電気グルーヴがテクノロジーの進歩に感じている責任

「 TVBros. 」 8 月 22 日号の巻頭インタビューで、結成 20 周年記念のニューアルバム「 20 」をリリースしたばかりの電気グルーヴが、現代社会へ警鐘を鳴らしている(ロボットとしての立場から)。

電気グルーヴはご存知のようにピエール瀧自動販売機)と石野卓球(「きのこの山」で瀧を操縦)の 2 人組。

最近、瀧は自らの身体を自動販売機に改造したという。「 TASPO (タスポ)」の導入で出来てしまった自販機と人間の溝を埋めるのは自分しかいない。「機械と人間が仲良くするために…」 そんな使命感に駆られたというのだ。

人類は急激なテクノロジーの進歩を遂げてきた。しかしそれによって人類は間違った方向に進んでしまっている。

「その責任はすべて自分たちが負っている」と電気グルーヴはこのインタビューで述懐している。

「私たちはテクノロジーの歴史にあまりにも重大な影響を与えすぎてしまった」「現代テクノロジーをもう一度正しい道に戻すことは自分たちの使命である」。20 周年を迎えたベテランアーティストらしい真摯なメッセージだ。

これらは電気グルーヴとは旧知の間柄である漫画家・天久聖一だからこそ引き出すことのできた本音の数々に違いない。「自己責任」の名を借りて他人を傷つけるばかりの人間が後を絶たない世の中にあって、なんと潔い発言だろう。

人類に進むべき道を誤らせたテクノロジーの数々は、すべて電気グルーヴが創り出したものだった。その内容がことごとく初耳で、驚きの連続だったので、本稿では箇条書きで一部引用させて頂きたい。


電気グルーヴの発明したテクノロジー


ジャンケン
電気グルーヴ以前にも原型になる遊びはあり、当時のジャンケンは 10 種類からなる手(泥、風、棒、カブトムシ、現金、屋根、バラ、肉、ビニール傘、ドリンクチケット)で遊ばれていたという。しかし手が多すぎるため、ひどいときには一晩中決着がつかないときもあった。それを今の石、紙、ハサミの 3 つにまとめたのが瀧。


あみだクジ
あみだクジに横線を導入したのが瀧。


DJ
実は最初レコードは「縦に転がして遊ぶもの」(みんなで追いかけたりして遊ぶ)だったが、「横にして回す」という当時誰も考えつかなかったことに卓球が初めて着目した。横に回すための台(後のターンテーブル)を手作りして回したところ、物珍しさからたくさんの人が集まってきたという(人類初の「パーティ」)。


手と足を互い違いに出す歩き方
それまで日本人は右手右足、左手左足を同時に出す歩き方(ナンパ歩き)が主流だった。江戸時代までの武士の主流の歩き方でもある。それに野暮ったさを感じた瀧が手足を逆に振ってみたのが最初。その新規性ゆえ当時はメディア(瓦版)にも叩かれ、幕府からの弾圧も激しかったというが、今となっては影響を受けてない人間を捜すほうが困難になっている。


肺呼吸
最初に海から陸に上がった生物が電気グルーヴ。それまで水中でくすぶってた連中を集めて地上にコミュニティを作ったのが人類のそもそもの始まり(今で言う「ヒッピー」)。しかし、もしも自分たちが地上に上がらなければ、まだ水中でエラ呼吸をしていれば、今ごろ生物はもっと平和に暮らせていたはずだ。電気グルーヴは自分たちをそう責めている。


テルミン
世界初の電子楽器といわれるテルミンだが、それ以前に「鉢植えのサボテンに手をかざす」という独自のテルミンを既に開発していたのが卓球。音は自分の口で鳴らした。


AIBO
新時代のペット型ロボットももともとは瀧の発明品。


ホームランボー
瀧が拾った軟球にサインをしたのが始まり。


モビルスーツ
「ザク」の他に「ペコ」「ビク」「ヘラ」等のアイデアがあった。


鉄砲
初めて種子島に鉄砲を持ち込んだのが瀧。


ASIMO
人間型ロボット ASIMO は、卓球の「汗疹(あせも)」がヒントになった。


扇風機
スカトロプレイ後の客の尻を乾かすために開発。後の「首振り機能」で一度に多くの客の尻が乾かせるようになった。


風呂
女王様の聖水を全身で楽しむために開発。


なるほど、たしかに卓球が「 DJ 」を発明しなければ DJ のりピーが世に出ることもなかったし、電気グルーヴが海から陸に上がってさえこなければ、世界に戦争なんて起こらなかったに違いない。

この他にも天久氏の記述によると、電気グルーヴはテクノと稲作文化を日本に根付かせ、「ダッコちゃんブーム」「オバタリアンブーム」「切手ブーム」などを仕掛けてきたという。最近では沢尻エリカの両親として各地に出没しているらしい。

新たなテクノロジーによって人類が間違った方向に進んでいる。その責任をすべて電気グルーヴが負っているというのも、あながち大げさな話ではないのだ。

見開き 2 ページに渡った今回のインタビュー。ぜひ心当たりの方には「 TVBros. 」掲載の全文を読んで頂きたい。テクノロジーの祖・電気グルーヴの長大にして重厚な歴史、器のデカさ、人類に対する責任感、スカトロ趣味などがあなたにも伝わるはずだ。


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