「ケータイ大喜利」公開収録で板尾創路が起こした奇跡


12 日(日)に NHK 総合「着信御礼!ケータイ大喜利」の公開収録を見に NHK ホールへ足を運びました。

この日のぼくは公開収録が始まる直前までネットの人たちとのにぎやかな酒宴に参加していたのですが、その場を一時間ほどでむりやり中座して、ひとりで「ケータイ大喜利」に出向いたのでした。我ながら無粋な行為です。

この日の模様は来たる 18 日(土)の深夜 24:00(= 19 日(日)の午前 0:00 )から「満員御礼!ケータイ大喜利 夏祭りスペシャル」と題して NHK 総合で放送される予定です。もうすぐですね。

ってことで以下に、ネタバレをなるべく避けながら、いくつか思い出深かったことを書き記していきます。


ケータイ大喜利」の公開収録は過去に何度か催されたことがあるようですが、NHK ホールでの収録は初めてのことだったそうです。

個人的にも「大喜利」イベントをライブで体感するのは初めてのことで、はたしてきっちりおもしろがることが可能なのか、テレビで見ているように投稿されたネタの細かいニュアンスをきちんと把握できるのか、それが最大の懸念材料でした。

実際に鑑賞してみると、NHK ホールには超巨大モニターが司会者席の頭上にドンとひとつ設置してあり、またその上に DS (ダブルスクリーン)って感じでまた別のモニターがもうひとつ乗っかってました。ぼくは二階席の中盤くらいの座席にいましたが、少なくとも視覚的な情報伝達には問題がありませんでした。


ただ、案の定というべきか、出演者陣の「話し声」に関しては聞き取りにくい場面が多かったです。

よくお笑い芸人が大きめのホールでライブをするときに、声に余計なエコーがかかったり、それぞれの席に時間差で音が届いたりして、結果的に笑いが散漫になるというようなことがよく言われますが、まさにそれでした。

短文の瞬発力が勝負の大喜利は、回答が発表されたその第一報で、まず笑う。そこまではいいのです。

ただ、「ケータイ大喜利」は手練手管の今田耕司がメイン司会としてセンターに陣取っており、その横には「審査委員長」の板尾創路、ネタを選ぶのは千原ジュニアが担当しています。今回はゲストとしてケンドーコバヤシ陣内智則(とあと松井絵里奈)など、ことごとく弁の立つ吉本中堅芸人が顔を揃えるわけです。

投稿が発表された瞬間、ひとときの笑いが起こり、そして吉本芸人たちは、そのネタにすぐさまカブせてカブせて、さらに笑いのターボを加速させようとする。

ところが! NHKホール約 3,000 人収容の空間が一斉に笑いに包まれて、盛大な拍手がウワーッ!と巻き起こってしまったが最後、その笑い声、その拍手の音自体がひとつの巨大な響きとなってホール全体を支配してしまい、こうなると舞台上の出演者たちのトークが聞こえなくなってしまうのです。

致命的です。

自分たちの声や拍手に舞台上の音声がかき消される。客による「自爆」とさえ言えますが、かといって「声を出して笑うな」「拍手をするな」などという無理難題がお笑い番組の公開収録でまかりとおるわけもなく、結果、何十箇所という笑いどころを客自身が損することになりました。

聞きそびれたおもしろトークはかなりあったはず。そのマイナスポイントは出演者たちにとっても同じで、トークの中で完全に「笑い待ち」をしていたデッドタイムがもったいなかったです。


とはいえそんな環境的なことを除けば、やはり「ライブ」という意味では出演者と客の間で昂揚感めいたものは確実に共有していました。

なんといっても、板尾創路が最終的にすべてをもぎ取っていったのが、あまりにも素晴らしかったです。どうしたってあの人にだけは絶対かなわない。オープニングとエンディングのあいだで見事なフリオチをひとりで勝手に完成させてました。ハプニングと言ってしまえばそれまでだけど、それでいて綺麗すぎる展開。

奇跡体験でした。今年一番くらい笑いました。

しかもそんな奇跡に乗っかるかたちで 3,000 人の客席さえも一体感に包まれて、オープニングとエンディングのあいだで板尾と同時並行的なフリオチを完成させていたのが、「客すげー」と率直に思いました。もしかしたら番組で見たらたいしたことない感じに仕上がってるかも知れませんが、あのとき客席は純粋に笑いのみを志向した集団、むしろ一種の「劇団」として自然と形成されており、ぼくもその場に立ち上がって板尾へ盛大な拍手を送らざるを得なかったのです。

ネタバレ防止を意識するあまりおかしな情景描写になって申し訳ないです。しかし本当に最高でした。


他にもゲスト・阿藤快のアテレコの安定感だったり、塚原愛アナの冷静な進行だったり、沖縄放送局の中野アナの心ない屋外中継だったり、謎の外国人だったり、爆発だったり、たのしみどころが盛りだくさんで、めちゃくちゃウケっぱなしでした。

テレビ版では余計な部分が編集されて音声も聞きやすくなっているはずなので、あらためてパッケージし直されたものを見るのが今からすこぶる愉しみです。


最後にネタバレ関係ないことをレポります。

本番がすべて終了したあとに番組予告の 30 秒スポット CM 録りがおこなわれました。

これがテイク 1 ですんなり滞りなく録れてしまえば本編の盛り上がりとあいまって大団円めでたしめでたしだったのですが、予想外に時間がかかりました。「テイク 1」では板尾が自分のセリフのところで「ワザと無言」という暴挙に出て NG 、「テイク 2 」では VTR が 30 秒以内に収まらずやはり NG 、「テイク 3 」では今田耕司がなんとセリフを間違ってしまって NG 。なんと NG 三連発。

辛うじてテイク 2 までは穏やかな雰囲気でしたが、今田が噛んだあとは「さすがにこれ以上は…」という妙な緊張感が NHK ホールを包んでしまいました。

NG 続きのそんなスポット録りは、結局テイク 4 でなんとか無事オッケーが出ました。

最後まで我慢していたおしっこがギリギリ間に合ってよかったです。