℃-ute 新曲「 Bye Bye Bye! 」は本年ハロプロ屈指の快心作


再燃。



アイドルの活動を評価したりまた好悪の情を新たにしたりするうえでの指標には「ライブ」「イベント」「アルバム」「テレビ露出」「 CM 」「ラジオ」「写真集」などいくつかありますが、その中でも特に「シングル」というのは図抜けて大きな割合を占めている媒体です。

後年その活動をふりかえるにあたって思考の軸となるべきは「シングルヒストリー」で、むろん現在進行形でも「今ココ!」って感じで最新シングルがそのまま制作者側の力の入れ具合なりメンバーの心身状態なりを全部ひっくるめて善きにつけ悪しきにつけ体現しているのです。

℃-ute についてはどヲタの方々ほど濃い入り込み方ではなくまたライブにも 2007 年以来めっきりこっきり馳せ参じてませんが、ここ最近の ℃-ute というユニットはことシングル楽曲においてあまり目を見張る成果を挙げているようには見えません。

2007 年の年末に多くの人々の目に触れたという一点において評価すべき『レコード大賞最優秀新人賞』を獲得した「都会っ子 純情」はひとつのメディア露出的なピークでした。しかしてそのあとに発売されたのは「 LALALA 幸せの歌」「涙の色」「江戸の手毬唄 II」「 FOREVER LOVE 」というシングル群。

もちろんそれぞれの楽曲について詳細をつめていけば誉められたイイ部分もあると思うんです。アルバムの流れで聞けばそう悪くないという「 LALALA 幸せの歌」、「都会っ子 純情」の流れを汲んだマイナー調の歌謡曲っぽさ満開な「涙の色」、ひそかにバックトラックの出来がシブい「江戸の手毬唄 II」、ジャケ写などのブラッキーなビジュアルイメージが鮮烈な「 FOREVER LOVE 」。

またそれぞれライブでは盛り上がったりもするのでしょう。

ただ、これもうほんと私見に過ぎないかも知れませんが、4 曲が 4 曲とも、どれもこれもストライクゾーンから外れてしまっていたり、あるいは勝負を避けた「敬遠」のようにさえ見受けられたり、またど真ん中を狙ったとしてもボールにまるでキレがなかったりと、あんまり今さら吐き捨てるような物言いをしても仕方ないですけれど、要するにあんまりたいした曲じゃありませんでした。

そんなふうな必ずしも上昇気流には乗っていないような段階。

と、そんなところに ℃-ute は 8 枚目のシングルをリリースします。

4 月 15 日発売の「 Bye Bye Bye!」。

これが久々にすごくイイんです。


「減点法でイヤなところだけ心にそっとしまって、あとはぜんぶいいところ」

という楽曲に対する独自の評価基準を持ち出すならば「サビメロと歌詞が大味すぎ」という以外にまったくイヤなところが聞こえてきません。底意地のわるい人はつんく♂流の歌唱法が鼻につくとか言いますが、これは飼い馴らされてしまっているせいで一ミリも気にならない。それが ℃-ute らしさひいてはハロプロらしさであります。それでいて A メロ後半部の歌声は機械的にいじられたりしてますが、それもまた Perfume で免疫できまくっているため意に介することではないのです。

作詞作曲はつんく♂で、もうこのメロは快心の一撃です。すべてがツボ。ようやく出ましたね。前作「 FOREVER LOVE 」が聞いてるうちにどんどんテンション下がってしまうような困った出来だったので、ここにきて挽回です。しいて挙げれば特に B メロの入りの、唐突な、いかにも J-POP な具合の細かく刻んだニュアンスが、鈴木の歌声なり顔面力なりとあいまって最高です。

失恋したけどポジティブにバイバイバイってような歌詞はあまり未練たらたら情念系なことは細かく語ってませんが、この曲調なら変にやさぐれるより前向き大ざっぱなほうが順当でしょう。

PV の出来は、外反母趾という名目で有原栞菜が長期離脱中なのが若干ひっかかるものがあったり、いかんせん撮り方や振り付けは決して洗練されてないというか口が裂けても超かっこいいみたいなことは申し上げられませんが、鈴木矢島のツートップ体制はどこに出しても恥ずかしくないほどご立派ご立派。中島早貴はだんだんいいとも少女隊の鈴木凜に似てきました。

そしてアレンジは平田祥一郎。イントロのほんの一瞬のブレイク、ブレーキかかったようなシンセブラス、そんなこんなをすべてひっくるめてキラキラしたゲームミュージック仕込みの音色。あんまり安直にファンクファンク言うのもどうかと思いますが、いわゆる「アイドルデジタルファンクポップ」って分類じゃないですか。つんく♂ソングらしさの象徴といえるオケヒ連発や間奏のギターソロはこの曲に限っては無し。最近のハロプロでの平田ワークスの印象は正直アレだったのですが、すみませんやっぱ神でした。


もはや一般ウケとか云々しても仕方ない界隈です。でもやっぱり稀に愉しいものは愉しい。5 月開催の ZEPP SAPPORO ライブにも行きたくなってきました。このシングルのせいです。


℃-ute シングル『 Bye Bye Bye!
2009 年 4 月 15 日(水)発売
EPCE-5623〜3【初回生産限定盤 DVD 付】 1,680 円(税込)
EPCE5634【通常盤】 1,050 円(税込)
※初回生産限定盤・通常盤(初回仕様)ともに、イベント抽選シリアルナンバーカード封入。
発売元:アップフロントワークスゼティマ


あと関係ないですけどこの写真はメンバー全員しゃくれてるように見えます。