Perfume「⊿」収録曲はライブでこうなった


8 月 27 日に札幌市民ホールで催された Perfume ライブに赴きました。

Perfume の最新アルバム「⊿(トライアングル)」は新作として愉しんでいますが、キャピキャピした古風なアイドル像からはかけ離れたところにあるヒンヤリしたイメージの作品で、前作アルバム「GAME」に比べると、やや地味な出来です。その良し悪しはリリースされた当時は保留されているようでした。いわゆる「ライブ待ち」。

おもえば「GAME」に収録されていた地味っぽい楽曲は、その後のライブで Perfume のパフォーマンスをもって次々と開花していったわけです。

全編英語詞の「Take me Take me」は椅子を使った小エロで淫靡なダンスという他の曲にはない演じ方でひとつの地位を築いたし、「Butterfly」はライブ中にだけ流されるミュージックビデオ=衣装替えの時間稼ぎの曲というポジションに収まった。「plastic smile」はあのけんけんぱって足並みが楽しく、「Puppy Love」は客みんながフリを揃える曲として定着している。楽曲がそれぞれの適性ポジションを見つけたのです。

では「⊿」を下敷きにおこなわれた今回の「直角二等辺三角形ツアー」はどうなったかといえば。


「⊿」収録曲、すばらしく適材適所でした。これ以上のやり方は無いんじゃないかと思考が窮まってしまうほど、どれもこれもいちいちハマっていた。

カウントダウンの「Take Off」はアルバムと同じようにライブでもそのまんま 1 曲目。そこからのつなぎでさっそくキラーな「NIGHT FLIGHT」が出てくるあたりはアルバムが本来そうであってもおかしくないほど自然な導入でした。カウントダウンからイントロに至って Perfume が登場するくだりなんて、もうテンションあがってあがって。

「Zero Gravity」はなんか「ごきげんよう」のサイコロトークで使いそうなサイコロのような物体に腰かけたり、その上の狭い足場に立ったりしながら踊るという小道具を利かせた見た目でした。昭和ディスコ歌謡の息吹も色濃い「I still love U」は後半に入ってからの出現で、これミュージックビデオが作成されたりアルバム曲にも関わらず「ミュージックステーション」でお披露目されたりするくらい強度のある曲ですから、ひたすらありがたい。さほど凝った演出を加えなくても十分な存在感でした。

掘り出し物は「Kiss and Music」。ミディアムテンポでうすらぼんやりした印象がつきまとうためアルバムの流れの中でも小休止みたいなところがありますが、帽子を用いた物憂げかつビート利かせた振り付けでまとめてきました。デカい音で聞いてしまうとメロウなテンポでもハートにファイアだぜ。こっちとしても自然と身体が気持ち悪く揺れ動くしかありません。

妙にうれしかったのは「願い(Album-mix)」で、これアンコールのラストでしんみり終わっちゃったら消化不良かもなー、って当初は思ってたんです。代々木第一体育館でのライブもそうだったという話。で、実際たしかにアンコールのラストで歌われた。でも、アンコール自体がトータルで「 3 曲」あったんですよね。MC の後、まず「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」があって、次に「Perfume」が来たんです。その時点でおなかいっぱい。で、終了だなー、って思ってたらクールダウンみたいな趣で思いがけず「願い」。これが染みた! もしも「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」からいきなり「願い」で〆に行ったりしてたらたぶん物足りなかったはずなんです。そこは物量的に満たされた感じです。

英単語をただ並べ連ねるだけのトラック「Speed of Sound」は、もうあっさり着替えの時間の BGM と化してました。いわゆる「Butterfly」枠。完全にそういう扱いの曲だとバッサリ割り切られたようです。これも音が流れてる最初のうちは舞台上で何も変化がなく「せめてオリジナルの映像でも何か流しとけば面白いのに」と贅沢に思っていたら、曲の途中から本当に歌詞に使われてる英単語がひゅんひゅん跳梁跋扈するようなモニター映像が流され始めました。ホントつくづく痒いところに手が届きます。

なにより「edge(⊿-mix)」が凄かったです。イントロが流れてきた瞬間、正直「うわ、エッジかー」って拒否反応がありました。作曲者の中田ヤスタカさんがこの曲をお気に召してるらしくシングル「love the worldカップリングの他にアルバムにもミックス変えて入れるくらいなのですが、尺が長くて歌詞もダウナーな気分になる内容なのであまり魅力を感じない。でもこれが図抜けて魂こもってた。レーザービームがちょっとどうかしてるくらい会場中に飛び交いまくるわ、モニター内包のセットがいきなり舞台前方にグイグイせり出てきちゃ、曲の途中でそのセット上段から Perfume 3 人が我々を見下すように出現するわ、本人たちとモニター映像の動きがシンクロして Perfume が 6 人いる感じになっちゃうわ。めちゃくちゃでした。まるで食傷気味だというこちらの感覚を見透かしたかのようなスタッフワークの結晶。

結果的に「⊿」からは唯一「The Best Thing」が漏れただけで、既発シングルも含めると 12 曲中 11 曲という網羅率を誇ってました。ニューアルバム発売後のツアーとして満点の選曲です。持ち駒が増えるごとに選曲の幅も堅実に広がっていく。それぞれの曲に見せどころがあり、さすが心得てるなー、とチーム Perfume への信頼感を新たにしました。


「⊿」のアルバム曲という部分からすこし外れたところでは、序盤のかけつけ 4 曲「NIGHT FLIGHT」「エレクトロ・ワールド」「Dream Fighter」「love the world」なんて「この後やる曲ちゃんと残ってるのかな?」って不安になるくらいの飛ばしぶりでした。贅沢すぎる。

最新シングル「ワンルーム・ディスコ」も登場。テレビや PV で何度も見てきたものの実際に見るのは初めてだったので、イントロが♪デーデーデーデって暗黒的に流れ始めて Perfume がそれぞれの立ち位置に身を置いた瞬間「うわ! 本物だ!」というミーハーな感慨がいきなり頭をもたげました。ちなみにツアーの舞台セットはこの通称「ワンコ」仕様で四角が 3 つ並んだデザインです。

また、「チョコレイト・ディスコ」は当たり前に楽しいし、「ジェニーはご機嫌ななめ」では細かいことはいいんだよって感じでここぞとばかりに 3 人に向けてコール。「シークレットシークレット」は基本的に心のベストテン常駐ですし、「Baby cruising Love」は楽曲としては地味なのにライブではやたらなじみます。「マカロニ」はほっこりと温まり、シブせつない「SEVENTH HEAVEN」もうれしい。「ポリリズム」に至ってはちょっとアンセムすぎてもう言葉になりません。


あらためて言うまでもなく、Perfume は「⊿」アルバム含めた既存の楽曲のほとんどすべてが「なんだこりゃ」ってレベルの名曲なので、たった一回の公演を体感しただけですっかりハードパンチャーです。合計およそ 3 時間弱。めちゃくちゃ満足度の高いライブでした。ぼくが間違ってました。