Perfumeライブ@東京ドームがデフォルトすぎた話

11月3日に東京ドームで行われたPerfumeライブ「1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11」を観てきました。超充実したひとときでした。あのすり鉢にぎっしり詰まった約5万人という大群集を眺めるにつけ、のっちが「夢」という言葉で表現していた圧倒的な感覚を呆然と共有しました。
プロ野球とか観にいけばこれだけのお客さんの人数って日常茶飯事なんですけど、そのステージの中心にいるのは女子たった3人で、おそらくほぼ全員が彼女たちを観に来ているというのが、とにかく凄まじい体験でした。
個人的には「このライブはデフォルトすぎるなぁ」ということをひたすら感じていました。
ごく私的な話ですが「デフォルト」好きです。初期設定がいい。デスクトップの壁紙も携帯電話の待ち受け画面もデフォのままです。なにか不具合があれば変えるけど、そうでなければなるべく生まれたままの姿がいい。何も足したくないし引きたくもない。
東京ドームの、いろんな意味で巨大すぎるステージに姿を見せたのは、終始Perfume3人だけでした。
バンドメンバーがいないのは当然にしても、後輩のバックダンサー的な存在が出てくるようなこともない。aikoとかSPEEDとか中田ヤスタカとか、サプライズ的なスペシャルゲストが登場するわけでもありません。ずーっと3人。
それはぼくが見た日本武道館公演でも横浜アリーナ公演でも同じことでした。札幌市民会館のツアーではMCのときにカメラマンの人がちょっぴり出現して客席の写真を撮ったりしてましたが、やはり基本的には3人。
お客さんとの掛け合いもデフォのままです。Perfumeが客席に身を乗り出しての客いじりも、「男子! 女子! そうでない人!」といったコールアンドレスポンスも、もともとaikoゆずりの伝統芸ということがあるにせよ、基本的には初めて見たときのまま。途中のtrf「survival dAnce」からB'z「Ultra soul」へのくだりとかもそうで、初めて見たときも、次のライブでも、またその次のライブでもやっていて、結局、東京ドームでも当然のように執り行なわれてしまいました。
あ〜ちゃんがライブ中に言ってました。
「小さいライブハウスでも、東京ドームでも、自分たちのやることは変わらない」。
ぼくも全部のライブを見てるわけではもちろんないんですが、なんだか本当に変わらない。変えようとしない。東京ドームで初めてPerfumeを観る人にとっては「これが見たかった!」「これがやりたかった!」ってことになるのでしょう。
ドリフとか吉本新喜劇みたいなものを思い起こすと、何百回、何千回と同じことをとにかくひたすらやり続けることこそ、大衆芸能のコアな部分だったりするのかも知れません。このストイックさを、意識してか無意識なのかわかりませんが頑なに貫いてきたことこそ、Perfumeを東京ドームに向かわせた近道なのかな、という気はします。
Perfumeの3人、彼女たち自体も、少なくとも2007年に「ポリリズム」で一気にその存在が知られるようになって以来、ほとんど何も変わってないようです。あ〜ちゃんが痩せたのとかしゆかの前髪がパッツン保持してるくらい。なにかもっとあった気もしますが忘れました。
3人は3人のまま、ただ彼女たちを容れる器だけが日々ぐいぐい宇宙の果てみたいに拡大していった。それの具現化したものを目の当たりにできました。


ところでアンコール最後の曲は「ポリリズム」でした。
5万人のポリリズム。ちょっととんでもなかったです。
曲を紹介するときのあ〜ちゃんの演説は「わたしたちに大きなチャンスをくれた曲を最後に歌いたい」。これしかないという説得力でした。
途中のおなじみポリループのくだりでは、いつもその音とPerfumeの踊りだけで興奮するのに、さらに輪をかけて、バックスクリーン側のステージ後方からなんか轟音とともに花火があがったりして、なんかもうわけわかんなかったです。モニターで見るあ〜ちゃんが涙ぐみながら踊ってるのだけはわかりました。
1995年10月、巨人・原辰徳の現役引退セレモニーが同じ東京ドームで行われています。
原がこのとき言い放った名セリフを唐突に借りるとすれば「今日、私たちの夢は終わります。しかし私たちの夢には続きがあります」。
到達点かつ通過点。見事なPerfume東京ドーム公演でした。