「有吉 vs 西尾アナ」の結末

5 日放送の日テレ系「未来創造堂」は朝刊テレビ欄に『有吉 vs 西尾アナ』との記載があった。

最近の有吉弘行に関しては期待値あがっちゃってるもんだからどうしても見逃すわけにはいかない。なにしろ「 VS(バーサス)」の構図が取られているってことは、日テレの西尾由佳理アナに対して、有吉から間違いなくなにかしらのあくどい「あだ名」が付与されるはずなのだ。


個人的には、こないだちょうど YouTube で有吉がテレ朝の新人女子アナ 3 人にあだ名をつけてるのを見たばかりだった。


「あの有吉が新人女子アナにあだ名を付けてみた」


上記リンク先もいつまで見られるかわかったもんじゃないので要点の「あだ名」だけを書き起こしておきます。

有吉がつけたあだ名

八木麻紗子アナ:「泥しゃくれ」
竹内由恵アナ:「アナウンサーの皮をかぶったキャバ嬢」
本間智恵アナ:「 50 点の女」

言いたい放題だ。利害関係のない視聴者にとってはわけもわからず爽快ですらある。

しかしいかんせん相手が新人女子アナなぶん、おおよそ初見であだ名をつけざるを得ず、有吉による日ごろの洞察は不足していたに違いない。視聴者もそれぞれの女子アナに対しての共通認識をあまり持ち得てないはずだから、こうした試みはもうすこしキャリアを重ねた中堅以上の女子アナを起用したほうが俄然おもしろみが増すのだろう、と思った。下平さやかアナとかあたり。

その点、キャリアも知名度もある日テレ西尾アナは格好のターゲットといえるわけです。


ちなみにこの「未来創造堂」放送回で有吉と共にゲスト出演してたのは「北川弘美」というオスカーの女優というかタレントというか、だった。バラエティ番組にもたまに出てるだろうか。

ぼくがこの人とうっかり混同しがちなのは「北川景子」で、もちろん別人ですね。あとついでに言うと何年か前にイエローキャブのグラビアアイドルで「北川友美」という人がいて、記憶がそろそろうすらボケはじめている。


さて番組のオープニング早々、有吉が噛みついたのは西尾アナではなく、なんとその北川弘美のほうであった。

有吉は自分のことを含めてこの日のゲストを「ちょっと変わり者ふたりみたいな感じですよね」とさっそく北川を巻き添えにするのだ。「衣装が変わり者っぽい」という、ただそれだけの理由で。

たしかに北川は白いヒラヒラしたフワフワした衣装に黒いベストみたいなのを羽織っていて、って描写するのに語彙不足でたいへん申し訳ないんだけど、ともかくなんだか赤ずきんちゃんみたいな不思議の国のメルヘンチックな衣装ではあった。

「それは単なる言いがかりではないか?」と思わせるほどざっくり鋭く斬り込む有吉である。

いっぽう北川という人も芸能界では 10 年選手らしく、そんな有吉に対して「すごいひどい人だなというイメージしかない」「初対面から感じ悪い」とひるまない。

負の連鎖といえる。


ほどなくして矛先は西尾アナに向かった。

木梨憲武から「西尾さんなんか日テレのエースなんですけど」というわかりやすいフリが与えられる。

しかしそこに即座に引っかかったのは有吉よりもなぜか北川弘美のほうだった。西尾アナの衣装の胸元に施された「 A 」というアルファベットの装飾を見て、「『エース』って書いてある(笑」と、それとなく小バカにするのだ。いったいなんなのだ。

で、そのタイミングで有吉はすかさず西尾アナに対して


「鼻っぱしら」っていう感じですかね

と西尾アナの立派な鷲鼻をいじったあだ名をつけた。

命名『鼻っぱしら』

笑いながらも「けっこうショック」とふさぎこむ西尾アナである。


うーん、感想いろいろあるだろうけど、どうでしょう。もし仮に西尾アナが激しく増長した感じのイメージの人ならば、「鼻っぱしらが強い」という意味をもってして、この『鼻っぱしら』というあだ名がフィジカルメンタル双方をわたる強靱な架け橋として底力を帯びてくるはず。

ところが西尾アナって、実際たいして極悪なイメージはあるわけじゃなく、『鼻っぱしら』はあくまで顔面のわかりやすく目立つ部分をサラッとなぞっただけの話なのだ。

正直、笑いとしての爆発力にはやや欠ける印象であった。


おもえば「アメトーーク」で初めてこの「芸」を大々的に披露してからしばらくのあいだ、有吉が半ば詭弁のように繰り返していたセリフは「僕はあくまで世間のイメージを伝えてるだけなんです」。

単に外面的な悪口を有吉の独断で言っているのではなく「世間からこう見られてますよ」というのを免罪符にした上での「あだ名つけ芸」だという。

品川に対するフレーズ『おしゃべりクソ野郎』など一連のあだ名つけ芸が有吉再ブレイクの起爆剤となったのも、見てる人=世間の多くの人たちを「我が意を得たり」あるいは「悪口だけどおもしろいからいいや」「有吉すげー」などと胸のすく爽快な心持ちにさせたから、という部分が大きい。

だからこそ有吉に対しては『鼻っぱしら』くらいの上っ面だけのフレージングでは納得できない身体にさせられてしまったわけです。

こういうのを「ハードル上がってる」っていうのかな。

結局、「有吉 vs 西尾アナ」のバトルフィールドを感じさせたのは『鼻っぱしら』のくだりだけであった。看板倒れではあったものの、これはまんまとテレビ欄に釣られた格好なので仕方がない。


むしろ、どちらかというと番組全体的には『木梨・西尾アナ・有吉 vs 北川弘美』というまさかのアングルが形成されているのが予想外だった。

北川が番組にタッパーや瓶詰めで持参してきた、らっきょう、タマネギ、きゅうりなどの手作りの酢漬け(ピクルス)料理を、木梨、西尾、有吉の三名が口にしながらも完全にけなし気味だったり、逆に有吉のうまいうまいと提唱する飯の食べ方「ケンタッキーフライドチキン茶漬け」を、北川が「食べにくい」「むせる」「フライドチキンに対して失礼」など露骨に否定してみたり。

北川弘美という人がもともとそういう激しい気質なのか、あるいは有吉のキャラクターが周囲にも伝染して、みんなイラッとなってしまったのか。

有吉の向かうところバトルあり。

しかし自称「絶対性格悪くない」有吉の人間性が、「バトル」をことごとく笑いに変換してゆくのも、また事実である。