プレイ・ザ・ゲーム

Perfume のライブ DVD 「 Perfume First Tour 『GAME』」が amazon から届いたのでさっそく観たよ。



基本超ド名曲ばかりの Perfume であり、もうすべての曲がベストオブベストなのだよと鼻息荒く申し上げたいのは山々なのだけれど、さすがに自分の価値観の内側に形成された評価グラフには感性からとも理屈からともつかない評定基準が自然発生的に定まっちゃっているもので、じゃあってんでさしあたってせめてこの 5 曲のみの映像音声だけは今のうちにパーフェクトスタイルに体内吸収しておかないと無事に年を越せませんよ、くらいのご贔屓楽曲、今 DVD において特に図抜けて秀逸とおぼしき 5 曲を以下に列挙していくことにします。


M 11 『ポリリズム

いわゆるアンセムってやつで 2007 年発売と昨年の曲だけど紅白出たらたぶん歌うだろうし、詞曲ダンスのインパクトはズバ抜けているし Perfume じゃなきゃ歌い踊る意味がない。

三人がお決まりの立ち位置でポジショニングするイントロから「♪ほーんーのーすーこーしーのー」と長音ばかり伸びやかで実は特異かつ奇矯な導入部に胸が踊り、そしてお約束のバスドラ四つ打ち。やがて「ダッダッダ ダドド」と Perfume 時代の幕開けを高らかに告げるフィルが空気を変え、Perfume メンバーさん一斉垂直ジャンプののちあまりにもキャッチーに過ぎるサビへ突入。ポリループ部分は音楽的興奮の極致であるが一方「間奏」としての扱いを平素より避けられず、ゆえに歌番組などでは時間的都合上カットされてしまうことが多い。知るかぎり NHK 総合 「 MUSIC JAPAN 」があえてポリループをフィーチャーしてたくらいだ。そんな由縁からしてフルでのお披露目は貴重なのだというイメージのすりこみがあるため、ループにはレア感さえかきたてられ大いにわくわくするのだよ。そしてループはププププププと収束するや否や開始される憑き物が落ちたような爽快な手拍子が結局すべてを丸く包み込むのです。

と、一音一音一挙一動を取りざたしては崇め奉りたい気分にもなる。


M 08 『Take me Take me』

Perfume 楽曲はその機械的で非現実的な音作りの為せる業なのか一曲一曲聴くたびに異世界に連れ去られるようで、もっともわかりやすいのは「リニアモーターガール」「コンピューターシティ」「エレクトロ・ワールド」からなるみんな大好きエレクトロ三部作ですね。ジャケ写やら PV やらがとにかく鮮烈だった。そしてそんな鮮烈な世界観の魔力に気づかされたのはリリースされてからしばらく経ったのちのこと。みんながなんらかの別々のきっかけで徐々に気づいてしまったわけで、手遅れにならずに済んで本当によかった。全宇宙的に心底よかった。

で、アルバム「 GAME 」中でも全編英語詞で同じようなフレーズを繰り返すだけの「 Take me Take me 」は明確な世界観がまぶたの裏に浮かび上がってくるようなイメージには今ひとつ遠く CD 聴いてるレベルではどちらかといえば聞き流しがちな曲に分類せざるを得なかったのだ。しかしさすがにライブの醍醐味というか妙味がこのツアーでは発動していて、振り付けステージセッティング諸々の演出手腕によって見事にプチ確変しているのだった。

『短パンふともも椅子プレイ』。

ずばりこのワンフレーズを授与いたします。「 GAME 」ツアーの衣装ではオープニングからのっちひとりだけが短パンふともも部隊として孤軍奮闘しており目にまばゆいばかりなのだけれど、セットリストではこの曲からかしゆかも新たに短パンふともも部隊として参戦するのだ。ちなみにあ〜ちゃんは相変わらずのフリフリワンピースで全身防弾武装

衣装の露出が増えたからといって Perfume に関しては正直あんまりどうでもいいという想いもありながら、ほとんどこの曲においてのみやたら艶めかしい表情と肉体と身体動作の絡まり合うことによっておとなストリッピーなエロ冥界にいざなわれてしまうのだ。テイクミーすなわち私を連れてってみたいな意味深なことを連呼される曲だけど観てるこっちのほうがよっぽどテイクミートゥナイト、とこうなる。


M 06 『 Baby crusing Love 』

楽曲的には地味なイメージながらも意外とライブにビタハマリしているのがひとつの発見であるわけだけど、この DVD 映像に限って白眉なのは、「♪ただ前を見ることは怖くてしょうがないね」の歌詞部分でのかしゆかさんの全存在。ここに尽きる。

だってすごいんだよ。その歌詞のあいだのほんの一瞬たったワンカットなんだけど、かしゆかは胸のあたりを両手でギュッと押さえつけて眉根を下げた困ったような表情をして首から上を小刻みにフルフルさせながら、もきゅっ、って口元してんの。

フルフル((((; ーωー)))フルフル

いやこの即席の顔文字はどうやら失敗してる感が否めないけど、とにかくかしゆかなんのつもりだその顔ってばよ。もはやこの世のものとは思われません。

小動物的といえば話は早く、しかしそれだけでは済まされないようなおぞましささえ覚えるパフォーマンス。実際のところは単純に「ただ前を見ることが怖くてしょうがないね」という歌詞を地でいくような、未来に向けた不安的なものを訴える表現に過ぎないと思うんだけど、ひたすら破壊力の凄まじいご尊顔であり、もはやかしゆか萌え萌えキュンキュンでござるとかわけのわからない言辞を弄したくもなる。

このワンカットを見るためだけに明日も生きましょう。


M 02 『エレクトロ・ワールド』

己の実存を疑い、虚像に思考の矛先を委ねる。

完膚無きまでに絶望の淵に叩き落とされるような心証になることもあれば、現世のしがらみから解き放たれたユートピアへの希望が湧いてくるような気もする。

とかなんとか学がないところで精いっぱいむずかしげな虚勢を張ってみても限界は来るわけで、すなわち「エレクトロ・ワールド」とはこの世のすべてを歌った究極の歌なのではないでしょうか。

むしろ「この世のすべて」とか思っている「この世」すら偽りの世界かも知れないという疑心暗鬼を抱えたまま生きなくてはいけないという業にも直面させられたりする。なにが言いたいんだ。

M 03「コンピューターシティ」へのつなぎ方は一瞬だけど鳥肌もの。


M 09 『シークレットシークレット』
イントロから涙腺決壊。よすぎて泣ける。研ぎ澄まされたカクカク振り付けも鋭利に頂点に達した。この曲に全身全霊を捧げながら死んでしまってもいいのだもの。



ともすれば宗教がかった賛美はこのくらいで打ち止めにします。Perfume に関しては言葉にするだけヤボだというのが率直な想いだ。ブログだから言葉にせざるを得ませんけど。

いつ終わるかもわからない Perfume の世界。はかないものだ。ハロプロで酸いも甘いも噛み分けた経験から、ハッピーなだけの楽天思考な結末にはどうにも想いを馳せにくい。

にしても、偶然と必然とが交錯してこんな具合に出来てしまった唯一無二のつむぐ世界を、ただいつまでも堪能していたい、との想いは今のところありまくる。