木梨憲武の仕事術

笑福亭鶴瓶の特集が組まれている月刊誌「 Switch 」 7 月号( 6 月 20 日発売)。

一度立ち読みをしたっきりでしたが、このたびだいぶ遅れて購入しました。

基本的には当然のことながらつるべつるべした内容なんですけど、そんな鶴瓶と誌上対談をしているとんねるず木梨憲武が、その対談のなかで印象的な「仕事術」を実践しています。今回の更新はそれです。

木梨の瞬発力や、タイミングを見極める判断力、行動力などが、もうダイレクトに伝わってくるような内容でした。


とんねるずのみなさんのおかげでした」では、「田舎に泊まろう!」(テレ東系)のパロディ企画「とんねるずを泊めよう!」が不定期に放送されてます。とんねるずのふたりがベッキータカアンドトシのタカの北海道の実家などタレントの家に「半ばむりやり」みたいなていで訪問しては、酒を飲んで騒いだり家の中を物色したりする、とんねるず流の狼藉三昧が見られる内容です。


鶴瓶木梨憲武の対談では、この企画が話のきっかけになりました。

鶴瓶:昨日「とんねるずのみなさんのおかげでした」を見たけれど、「とんねるずを泊めよう!」の板東英二さんの回、オモロかったわ。全然昔と変わってない遊び心やんか。どんどんええ歳になって面白いな。
木梨:じゃあ次回は鶴瓶さんの家で! 本当は内緒で行きたいんだけど、鶴瓶さんのプロの技術を見させてもらいたいから。
鶴瓶:アホなこと言いな。あんな無茶苦茶されるのイヤや。いや、全然かまへんけど、やっぱり聞かん方がよかったわ。
木梨:でも鶴瓶さんはワンランク上のプロの技術があるから大丈夫。本当は内緒で行く企画だけど、この対談を読んでくれた方には、鶴瓶さんの回は、本人は番組が来ることがわかっているという目線で見てもらおう。でも、多分、先輩には言わないこともたくさん用意しておくから(笑)。
鶴瓶:ひどい。ひどいな〜。
木梨:あ、忘れないうちに、フジテレビに電話しないと!(しばし携帯で電話する)

いきなり出演交渉!

「本当は内緒で行く企画」と言いながらも、話の流れ上、鶴瓶に対してだけはネタバレ前提で、なおかつそれでも「ワンランク上のプロの技術があるから大丈夫」とすこし持ち上げたりする。

だからといって全部がバレバレの状態ではなく、鶴瓶に内緒なことも「たくさん用意しておく」と企画としての厚みもすぐに加える。

そして対談中にも関わらずフジテレビのスタッフへすぐに電話。

この電話一本が、あくまで対談上だけの単なる口約束で終わってしまうか、それとも本当に番組企画として実現させてしまうか、の分水嶺になりそうな気がします。


ちなみに鶴瓶のほうからもプライベートで木梨邸をいきなり訪問したことがあるそうです。

木梨:どこから耳に入ったのか、昨年、うちの女房の成美さんの誕生日パーティを身内でやってたんです。そしたらなぜか鶴瓶さんがでっかいバラを持ってきてくれて・・・、そうですね、三万から五万のやつを。
鶴瓶:金額はどうでもいい(笑)。
木梨:そのパーティ、二家族でやってたんですけど、ベーさんが来てくれたから子供たちが大騒ぎになっちゃって。仕事の途中に来てくれたんですよね。
鶴瓶:そういう驚かすのがね、俺も好きだけど、木梨もそんなん好きやねん。びっくりさすとかそういうのめっちゃ楽しいやんか。それで聞きつけて行ったわけよ。

このサプライズは素敵です。鶴瓶がいい人すぎる。モチベーションが「めっちゃ楽しいやんか」なのがまた惚れます。

だからこそ、今度は逆にとんねるずのほうが、番組ごと鶴瓶の自宅に「お返し」に行こうというわけですね。


対談ではその後「食わず嫌い」に鶴瓶が二度出演した話や、「後輩が鶴瓶のいじり方を間違うと木梨はイライラする」みたいな話などが展開されます。いずれも興味深い中身ですがそこは割愛。

やがて、さきほど木梨が電話していたフジテレビのスタッフが、この対談の場に実際に登場しました。

木梨:あっ、鶴瓶さん、「泊まり行こう」のスタッフが来ました。
スタッフ:あの、すいません。ご無理申し上げて。
鶴瓶:ご無理申し上げてって!
木梨:ロケの日にちだけ決めさせていただければ、あとはプロに徹底していただければいいですので。
鶴瓶:なんやねん。でもおまえ、こういう仕事の仕方してるんやな。オモロいよな。
木梨:こういうのって、タイミングがちょっとでもずれると出来ないから、こういうムードで仕事したいというか。
鶴瓶:いや、本当にそうよ。決めてどうこうするより、今ここに行った方が面白いんちゃうかっていうことの方が楽しいやん。
木梨:でも一歩間違えるとその事務所の人に本気で怒られたりするけどね。順番違うんじゃないかとか、ちょっと待ってくださいとか。でも、こちらの先輩は違う。

ハプニング的な仕事の発注も、鶴瓶と木梨、お互いの信頼関係に裏打ちされてこそ初めて実現可能なのだ、って感じでしょうか。

お互いの環境的にそれが許されているのが強みです。若手が同じようなことをやろうとしてもどこかからノーが突きつけられちゃうことが多いはず。ベテランになって実権を獲得したからこそのライブ感という気もします。

10 月 1 日放送予定の「みなさんのおかげでした」スペシャルでも「とんねるずを泊めよう!」企画は行われるようなのですが、どうやらターゲットになっているのは泉谷しげる高橋英樹さまぁ〜ずという三組の模様。この鶴瓶と木梨の対談が「 5 月 8 日」に行われたらしいことを考えると、だいぶ時間があいてしまいました。

スタッフまで呼んで具体化させようとした「鶴瓶の家にとんねるずが赴く」企画は、はたしてボツになってしまったのでしょうか。あるいは日程をとっくに決めていて、今でもひそかに計画は進行しているのか。

鶴瓶はハワイにも家を持っているらしいです。冬になって寒くなってから、「みなさんのおかげでした」という番組ごと、バカンス気どりでハワイの鶴瓶邸ロケに赴きそうな気もします。


SWITCH vol.27 No.7(スイッチ2009年7月号)特集:笑福亭鶴瓶[鶴瓶になった男の物語]
新井敏記
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