「ロッチ」の新作コントDVDを見たお(・ω・)ノ

お笑いコンビ・ロッチの新作コント DVD 「ラストベストロッチ」( 8 月 21 日発売)を見ました。

きちんとした作りで、とても面白かったです。


ロッチはコカドケンタロウ中岡創一からなる若手お笑いコンビ。「爆笑レッドカーペット」などのネタ番組をひょっこり経由したあと、現在では「爆笑レッドシアター」のレギュラーに加わっています。ビジュアルや芸風のインパクトでは他の若手お笑い芸人には及ばないし、かといって「通好み」ってほど特異なことをやってるわけでもない。

ただ、ともすればド派手なキャラ芸人が台頭しがちなお笑い界の最近の風潮に倦んだ人たちの避難所的存在というか。そんなニッチな市場をロッチがひそかに開拓しつつあるような気がしています。

今回の DVD はお笑いライブの模様を収めたものではなく、お客さんを入れていない(?)スタジオを使って、一本づつこまめに収録していったものでした。お客さんのよくあるキャーみたいな黄色い声援や、ややポイントのずれたような笑い声などは、いっさい入っていません。おそらく現場スタッフのものであろう笑い声がたまに入るだけで、ノイズはゼロです。快適な視聴環境が保証されています。

またセリフを噛んだり、アドリブ合戦してみたり、というようなハプニング性のある部分も、ほとんど見当たりません。うまくできなかったような NG 部分は何度も撮り直しをしているようで、「完成品」のコントを見せようという意識が徹底されています。それでも結果的にちょっとだけスタジオに紛れ込んだハエが映っちゃった場面もあるらしく、副音声で「 CG で消せないかな?」みたいなことも言ってましたが、そこまではさすがに不可抗力です。


収録されているコントは全部で 11 本。「UFO」「自転車日本一周少年」「カツ丼」「釣りのおっさん」「砂漠」「巨乳かメガネか」「路上詩人(取り調べver.)」「十文字アキラ」「福引」「ドッキリ」「こんにちは根岸」。どれも 5 分程度のサクッと観られるコントです。

いずれも簡潔なタイトルがついてますが、副音声によると本人たちはかなりの思い入れをもってコントのタイトルをつけているようです。たとえば「巨乳かメガネか」は、コントのセリフ的な流れから「メガネか巨乳か」にしようかどうか迷ったが、最終的に「巨乳」が勝ったとか。本人たちのこだわりなんでしょう。ちなみに DVD のタイトルについてはベストの作品を収めたから「ラストベストロッチ」になったんだそうで、次にまたベストと思える作品ができたときはラストとか別に関係なく「ラストベストロッチvol.2」にするらしく、そのへん適当です。

ついでにコンビ名「ロッチ」の由来をググッてみました。本人ブログから拾ったところによると、コンビ組んだ 2005 年にプロ野球千葉ロッテマリーンズが調子よくて、ふたりとも野球好きだったのでロッテにあやかって、でもちょっともじって「ロッチ」にした、とのことです。

昔ロッテの「ビックリマンシール」が大流行していた頃、同時期に流通していたニセモノのビックリマンシールに記載されているメーカー名が、正しい「ロッテ」じゃなく、少し誤魔化した『ロッチ』になってました。あるある小ネタとしてもそれなりに有名なエピソードのはず。てっきりそこから取ったのだと思っていたのですが、微妙に違うんですね。


ところでコントの内容はどれも粒ぞろいでした。

特に「カツ丼」はロッチ本人たちも DVD の収録にあたってまずこれを入れよう! と決めたというくらいお気に入りの作品らしく、さすがにそう言うだけあって非常に凝ったコントでした。

舞台は警察の取調室。犯人がコカドで警官が中岡。中岡がカツ丼の出前を電話で頼もうとするが…という導入の、ものすごくベタな設定です。しかしそのあとの流れは、出前の注文が二転三転しちゃうなど紆余曲折。しかも警官と犯人という険悪な対立関係が下敷きにあって、もう胸をかきむしりたくなるほどもどかしい。そんな噛み合わないやりとりを細かく積み重ねていくところが、最後まですごくよかったです。

他にもいわゆる「キャラもの」コントとして、コカド扮する「こんにちは根岸」や中岡扮する「十文字アキラ」「釣りのおっさん」などが収録されています。また特典映像ではそのキャラを下敷きにしたアドリブ混じりのロケコントが二本収められてます。特典のほうは自由度が高い印象です。

ロッチが極端だと思うのは、そんなキャラものコントすら、そこに出てくるキャラクターがそんなに派手じゃない! というところです。キャラなのに目立たない。押しつけがましさがない。メイクが地味。ましてや「クルマに轢かれる男」なんて、「轢かれてすっ飛んでいく」というアクションが最大の妙味なので、表立って扮装する必要もないわけです。

色がついてない。プレーンな印象です。過剰な消費のされ方、つまり派手な売れ方とは縁がなさそうで、一見しても押しは弱すぎるんですけれども、結果的にはそこがかえって強みになるのかも知れません。


ロッチのふたりはともに大阪出身。しかしネタには関西色みたいなものがさほど感じられません。どちらかといえば関東っぽいコンビという雰囲気さえ漂っています。勝手な印象ですが、ウッチャンとかさまぁ〜ずとかよゐこのカラーに近いです。ふしぎなものです。

もともとふたりは高校在学中から大阪吉本の養成所「 NSC 」に在籍していたようなんですが、それぞれコンビやトリオの結成や解散を何度か経たあげく、現在の所属事務所はナベプロで、在籍して 5 年目になるようです。そんな曲がり道をくねくね歩んできたところも、一つの所に過剰に依らないコンビのイメージに寄与しているみたいです。

おまけの副音声では自分たちのコントのおもしろがりどころをキャッキャおもしろがっていて、無邪気だなぁと思いました。

そしてちょっと珍しいなと感じたのは、ふたりがそんな副音声で、お互いのことを「コカドくん」「中岡くん」と完全に「くん付け」で呼び合っていたことです。年齢はともに 31 歳。芸歴は高校生の頃から数えると 14 年とか 15 年になるようで、若手というイメージに反して、だいぶキャリアを重ねてきた様子。ふたりの関係性も含めて、やたら新鮮に映るコンビです。