板尾創路の握手会

27日(土)に渋谷リブロで行われた板尾創路の握手会&ハンコ押し会に行ってきた。

「板尾日記5」(リトルモア刊)発売記念のイベント。「先着200名様に整理券を配布」とのことで急がねばと思いつつも、最近身をもって感じている「芸人イベントは意外と人が集まらない」との法則に従って当日ギリギリの時間に赴いたところ、案の定「整理番号120番」で大丈夫だった。

予定時刻よりすこし遅れて板尾さんが登場。今日もいつものように全身白タキシードの正装……ではなく、黒っぽい皮ジャンとインナーにTシャツ、下はジーンズとライダーっぽくてかっこいい。あといつの間にか妙にガタイがよくなっている。

一度至近距離に近寄って間近でご尊顔を拝見した後、握手の行列に並んだ。地下1Fのイベントながらも握手の列はビブロの2Fの階段まで整然と続いていた。その最後尾につける。

行列が進む待ち時間を利用して買ったばかりの「板尾日記5」を読む。日付は「2009年1月1日」から始まっている。昨年2009年を記録した板尾さん自身による板尾日記。

元旦の日記から、平凡で、幸せで、思索的で、不満もあって、といった日々の記録が、淡々とした筆致で収められている。「板尾日記」シリーズも5作目なので全体の印象を言うのも今さらだけど、印象的なのは、その普段のイメージに違わず板尾さんの観察眼が冷静なことと、予想以上に日々の出来事を幸せだと感じ、周囲に対する感謝の気持ちや細かい気遣いも常に忘れてないこと。

仕事はきわめて順調。「ケータイ大喜利」などテレビのレギュラーの他に、自身が監督をつとめた「板尾創路の脱獄王」の最終調整、ドラマ「救命病棟24時」「木下部長とボク」の撮影、舞台「シュート・ザ・クロウ」、吉本新喜劇への出演、国内・海外の映画祭など、かなりのハードスケジュールをこなしている。

またオフの時間を活用して加圧トレーニングで身体を鍛えていたらしく、ナマで見てガタイがよく見えたのもそのせいだろう。たまに頭痛やインフルエンザなど体調不良に苛まれながら、46歳のベテラン芸人として充実した年だったのだろう、とその書きぶりから見てもよくわかる。

しかし、2009年の板尾さんには、あまりにもむごい、ある出来事があった。その内容をあらためてここに書き記すことはしないけど、そのことは日記を読む前からもちろん把握していたので、2009年冒頭からしばらく続くとてもたのしげな日記を読みふけりながらも、いずれ絶対的に横たわっているはずの悲しい出来事に対する予感に、頭のどこかが冷めている。

ふと本からいったん目線をあげて、イベント会場の書店内を見渡してみる。行列に並んでいる客は女性が8割を占めていて、穏やかで静かな空気がイベント会場を包んでいた。

そうだ、握手のとき、板尾さんになんて声をかけよう? すこし悩む。ぼくは最初「R-1ぐらんぷりの審査はどういうことだったんですか?」などと不躾なことを尋ねてこのはてなダイアリーに書こうという邪な気持ちが働いたりもしたが、とてもそんなことを聞く感じではなかった。

そのまま本を再度開くこともなく、握手の行列は着々と進み、ついに板尾さんの前に到達した。

「おねがいします」と声をかけると、板尾さんは特に何も言わず、「板尾日記5」に自身の名前をかたどったスタンプをぺたり。「板尾部長」がデスクでする判子押し仕事のようでもある。


板尾創路」の落款

サインやイラストを本人が直筆で描くのではなく、あくまで複製であることが生来運命づけられているスタンプを押すということにどんな意味があるのか正直よくわからないけど、その意味のなさも板尾さんだということかも知れないし、「板尾さんが捺したスタンプだ」と思えばありがたみも生じるのだろう。これがナンシー関だったら当然スタンプ会しかありえないだろうけれど。

スタンプを置いた板尾さんが「ありがとう」と言いながらスッと右手を差し出してくれた。応じてぼくもスッと握手。肉厚ですこしヒンヤリしている。何を言おうかさんざん迷ったけど、結局こちらからは一言「憧れてます!」とだけ真顔で伝えてみた。すると板尾さんはもう一度「ありがとう」とすこし歯を見せながら穏やかに微笑んでくれた。


帰宅して、残っていた「板尾日記5」をぜんぶ読んでみた。

8月のある日を記したそのページを開くと、一日あたりの文字数が極端に少ない日が続いていた。このときを境に板尾さんの運命は大きく変わる。とうてい言葉にし尽くせないことで、ぼくにとっては他人事ではあるのだけれど、やはりこんな不条理なことはありえないだろうと思う。その後に続く日記は興味深い記述が続く反面、読み進めていくうちに感情が搾り取られていく感じがした。

それでも板尾さんが自分の目の前で、自分の言葉で微笑んでくれたことだけは、まがうことない事実だ。とにかく笑ってくれて本当によかった。決して板尾さんにはなれるわけがないし、板尾さんみたいになりたいなんて口にするのも気恥ずかしい感じではあるけれど、やはりたしかに憧れだ。


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