ひとりの女子アナが北海道から消えた


ローカル気味な更新が続きますが。

今年の 3 月いっぱいで、ひとりの女子アナウンサーが北海道のテレビ局をなんの前触れもなくいきなり「退社」し、我々の目の前から忽然と姿を消しました。何人の方に話が伝わるかわかりませんが今回はそのことです。

とにかく残念なんです。


その人の名は近藤麻智子アナウンサー

札幌テレビ放送STV )の局アナで、平日夕方の帯番組「どさんこワイド」のメインキャスターをつとめるなど、北海道の女子アナウンサーとしてはかなりの「顔」でした。

その一報を聞いたのはこの人からでした。メールで『どさんこワイド見てましたか? 先程近藤アナが卒業との発表がなされました』と速報。

ぼくはそのとき NHK 大相撲中継横綱大関陣の取組にすっかり夢中で、ましてや近藤アナはこの日「どさんこワイド」の担当曜日ではなく番組もまったくチェックしていなかった。

近藤アナは中継リポートに出ていたらしく、そんなイレギュラーなシチュエーションでありながら、本人の口から「卒業」のあいさつがあったというのです。


突然のことでした。


なにせこの発表がなされたのは年度末も目前の『 3 月 26 日』。そして結果的にこの日を最後に近藤アナを STV で見ることはなくなって、「どさんこワイド」卒業どころか局自体を退社することもあとで知ったわけですが、その退社日は『 3 月 31 日』。もう、インターバル無さすぎ! あまりにも急杉田くんなんです。

サラリーマンがいつ所属組織を辞めようと自由ですし何ヶ月も前から視聴者に連絡しておく義務なんてものもあるわきゃないのですが、たとえば「めざましテレビ」のフジ中野アナが「とくダネ!」に異動するのをずっと前から告知してたりするのに比べると、たとえローカル局での出来事とはいえ、あっさり感にもほどがある。

かといって別に不祥事やらなんやらでクビになったわけでもない。そんな事実はどこにも見当たらないし(秘匿されていればわかりませんが)、だいたいクビだったら番組内でわざわざ本人から「卒業」だなんて報告しないですよね。退社の意思を伝えたのがよっぽどギリギリだったんでしょうか。


近藤アナはラジオでも毎週火曜日深夜の「アタックヤング」を担当してました。老舗のひとりしゃべり帯番組です。

この放送が 3 月 31 日の深夜 12 時、つまり『 4 月 1 日 0 時』のタイムスケジュールで、つまり放送日時的には既に新年度に突入してしまいます。しかし本人は 3 月末には「退社」しており放送がオンエアされるときには本人は社員ではない。録音放送ではあるものの、はたしてそんなことが成立するのだろうか? と懸念がありました。

4 月 1 日の当日かなりドキドキしながらラジオを聞きましたが、その日の新聞ラジオ欄にも名前があったように、そこはさすがに結局ふつうに近藤アナの声が聞こえてきました。「もう日付的には社員じゃないのに…!」と、細かいことですがかなり例外的なことのように思いました。

番組内では「いきなりですが今回が最終回です」というような身も蓋もないことを言う。さらには「今週から始まる新コーナー」とかいって新コーナーを立ち上げていたのですが、最終回なのですぐに終了、という奇妙な事態に陥ってました。やめるつもりだったのなら、わざわざ新コーナーなんて立ち上げなければ良かったのでは…。

そのあたりの日取りにもなにかしらの事情による「性急」があったと推測できます。そんな「アタックヤング」の最終回、近藤アナはお茶を濁したまま、それでもすがすがしく仕事を終え、顔の見えないままに北海道のラジオからも姿を消しました。


4 月に入り、近藤アナの行方も知れず悶々としているところ、またこの人から連絡がありました。

生まれ育った故郷の新潟県で局アナとして活動を再開しているとのことでした。FNS 系列の新潟総合テレビ(NST)への移籍です。STV の退社からまったく間髪入れずのことなので、 3 月以前に既に決まっていたように思われます。

自発的なものなのか、あるいは「引き抜き」にでもあったというのか…。 wiki を見てもこの新潟総合テレビには他の放送局から移籍してきたアナウンサーが多いようです。むろん事情は当事者にしかわかりっこありません。

同じ仕事をするのでも故郷のほうが精神衛生上いいのでしょう。「ぞっこん!ファイターズ」とかいって日ハムのレプリカユニフォームを着ながら日ハムの応援に駆り出されるよりかは、地元でアルビレックス新潟を応援するような番組を受け持つほうが遥かに自然です。

その意味ではフリーになって東京でひと山あてようみたいな野心もまったく垣間見えず(それはそれでたくましいですが)、むしろほのぼのするイメージの移籍です。


近藤アナはたしかな実力者でした。

かたい報道とやわいバラエティのどちらもいける適性、抜群のアドリブ対応、笑顔の絶えないテレビ映えのするビジュアル、まちがいのないアナウンス技術などなどをオールマイティに兼ね備えていた。先輩の中堅・福永俊介アナとの掛け合いはノリがよくておかしかった。局で開催している屋外のライブイベントでも他の一般客に混じって気兼ねもせずにノリノリで飛び跳ねているなど「あ、いいな」と思わせてくれるところが随所にありました。

近藤アナが司会陣から抜けた今、ぼくは「どさんこワイド」をめっきり見なくなってしまいました。

近藤アナが故郷の新潟で第二のアナウンサー人生を始めたというのはすてきなことだと思うのですが、いきなりぽつねんと取り残された側としては、なにか心にぽっかり穴があいたようなんや…。