「酒のほそ道」ラズウェル細木サイン会で岩間宗達を描いてもらった話

11月13日(土)にタワーレコード渋谷店で漫画家のラズウェル細木さんによる「トークショー&サイン会」が開催されるというので行ってきました。
ラズウェルさんは「週刊漫画ゴラク」連載中の「酒のほそ道」をはじめとする呑兵衛、グルメ漫画で著名な漫画家さん。「酒ほそ」ファンのぼくはこの日を楽しみにしていました。
今回のイベントは、1989年に発刊された「ラズウェル細木のときめきJAZZタイム」の復刊記念で行われるもの。もともとラズウェルさんはジャズ漫画で世に出てきた人なんですね。

ラズウェル細木のときめきJAZZタイム」。購入してからイベント会場の客席でパラパラとめくりました。
ジャズにまつわるあれこれの小話とディスクレビューによって構成されています。ほどよいウンチク、「あるある」的な笑い、シニカルな視点、たまに出て来るファンタジーな描写、短いページ数で1話完結、などの基本線は、今のお酒マンガとそう変わりありません。
ほんとの漫画家デビューは麻雀漫画だったそうですが、ラズウェルさんご本人があまり麻雀好きじゃなかったため、面白い作品にはならなかったそうです。

タワレコが会場ということもあり、トークショーの内容もジャズ一色になりました。ちなみにタワレコ店員の方が言うには、ラズウェルさんがサイン会を行うのは今回が初めてのこと。むろん漫画家生活も長い方だと思うので、それが本当かどうかはわかりませんが、貴重な機会ではありました。


ラズウェルさんは大学教授のような雰囲気で、ちょっとした田原総一郎、もしくはノッポさん高見映)のようでした。1956年生まれ。日ごろニ等身キャラが活躍する愉快な呑兵衛マンガを描いているとは到底思われない風貌です。
トークショータワレコ店員さんのインタビュー形式で進行。
ぼくはジャズについて「林家こぶ平(現・正蔵)がジャズに異常に詳しい」という程度の知識しか持ち合わせておらず、ラズウェルさんが感銘を受けたというハービー・ハンコックとかザ・ヘッドハンターズとかマイルス・ディビスとか、おそらくその筋では超有名であろう人たちについても、まったく無知。だもんで

「自分の聴くべき音楽はこれだ! と思いました」

と熱く語るラズウェルさんに、客席から申し訳ない気持ちに勝手になってました。


ただ救いだったのは、ラズウェルさんが解説している音源を、トークショーの中でも同時並行的に流してくれたことです。これまでまったく縁のなかったジャズのよさをほんの一端でも気づかせてくれてありがたかったです。

その中で1枚、ラズウェルさんもこのイベント前夜にあらためて丸ごと通して聴き直したというホレス・パーランさんの「アス・スリー」というアルバムがなんとなく聴きやすそうだったので、さっそくTSUTAYAで借りてきました。

アス・スリー
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ホレス・パーラン
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パーランの不朽の名作。特に冒頭曲はもの凄い音圧で迫ってくるド迫力のトラック。オープニング・ナンバーのド迫力にドギモを抜いたピアノ・トリオ・ファンは多い。ジョージ・タッカーの強力なベースから低音をバンバン弾くパーランのピアノが絡んでいくところはもの凄くスリリング。ブルーノートが誇るピアノ・トリオの大名盤。

1960年の録音だそうで、もう半世紀も前の音になりますか。
何千枚、何万枚と世に放たれているであろうジャズアルバムの中で、この作品がどれほどの評価を受け、どれほどのクオリティのものかはわかりませんが、なんとなく聴いてて気持ちいい! というのだけは直感としてあります。
この文章を打ってる間、基本的にずっとかけっぱなしです。気分は「サタデー・ウェーティングバーアバンティ」(TOKYO FM)です。
トークの中で印象的だったのは、ラズウェルさんがジャズアルバムを聴くときにお酒を飲まないらしいこと。「酔ってるといいところを聴き逃してしまうから」だそうです。ちなみに昼間はよく「ミヤネ屋」とか見てるそうです。


なんだかんだでトークショーは終了。おつかれさまでした。次はサイン会です。
30名くらいのお客さんが並んでおり、店員さんのアナウンスによるとイラストも入れてくれるということなので、何を描いてもらおうかと思案しながら列に並びました。
ほどなくしてラズウェルさんと対峙。
よろしくお願いします、と堅苦しく挨拶してから、ストレートに、こんなリクエストを投げかけてみました。

「あのー、岩間宗達がビール片手に恍惚とした表情を浮かべているイラストを描いて頂けますでしょうか……?」

岩間宗達は「酒のほそ道」の主人公。酒もつまみもウンチクも大好きで、たまにだいぶ気むずかしい。ラズウェルさんの生き写し、なのかも知れません。
ひょっとすると無躾かも知れないリクエストで、ラズウェルさんには一瞬苦笑されてしまいましたが、すぐにサラサラと描き始めてくれました。

直筆。ぼくが描いたんじゃないですよ


自分の好きなマンガのキャラクターが、目の前で本人の手によってサラサラと描かれている。そのライブ感。「酒ほそ」ファンとして、めちゃくちゃ感激したのでした。