前々回のテレ朝系「アメトーーク」はテーマが「サウナ芸人」で、この企画を持ち込んだという山口智充を筆頭に、博多華丸、カンニング竹山、サバンナ高橋、そして山崎邦正と、お笑い界のそうそうたるサウナ好きが名前を連ねては、おのおののサウナの愉しみ方をフリップでおもしろおかしくプレゼンしてみたり、はたして本当にサウナ好きなのかどうかその口ぶりからはあまり本気度の伝わってこない山崎邦正をおとしめてみたりといった、いかにもおっさん好きのしそうな回だった。
当方、在野の一サウナブロガー(いきなり名乗ります)としましても、ぜひ見習いたいサウナスタイルがいくつか発見できましたよ。
特にサバンナ高橋が声を裏返し、身悶えしながらアピールしていた「サウナのあとの水風呂の悦楽」については生唾をのまずにはいられない。かつては水風呂に懐疑的だったというサバンナ高橋。しかしある日、サウナで身体を一度ほてらせたあと速攻でキンキンに冷えた水風呂につかった瞬間、「これやったんや!」と開眼したのだという。
他のサウナ芸人もこの意見に同調の声を唱える。そんな中でただひとり「ぼくダメなんです」と水風呂に対して否定的な態度を示していた山崎邦正はていよくバッシングのやり玉に挙げられていた。
ぼくもサウナブロガーといえども山崎邦正の気持ちはよくわかる。もっぱら自分の心身状態の安定をデイリーライフの基盤に据え、そこをちょっとでもおびやかすような環境に身を置いた場合はそそくさと逃避行動に走るようなチキンハートの持ち主にとって、これまで水風呂の存在など「冷たい」「リスキー」「心臓がアレして死ぬ」などマイナスなイメージしかなく、ことごとく避けてきたのだ。
実際ちょっぴり味見ていどに手足を軽くひたしてみても凍るような冷たさで、こんなん入るなんて意味わからない、とあくまで水風呂というリアルからは目をそむけ続けてきた。
ところがそんなおりに遭遇したサバンナ高橋の「水風呂なしでは生きていけない」宣言。たしか「水風呂に入るためにサウナ入ってる」とまで言っていたかな。この熱烈な推しっぷりはなんなのだ。
うーん、これまでのサウナ人生損してきたのかも知れない。
というわけで札幌市内にあるスーパー銭湯「北のたまゆら」に 420 円也を支払って入場してきました。平日の昼すぎだというのに駐車場はほぼ満杯。だだっぴろい休憩室&食事処にも人はたくさん集っている。
で、すっぽんぽんになってさっさと男湯へ。客のほとんどはすでに定年を迎えているであろうおっさん、というかおじいさんで、あとは子ども連れ。なかなか賑わっている。自分のような年齢の男の単独行動は見かけない。祝日でもない月曜日の昼すぎのことです。きっと同年代の働き盛りの殿方たちは、また一週間ひどくゆううつだとか愚痴りながら仕事してるんだろうなぁ。わははは、と心の底から優越感に浸るこのニートっぷりは「しあわせとはいったい何なのか」をみなさまにあまねく問いかけます。
さて身体をひととおり洗ったあと、とにかくサウナだ、とまずはノープランでミストサウナに入ることにした。
一般的ないわゆる「フィンランドサウナ」よりもミストサウナのほうが心地良い。室内の温度も人体に悪影響が及ぼされない程度に調節されていて、また霧状に噴射されたミストが全身にしみわたるようで、いつまでもいられそう。ただある意味「ぬるま湯」でもある。逆にあまり熱さが感じられず、その後の水風呂への効果も低いと思われ、5 分ほどでいったん外へ出た。
仕切り直して、あらためてフィンランドサウナへ。既に収容人数ぎりぎり限界くらいの 15 人ほどのおっさんおじいさんたちが我慢くらべのようにサウナを耐えていた。
テレビには映し出されてるのは日テレ系、よみうりテレビ制作の「ミヤネ屋」だ。なんぴとたりともチャンネルを変える権限を持ち得ない。だがそれでいい。アメトーークではサウナで見たくもないテレビ番組が映ってるときにチャンネルを変えたいだの店側が変えようとしないだのというトークで盛り上がっていたが、ぼくは未だかつてサウナのチャンネルが切り替えられている場面に遭遇したことがない。どのみち平日の昼間のサウナは「ミヤネ屋」か「 2 時っチャオ!」の二択だ。
にしても、やはりフィンランドサウナは効果てきめんです。ましてや「ブラックシリカ」が導入されているという触れ込みで、なんだかわからないが公式サイトによれば「遠赤効果とマイナスイオンのダブル効果でリフレッシュ」させてくれるらしい。
ブラックシリカの恩恵をなんとなく感じながら 10 分くらいじっくり汗を流し、丸岡いずみキャスターのニュースが終わりそうなところで、丸岡いずみと宮根誠司の不毛なかけあいから逃げるようにサウナを脱出した。いやーあったまります。
そしていよいよ「水風呂の悦楽」を体感するときが来た。
でもその前にシャワーで軽くザッと汗を洗い流す。おとなのマナー。そして身体がまだサウナの熱をキープしているうちに、水風呂へ、突撃しまーす!(中原名人ばりの勢いで)
ムンクの「叫び」(さっぽろ雪まつりの雪像 ver.)で心理状態を表現
結果、 3 秒できゃぁぁぁとリアルに小さく悲鳴を上げた次第でした。全身が凍てつく。ためしにもう 3 秒ほど心を無にしてより深く腰を沈めてみたけれど、身体が声高に「 No! 」を叩きつけてきた。
え、これまさか心臓がアレするの? 死ぬの?
もはや 10 秒も浸ってはいられず、しかし内心ムンク状態になっているのを周囲に悟られないようにというむだな見栄によってあくまで平静を装って、ゆっくり水風呂を抜け出た。泣きながらシャワーを浴びた。こんなボロボロにされちゃった・・・。
決して快感を得られることはなかった。冷たすぎて瀕死になっただけ。
ただ、いっぽうでは「単にやり方がまちがっていたのでは?」という気持ちはある。
身体への熱の溜め方がぜんぜん足りなかったのかも知れない。サウナ 10 分ではたいして意味がないとか。あるいはマナーとか無視してサウナを出たあと熱が逃げてしまわないうちにダイレクトに水風呂へ入ったほうが効果的なような気もする。それは非人道的なので絶対やらないけど。
むしろ究極的には水風呂の水温がもうすこしぬるめであれば耐えられるんだけど、そんなの水風呂じゃないと憤慨する他の利用者もいるだろう。
いっそ腹をくくって水風呂にもうちょっと長い時間つかってみれば、未知の世界が見えてくるのだろうが、そうなると臨死体験とかのレベルで本当の「別の世界」が見えてきそうな予感もする。
根本的に身体に悪いことなのかな?
ただ、水風呂は他のおっさんおじいさんのような客もよく利用している様子で、そこに「なにか」があることだけは間違いないのだ。未だ解き明かされぬ謎の愉悦。サバンナ高橋の「ザバー! これやったんや!!」という裏声が脳裡にこびりついて離れない。高橋のいう「これ」を発見するまで、ぼくはサウナブロガーを名乗るべきではないのかも知れない。真のサウナブロガーへの道は長く険しい・・・そもそも「サウナブロガー」って何だって話ですかそうですか・・・。