我々は有吉を訴える

DVD 『我々は有吉を訴える』をゲオでレンタルしてきた。

おどろおどろしいタイトルとパッケージながらも、中身はアメトーークなどで披瀝されつつある元猿岩石・有吉の性格の悪さがいい意味でフィーチャリングされたドキュメント風のバカ作品である。

初心に帰るとかで「電波少年」以来 12 年ぶりに『東北横断ヒッチハイク』なる企画を敢行するという有吉。最初見始めたときは恥ずかしながらこの主旨がガチなのかコントなのかわからず戸惑ったが、有吉が意味もなく哀川翔のモノマネでヒッチハイクを始めたり、そもそも『東北横断ヒッチハイク』という名目そのものがものすごくくだらないことに次第に気づき始めて、一気に肩の力が抜けた。「山形から仙台まで」だって。たしかに横断。

とはいえ東北地方で有吉が接触しているドライバーや農家の方など「一般人」の様子は、ちゃんと訛ってるし隙だらけだしで、限りなくガチっぽい。こういうときドキュメント風のコントならばいかにもプロっぽい劇団員とか芸人みたいな人が配置されるわけで、それも「仕込みだな」ってのが雰囲気でだいたいわかるのだけれど、この映像には完全にド素人としか思われないおばあちゃんや圧倒的に素朴な民家などが出てきたりして、こういう方々は DVD に顔や姿をさらしても構わないのだろうか・・・? と超他人事ながら心配になった。

ちなみにこの疑問は最後のスタッフロールを見て、なんとなく氷塊したわけで、一部仕込みの人もいたみたいだけれど、おばあちゃんはやっぱりド素人のおばあちゃんだったらしい。「有吉はこのあとお世話になった 1 人 1 人に謝りに行きました」というテロップもあり。要はそのおばあちゃんみたいな地方の善良な人を「有吉がうっすらダマし続ける」みたいなことが主眼の DVD であることがあらためて確認された。いくら演出が混ざっているとはいえ、それを平然とできてしまう有吉の才は特異です。

そんなふうに序盤は有吉のペテン師ぶりが目立つばかりだったが、だんだんヒッチハイクに同行している「ディレクター」の言動がエキセントリックになってくる。有吉さんやめてくださいよォみたいな低姿勢なものから次第に有吉テメェ殺すぞオラ! みたいなヤクザまがいなものになってきて、険悪な雰囲気が続いたあげく、最終的には有吉とつかみあいの大ゲンカ。有吉は T シャツをビリビリに引き裂かれて身も心もボロボロだ。破れた T シャツから左乳首を露出したままゴールする有吉がすてきだ。

で、この「ディレクター」こそが DVD の監修者として名前を出しているマッコイ斉藤という人らしい。なるほどお笑い系 DVD とか深夜番組とかで噂の巧者である。テレビではなく DVD の撮影であることを逆手に取ったやさぐれカラーを全編に貫いた。「笑いなし、涙なし」という実も蓋もない宣伝惹句もあって、あまり期待しないで見たんだけど、意外とちゃんとくだらなくて笑えた。


また、本編とは別枠で収録されている「有吉無線」というチャプターも、これはこれでひどい。昨年だったか「アメトーーク」で華開いた有吉の辛口というか単なる他人への「悪口ニックネームつけ芸」を、あらためてコンパクトにまとめている。女性スタッフとおぼしき人を相手に「泥の妖怪」とか。

有吉ほど「敵をつくる」ことを厭わない人もいないんじゃないか。