ナイツのドッキリを超えたコンビ愛

3 日にフジ系で放送された「お笑い芸人ドッキリ王座決定戦SP」は正直リアルタイムでは見てませんでした。

ところがネットの人たちが「ナイツのドッキリは超泣けた」と口々に漏らすので、ためしにネットの偉大な力を借りて動画を探して気楽に見てみたところ、これが本当に泣けて笑えてたいへんなドッキリだったのです。ナイツの絆がガチすぎる。

ということで、その興奮が伝わるかわかりませんが、ためしに内容を書き起こしてみました。


「コンビ愛を確かめたい!」と意気込むナイツの土屋が、相方の塙にドッキリを仕掛ける、というところから話は始まります。「芸人を辞めて絵の道に進みたい」という理由で土屋がいきなり「コンビ解散」を持ちかける設定。

このドッキリを成功させたいと意気込む土屋は本番前の楽屋などで 2 ヶ月にわたって絵を描き続けるという「伏線」を塙の前で張り続けたそうです。


ドッキリにかける思いを語る土屋。



僕に対する愛情がなかなか伝わってこない


そっけないですよね
昔は「ツッチー」って言ってたんですけど
それもあんま最近は言わないですね
だいたい「コイツ」とか言いますよね


なんかもっとキャッキャキャッキャしたい
愛を感じたいです


そしていよいよドッキリ決行の日。

仕掛け人はブラックマヨネーズのふたり。小野ヤスシ以来のドッキリ仕掛け人公式ユニフォームであるところの赤ブレザーを着て、別室のモニターでその様子を見届ける。

土屋が行きつけの喫茶店で待ちかまえていると、呼び出しに応じた塙がやってきた。

翌日に「M-1グランプリ」の予選を控えたこの日。塙は「M-1のネタやばいね」とそのことが気がかりな様子。

ところが土屋はそんな塙に向かって「解散できないかな」と切り出した。


本来この喫茶店はコンビにとってネタ合わせの大切な場。ましてや M-1 直前という重要な時期だ。しかしそんな日に土屋が切り出したのはよりによって「解散」。

土屋は自分で描いた競走馬の絵を見せてアピールし始めた。しかし塙は「いきなりそんなこと言われても厳しい」「そう甘い世界ではない」「覚悟がないと厳しい」「マジでありえない」とまったく聞く耳を持たない。

重い空気が流れる。もちろん土屋はドッキリが成功するまで塙からの説得に応じることはない。

やがて塙は「すげぇショックだわ」と手元の紙(土屋の絵だろうか)をビリビリに引き裂き、お金だけ置いて、その場から立ち去ってしまった。

これは土屋からすると予想外の展開だったようだ。「解散」を切り出せば塙からやんわり説得してもらい、頃合いのいいところでブラマヨが出てきて「実はウソでした! ドッキリ大成功!」となるはずだったのだが…。

塙の突然の退場という不測の事態に動揺する土屋。ブラマヨもモニタリングしていた別室から土屋のもとへ駆けつける。騒然とする現場。土屋はディレクターに「ドッキリであることを打ち明けたい」と語るが、「そこはちょっとこらえていただいて…」と受け入れられない。ディレクターは「ちょっと一回打ち合わせします」と退席。

こうして解散ドッキリはいったん暗礁に乗り上げてしまった…。


ところが。

土屋の前から姿を消したブラマヨのふたりは、なぜかニヤニヤ笑いながらカメラの前へ姿を現す。

そして別の場所でいつの間にか待機していた塙と笑顔でハイタッチ!

実はこの解散ドッキリ、土屋に対する「逆ドッキリ」なのだった。

塙は最初からすべてを知っていた。土屋に対してキレてみせたのも演技。全部ウソ。ブラマヨのふたりも最初から土屋に対する仕掛け人だった。


塙が「逆ドッキリ」にかける思いを語る。



もう家族みたいなもんですから


大切に思ってないわけがないというか
やっぱりあいつがいなかったらぼくら漫才成立しないんですよ


だから本当に
「これだけおまえのことを俺が尊敬してるんだよ」
っていうところを相方に思わせたいです


ブラマヨ吉田「この場を借りて土屋への感謝の気持ちを伝えたい、みたいな…」


伝えたいです


そしてナイツは「亀裂」が入ったまま営業の仕事へ移動する。

「ドッキリの続きは 2 日後」とスタッフに告げられた土屋は気が重い。本心では「解散なんてドッキリだよ」と切り出したいのが、ドッキリがまだ継続中であるため真実を打ち明けることができない。

いっぽう塙はそんな土屋の内心を理解しているものの、あくまで「土屋から解散を切り出されてキレているてい」を保ち続ける。お互いの思いが交錯し、結果的に本番前の楽屋は終始無言。

ろくに打ち合わせもしないまま、最悪の状態でナイツは営業のステージに立った。


そこはスーパー銭湯の宴会場みたいなゆるいステージ。お客も含めてすべてが仕掛け人。

ネタの打ち合わせはしてないものの、さすがに阿吽の呼吸でナイツの掛け合いはよどみなく進んでいく。ワイプの中の今田耕司も「すげーな。漫才師や」と感心する仕事ぶりだ。

土屋はドッキリとはいえ「解散」を切り出した手前テンションがかなり低め。それでも塙のボケに忠実につっこんでいく。


そんなネタの途中。

塙が小ボケを重ねながら、しかしごく自然な流れで、とつとつと、土屋との思い出を語り出した。



大学時代に出会いましたから
もう 12 年ぐらいですからね
出会ってからやってるような感じですね
本当にいろんなことがあったんですけども


ちょっとびっくりするんですけどね
さっき実は、これほんとの話なんですけど
「解散しよう」って言われたんです
ほんとですこれ。さっき始まる前なんですけど


ちょっとぼくもびっくりして
なんかいきなりだったんですよ

漫才中のお客に向けたちょっとした雑談という体裁を取りながら、実はそのメッセージはコンビ解散を持ちかけてきた土屋に向かっている。

塙の語りが進むにつれて、土屋は何も言葉を発せず、次第にうつむき加減になっていく。


コンビ結成のときの話。



ぼくらコンビ組んで 9 年くらいなんですけど
ほんといろんなことがあって


ぼくが卒業してすぐに交通事故に遭ったんですよ
ほんと 1 年くらい歩けなくて
この大腿骨が真っぷたつに折れて 1 年くらいリハビリをして
歩けないでずっと入院してたんですよ


コンビ組んだ直後だったんですよね


ぼくが 1 歳上なんで、卒業して
彼が 4 年生のときだったんですよ
就職活動してるところを一緒にお笑いに誘って
ぼくが事故ったのに
毎日一日も欠かさずお見舞い来てくれて


家から遠いところを
3 ヶ月くらいずっと来てくれたんですよ


土屋の様子を別室でモニターする小杉。

小杉「これ泣いてません? 完全に。鼻フガフガなってる」



売れなかったころの話。



それでまぁ治ってやっと今の事務所に入って


本当にそれからも何やってもうまくいかないというか
ぜんぜんウケなくてね


ぼくなんかわがままで
先輩でうるさいので
けっこう厳しく言ったりもしてたんですけどね


それでもずっと信用してついてきてくれて
それでやってきたというか


一時期ちょっとキツいなというときもお互いあったんですけど
それもぜんぶ乗り越えてきて


ほんと誰よりもね、大事な存在ですし
ふたりでやってこその漫才なんで


ここで塙は、土屋からもらった一通のメールについて触れる。



去年
レッドカーペットっていう番組がありまして
「レッドカーペット賞」をとったんですね


その直後に
「賞を取ったからこそこれから大事だ」
って話し合いをしたときにまたケンカになっちゃって


あまりにもぼく言い過ぎちゃったんで
メールしたんですよ
「ちょっと申し訳なかった」ということで


そのときに彼からも
すぐメール返ってきたんですよ


そのメールぼくとってて
メールをね、くれたんですよこういう


塙はスーツのポケットから携帯電話を取り出した。

はい!!
誰になんと言われようと
ボクは塙さんが
世界で一番面白いボケと
確信しています
こちらこそこれからも
よろしくお願いします
m(_ _)m


土屋が塙に送っていた一年前のメール。これを塙は「コンビの絆」として保存しているという。



キツいときはこれ見て
ぼくももうちょっとがんばろうと思って
ずっとやってきて


本当にね、出来ればぼくは
一生漫才やっていきたいなという思いもありますし


今年もね
M-1 グランプリ優勝して
いままでいろんな人にお世話になってるので
恩返ししたいなっていうのがあります

塙の語りを聞いて、舞台上にも関わらず口に手を当てて嗚咽がとまらない土屋。そしてドッキリの仕掛け人であるはずのエキストラのお客もうっかりもらい泣き。別室のブラマヨもわりとしんみり。

「これからもよろしくお願いします」という塙の挨拶でナイツのステージは終了。客からはスタンディングオベーションが沸き起こった。その盛り上がり方が仕込みかどうかはわからないけど、それはもはやどうでもいいような気もする。塙の気持ちがわかった土屋はうずくまってひたすら「ごめんなさい…」。

そして満場の拍手の中、どさくさに紛れて仕掛け人のブラマヨが、ステージに駆け足で登場!


テッテレ〜


「逆ドッキリ」成功。ブラマヨの顔と、ブラマヨが登場してもなお平然としている塙の顔を交互に見比べて、土屋はようやく自分が騙されていたことに気づき、舞台上に崩れ落ちるのであった。



最悪だー!

小杉は「塙、知ってたで」とすまし顔。


しかし塙も



正直、自分が仕掛け人なのに、ちょっと俺も泣いちゃった