「ゴッドタン」史上もっとも綺麗なオチ

6月2日深夜のテレビ東京系「ゴッドタン」で「第1回 芸能界キレ女塾」が放送されました。
気が弱すぎてなかなかキレられないという芸能人に対して、一見優しそうな微笑をたたえているものの実はとてつもない武闘派芸人だというバカリズムがキレ方を教えるよ、という企画です。
バラエティの見本のようなすばらしい30分でした。個人的にも放送前から楽しみで、実際期待を裏切られることもなく、本放送が終わったあとも真夜中に録画を3回見返してニタニタしてました。
オープニングからオチまできっちり整ってるし、ところどころで破綻してるし。

吉木りささん可愛いし。


そう、「第1回 芸能界キレ女塾」の「キレ女」とは吉木りささんのことだったのです……!
連日の吉木さん更新に歯止めが利かない……!


吉木さんは「極度に気が弱く、キレ方がわからない芸能人」として登場。
バカリズム先生は、

キレることは悪いことではないので、やるからにはちゃんとやりたい

とさっそくやる気です。番組が始まるなりMCおぎやはぎ矢作さんのお気楽な軽装にまでさっそくキレ始めたりします。
スタジオに呼ばれた吉木さんは「よろしくお願いします」と深々とお辞儀。基本的には礼儀正しい。

そしてこの礼儀正しさが、のちのちフリになって効いてくるわけです。


ビール瓶を入れるための小汚い箱がスタジオに用意されていました。
ゲストは「これに座ってください」というぞんざいな扱いを受ける。つまりはその失礼な扱いにキレてください、という仕掛けです。
しかし吉木さんは特に文句も言わず座ってしまう。黙って受け容れてしまう。
そんな態度の吉木さんに対してバカリズム先生はさっそくキレ女塾を開講します。

バカリズム おめーが今それ座ってるのなんだよ!
吉木さん はい……ビール瓶の、入れるやつです……
バカリズム ビール瓶の入れるやつは、座るもんか?
吉木さん 違います……
バカリズム じゃあキレろや!


いきなりスパルタです。

そこに沈着冷静な矢作さんのMCが挟まる。

矢作 え、バカリズムさん、これあのー、“グラビアの方にキレ方を教えてあげる企画”ですよね?
バカリズム ええ
矢作 バカリズムさんがものすごいキレちゃってるんですけど

もう面白い。


「ゴッドタン」レギュラー出演者の劇団ひとりも、吉木さんにキレ方を教えようと参加します。
吉木さんはこの4月から劇団ひとりのラジオ番組「劇団サンバカーニバル」FM-FUJI)にレギュラー出演中。毎週生放送で顔をつきあわせています。
番組では特にそのことについて言及されませんでしたが、劇団ひとりと吉木さんの、テレビでの相対。
けっこうときめきました。


「カワイイ写真にキレてみよう」のコーナーはバカリズム的な「写真で一言」大喜利で進行。このくだりでは、バカリズムもキレるというよりは、積極的にボケているように見えました。
バカリズムはこのコーナーで、自分のセリフのあとにリピートアフターミーみたいな感じで「さりげなく乳触ってんじゃねーよ!」などの発言を吉木さんに強要します。
自発的にキレることはできないものの、いったん演技に入ると強い吉木さんは、だんだん活気づいてバカリズムのあとに続いてキレ始めます。昔から民謡を習ってきて、一応演歌歌手ではあって、巻き舌もできるし、声だってよく通る。芸能を司る者としての確実な力量を感じます。
最終的に吉木さんは、バカリズムに下ネタ全開のキレ発言を、うっかり言わされそうになるのでした。


チ○カス!口ごもるか口ごもらないかの微妙なさじ加減。
高貴な恥じらいと安っぽいエロさが同居した奇跡的なかわいさです。


最後に「キレ女」実践編として、吉木さんは楽屋で「ゴッドタン」ディレクターと対峙することになりました。
番組から吉木さんに与えられているミッションは「スタッフから超セクシー水着を着させられそうになった際にキレろ!」。
スタジオの出演者はモニタリングでその様子を見守ります。バカリズムからの指令は吉木さんの耳に届くようになっている。ここでのキレっぷりがバカリズムから認められれば、無事「キレ女塾」も卒業、というわけです。
スタジオからのバカリズムの指示を忠実に受けて発言する吉木さん。
出だしこそただの操り人形でしたが、途中でどんどん興が乗ってきます。バカリズムが何も指令を出していない状態でも、設定にのっとって、ディレクターに対して勝手に暴走してキレ芝居を進めてしまいます。


このあたりはアドリブらしく、モニタリングしてるスタジオ出演者たちもけっこう面白がっている。

バカリズム 指示なしでバンバン言ってますよ




キレまくり。
吉木さん、見事に「合格」を勝ち取りました。
どうしても噛み気味だったり、部屋を出るときの捨てセリフとして「さよなら!」ときちんと挨拶してしまうなど悪者になりきれないあたり、やっぱり根本的に育ちがいいところが隠しきれないんですけど、見事「キレ女」の称号を獲得したのです。


スタジオに戻ってきたあとのオチがまたよかった。

バカリズム あれだけキレてみて、自分でどうですか?
吉木さん はい、もう気持よかったです!
バカリズム これからもどんどんキレていってください
吉木さん はい! ありがとうございます!


ふたたび礼儀正しい吉木さんに人格が戻った。
しかしふと見ると、ふたたび吉木さんの前にはビール瓶の箱が。
オープニングの繰り返しです。バカリズムの教えを乞う前は、まったくキレずに従順に、黙って座ってしまっていた。
そこで、もう一度ためしにバカリズム

バカリズム イスに座ってください

と振ります。
すると、

吉木さん てめぇこのイスじゃ座れねぇっつーの!

今度はすげー怖い顔で椅子をゴスッとひと蹴り!
あの極度に気が弱かった吉木さんが「キレ女塾」での訓練を経て、見事なキレ女に成長した、というわけです。スタジオ中から「素晴らしい」と拍手喝采

矢作さんをして

矢作 ある? 今までゴッドタンでこんなにキレイにオチたの

とまで言わしめた一部始終でした。


「ゴッドタン」って、代表作といえる「キス我慢選手権」にしろ「ストイック暗記王」にしろ、番組ぐるみでアドリブ芝居の限界に挑戦しているようなところが感じられるんですよね。
アドリブってたぶんにギャンブル的なところがあって、事前にガッチガチに仕込んだほうがよっぽど無難にことが運ぶはず。
この点で、劇団ひとりおぎやはぎという巧者の安定感と、「ゴッドタン」流の審美眼で発掘した、みひろなり、谷桃子なり、「気をそらせ隊」なりといったタレントのポテンシャルを信じている部分が大きそうです。
これらレギュラー陣や、ゲスト芸人、あるいは未知数のアイドルやタレント、ときにはスタッフが掛け合わされることで、ガッチガチの芝居を遥かに超えた笑いや奇跡的な展開、圧倒的なくだらなさが生じるんじゃなかろうか、と。そんな印象です。
今回の「キレ女塾」では吉木さんも、そんなゴッドタン流に乗っかることになった。ふつうにしていれば、ただただ可愛いだけの吉木さんを、きっちりハネさせた。バラエティの魔法にかかったように見えました。


この放送終了後、「ゴッドタン」のプロデューサー・佐久間さんのTwitterアカウントに、恥を忍んで@リプライで質問を飛ばしたんです。「なぜこの企画で吉木さんが起用されたのでしょうか?」ってお尋ねしてしまいました。
これに対する佐久間さんのお返事。

答えは結構簡単で、スタッフの中にキャンナイやってた奴がいるんです。よかった!

番組スタッフの中に元「キャンパスナイトフジ」のスタッフがいる! 吉木さんはキャンナイメンバー。確固たるつながりがあったんですね。
深夜番組は死にません。