰よりも先に「あら?(;・∀・)(ウケてない?)」とさっさと自己完結してしまうことがあった。http://www.ustream.tv/recorded/12149414←この動画の35分過ぎの出来事。これが大喜利としてはいくらなんでも驚異的に見切りが早すぎて、今立さんから「早い! 早いんだって! 芸人ばりの引き取りの早さだから、もうちょっと待ちましょうよ!」って笑って指摘されていた。

こないだラジオで本人が言っていたことには、吉木さんはプライベートの食事のときも、なにかと事前に決めておきたい計画的なタイプらしい。もしも予約などすることもなく、混雑などで妙な待ち時間が生じてしまうと一気にトーンダウンするんだそう。せっかちなのは、吉木さんも自覚している。

周囲のリアクションや「空気」みたいなものを誰よりも敏感に察知できてしまうアンテナ。幼少期から身についていた天性のセンスなのか、のっぴきならない理由で身につけてしまった処世術なのか。それでいて自分も時計の針をサクサク進めていきたい。かといって短気というのとは違って、カリカリしているような感じでは微塵もなく、プライベートではいざ知らず公の場ではそんな姿を一度も表に出していない。日々ゆったりと着実に穏健に。

高速移動のリニアモーターカージェット機に乗ってる人がほんの微妙に過去(もしくは未来?)を生きてるみたいな学説があると思うんだけど、吉木さんはその周囲を取りかこむ時空間が特殊なベールに覆われていて、現代人と折り合いのつくギリギリの状態をキープしながら未来を生きている亜空間せっかちガールなのではないか。シンプルかつかわいく結論づけられる蠱惑的なオーラは未来のそれとは気付かれず、ただ時空のひずみごと身に纏って恬然としている。

きまじめな仕事への姿勢やファンへの篤実な応対など、どこまでも地に足がしっかり付いているようであり、しかしTwitterにつけブログにつけそして日頃の言動につけ、どこかもっぱらフワフワ浮世離れしているようでもある。ドラえもんの足が実は少し地上から浮いているように、吉木さんもほんのり浮遊しながら、少しだけ未来の中から時空の隙間をすり抜ける。