「キャンパスナイトフジ」が夢だった

今現在いっとう血眼で見て然るべき番組「キャンパスナイトフジ」(フジ系)が3月19日をもって放送終了! 5日放送の同「キャンナイ」内でそう正式に発表された衝撃で当はてなの更新も覚束なくなってきました。しょげてます。

キャンナイ超楽しい番組です。レギュラー放送の開始は09年4月の事ですが、ぼくが本格的に見始めたのは09年9月頃のことでした。まだ加入したばかりの吉木りさ早速取り上げた時も番組には全くハマっておらず、むしろ「チャラい」「女子大生とか素人を見たくない」「時代錯誤」と偏見まじりに見ていたのですが、それが今となっては「チャラいのが深夜らしくていい」「女子大生タレントの生々しさに興奮」「昭和のテレビってこんなに楽しかったんだろうか」とすべてオセロの表裏。

週末の夜にテレビの生バラエティを見ること自体、ぼくの長年の夢でした。テレビ朝日の「虎の門」は北海道ではネットされておらず、またフジでも2002年から03年にかけて土曜深夜に「深夜戦隊ガリンペロ」という生放送があって、当初は期待していたんですが、後世に残ったのはさまぁ〜ず大竹と中村アナの噂や、番組テーマ曲を歌ったユニット「ユニット名未定」(のちのSprings)に平野綾がいたとかくらいで、だいぶ期待を下回ったまま番組は終了。「キャンナイ」はそんな「ガリンペロ」のリベンジでもあったと勝手に考えています。

キャンナイは常に郷愁を帯びた番組でもあります。「オールナイトフジ」をもう一度、というのがコンセプトらしく、テレビの歴史を紐解いた上で「復刻版」としてスタートしています。ぼくはリアルタイムではオールナイトフジのことは知りませんが、今も続いている「笑っていいとも!」や「FNS27時間テレビ」などに共通する「昔ながらのフジの生バラエティっぽい華やかなくだらなさ」というのはずっと好きで、キャンナイはそのあたりの「空気」を狙いどおりに体現してくれた番組だと思っています。また当然再放送でもなく、常に最新版にアップグレードされながら、毎週生放送で届けられた。その郷愁は決して一時の感情で途切れたりすることがありません。

「女子大生」を前面に押し出すのはあざとい! と当初こそ思ってました。しかし「深夜の生放送に女子大生が出演」というのは、実は時代を飛び越えた普遍的なキャスティングなんじゃないか、という考えを今では抱いています。むしろこの形態での出演は女子大生じゃなきゃ実現しない、と極言してもいい程。18歳以下なら深夜の生放送に出ること自体が不可能ですし、逆に新社会人を主役に置いた「フレッシャーズナイトフジ」みたいな番組だと疲弊感がリアルで見てる側の気も安まらなそう。18歳以上でルール的にも問題はなく、社会人ほど社会に疲れてもいない。適度にはしゃいで適度に落ち着ける、そんな週末の空気感。女子大生にしか出来ないことがあったんです。

また大学時代をリアルに体感した視聴者が多かれ少なかれ抱いているであろう「大学時代はよかった」という懐かしさもありました。まだ何者でもないモラトリアムっぷり。宙ぶらりんな感じ。過去もしくは今の自分の追体験。高校生以下の子供達にとってはまだ見ぬキャンパスライフに想いを馳せる時間だったかも知れません。これらの幾重にもふわふわした感覚を呼び起こす意味でも「女子大生が主役」というコンセプトは明快にその役割を果たしています。

そもそもぼくがハマったきっかけのコーナーは「水着ファッションショー」でした。ゲスい人間で申し訳ないです。しかしただのライトエロなら何処にだって溢れかえっている現代ですが、重要なのは「金曜日」の「深夜」の「生放送」で「女子大生」が「水着」で「ファッションショー」をするということ。ひたすら足し算です。しかもみんなおおむね綺麗でスタイルがいい。女子大生といえどもその大半は既に事務所に所属しているプロの人たちで、だからこそいろんな意味での最低ラインは保証されているという安心感がありました。

そんな女子大生の中では一度当サイトで名前を挙げたことを引きずって「吉木りさ」が滅法好きです。「下北FM」に吉木さんが出演した際、その2回とも生放送を観覧に行きました。しかもその2回目は最前列でガン見というミーハーっぷり。ルックスは整ってるしスタイルも華奢だしトークも面白いしアニメ声だし歌うまいしとこれも足し算です。CD購入と引き換えの握手会に参加したときは愛想も抜群でした。その実当人は少しねじ曲がり気味の学生時代を過ごしてきた所など暗い部分も申し分なく、09年末から10年3月にかけて一番好きなタレントです。ところがキャンナイが終わると吉木さんを定期的に見られない! 吉木さんは3月にDVDをリリースするらしく、そのイベントにも向かうつもりです。

他にも女子大生タレントは杉ありさ高橋亜由美岡田佑里恵藤岡みなみなど、小さな世界の中でのスターが生まれました。世間的には「女子大生ブーム」こそ発生しませんでしたが、その萌芽は十分あった。毎週見てるうちにキャラクターが自然と頭に入ってくるし、身内意識さえ芽生え始める。一人一人の背景が見えてくるようになって、他の番組に出演する時にも自然と目に留まるようになっています。メンバーの個人ブログで「オフに一緒にお泊まり会をした」等ののんきな写真がアップされるたびににわか女子大生な気分がウソでも共有できました。

「エロくないのにエロく聞こえる歌〜しこたまがんばれ!〜」というテーマソングが今年正月の放送からオープニングで歌われるようになっていて、この曲がまたド名曲なのもひそかにポイント高いです。脳内ヘビロテ。2月の放送では女子大生が歌い踊るこの曲が、フジテレビ局舎内を使ったちょっとしたプロモーションビデオみたいになってました。生放送でカメラワークやフォーメーションなどに凝った演出は難度の高いもの。「なんだこの無駄なクオリティの高さは!」という驚きを忘れられません。番組内にはミニライブのコーナーも設けられていて、女子大生にはダンス要員もしっかり2人おり、歌と踊りに彩られた空間でもありました。

レギュラーのお笑い芸人陣も豪華! ケンドーコバヤシが司会として時にプロレス的な芝居っぷりを発揮して一同を力技で引っ張る。オードリーは春日がタガが外れた変態な一方、若林の冷徹な無表情芸も冴えました。ナイツも塙が意外と前に出てきて淡々と小ボケを挟み続け、土屋が水着ファッションショーの冷静と情熱の間に徹した名実況を一手に引き受けています。はんにゃ金田のナイナイ岡村を彷彿させる特攻的な賑やかしぶりはスター性を存分に覗かせるものでした。M-1決勝前夜に既に起用されていたハライチは澤部の童貞ぶりでキャラが立ち、岩井の世間を斜めに見るようなポーカーフェイスも定着しています。ゆったり感はこの一年でさほどハネませんでしたが名前を浸透させることはできました。

ケンコバ、オードリー、ナイツ、はんにゃ、ハライチ、ゆったり感が毎週ほぼ誰も欠けることなく2時間の生放送に揃う贅沢。しかもゲストとして毎回ブラマヨチュート徳井よゐこなど「いかにも」な芸人が出演するのも外しません。たしかに「芸人がバカ騒ぎするだけの番組」の典型で、女子大生の水着姿に俄然色めき立ってスケベ根性を隠しません。「週刊フジテレビ批評」的なものに批判されるならその最前線にいる番組で、そのあたりが原因で番組が終わるなら仕方ないです。でもなにか問題があって終わるなら、3月を待たずに打ち切りになるはずだし、ましてや正月に長時間SP放送したり、「卒業アルバム」を発売するなど有終の美を飾らせませんよね。

オチが本放送に収まりきらず「鶴瓶新年会」に持ち越された元旦のマラソン企画とか、放送外収入のためと割り切ってる様子の「MAX絵文字」のコーナーとか、他の出演者の存在を蔑ろにするスタッフネタの多用とか、文句言いたくなる部分も多かった。その一方で「おねだりマスカット」のレギュラー陣「恵比寿マスカッツ」が大挙して押し寄せた企画は圧巻でしたし、楽天監督を辞めたばかりの野村克也が女子大生の誘惑にエロ親父丸出しだったのも笑いました。毎放送回ごとに趣を異にする壮絶なくだらなさが良くも悪くも最大の魅力。毎週金曜日の深夜はお笑いとライトエロと歌と踊りのお祭り騒ぎ。「キャンパスナイトフジ」は夢でした。



……それでも未だに「後番組は未定」らしく、ひょっとするとメンバーやタイトルだけ変更して「キャンナイ2」的な番組がまた始まるんじゃないか、という期待も未だに捨てきれないんですよね。昨年末に突然「経費削減のためレギュラー女子大生を降板させる」と発表して、スタジオ中が悲痛な空気に包まれながら数名のキャンナイメンバーが一度お別れの花束を渡される、というところまで行った挙げ句、「でもマラソン走りきれば復帰させちゃうよ!」なんてひっくり返し方もありました。その意味でも3月19日の「最終回」は見逃せません。