天使と悪魔

そんなこんなで基本的には天使の心を抱くぼくではありますが、ほんのひとつだけ、自分の深部にひそむ邪心を掘り起こされた出来事がありました。直接コンサートの内容とは関係のないことですが自らへの戒めのためにも書いておきます。

中野サンプラザホールへ入場するさいに必要なチケットを係の人に確認してもらって半券をビリッともぎってもらう、いわゆる「もぎり」をする場所は、階段をのぼった中二階みたいな位置に設営されてました。開演時間が迫るとその階段に大勢のヲタさんたちがぞろぞろと列をなす、という夏の葬列なシチュエーションが毎度展開されるわけです。

日曜日の昼公演の開始もあと十分ほどに迫ったころ、ぼくはいつものようにもぎりを受けようとチケットを係員に差し出したところ、ハラッ、と、何かが自分の足下に落ちてきた。

チケットです。入場後もしっかり持ってなきゃいけないはずのチケットの半券。それが落ちてきた。

おそらく誰かがたった今もぎってもらったばかりのチケットを、手元が狂ったのか、うっかり落としてしまったのでしょうね。ぼくは自分のチケットをもぎってもらう前に、そのチケットを拾い上げてみました。

で、入場。

落とし主がわかればさすがに「ハイ落としましたよ」とすぐに手渡せるのですが、なんせ人混みの中です。いったい誰が落としたのやら、一瞬でわからなくなってしまいました。

拾い上げて何の躊躇もなく座席番号を観てみると、なんと「 4 列」などと書いてあります。良番!  かなり近くで美勇伝さんたちを体感することが可能なステキな座席です。

ちなみにぼくの席番は「 6 列」で、決して悪くないポジションですが、そりゃまぁ「 4 列」のほうがいいに決まっているわけです。さてそんな「 4 列」のチケットが、いきなり手元に転がり込んできた、と・・・。



もやもやもや〜ん



(0^〜^)< (バサバサバサバサ)パクッちゃえよ〜 どうせ誰のチケットだかわかりゃしねぇんだからよ〜 「俺の席だ」って顔してりゃ怪しまれやしねぇよ〜
( ^▽^)< (パタパタパタパタ)イケマセン! 落とした人が今ごろ困っているはずです! その拾ったチケットは今すぐ会場の係の方にお渡しなさい!
(0^〜^)< いいじゃねぇかよ〜 4 列目なら梨華ちゃんのエロっちぃボデーがすぐ近くで見放題だぜェ〜
( ^▽^)< イケマセン! あなたにはあなたのチケットがあるでしょう!!


ベタではありますが、こんなふうに脳内でいしよし天使と悪魔が本当にせめぎ合いました。

そこに「チケット落としたんですけど・・・」と困り果てたような顔で係員の人にすがりついている男性を発見。あぁなんとか解決です。ぼくはようやく「あなたが落としたのはもしかしてこのチケットですか?」とヘラヘラ笑いを浮かべながら拾ったチケットをこれみよがしに差し出しました。


そんなわけで結果的には自分の中の梨華ちゃんエンジェルが吉澤デビルに打ち勝ったのですが、しかしあぶないところでした。最近よっすぃ〜強いから、ついハートをもってかれそうになった。


あと余談ですが、とりあえず遠目からそのあとの係員と男性とのやりとりをじぃーっとうかがってみて、なんとかチケットが男性のものだと判明したらしかったので、それはそれはよかったのですが、もしヤフオクとかで入手したチケットだったりしたら、わりと悲惨ですよね。

チケットにはそのファンクラブ会員の「他人の」氏名がきっちり記載されているわけです。となると、「自分のものだ」という身分照合が困難だろうァー、と。自分のものであるはずのチケットに標示されている名前が言えないなんて、怪しいったらありゃしない。

まぁ「友達から譲ってもらった」とか言えば係の人には納得してもらえるんでしょうけどね。口べたとか正直者さんとかだったら絶体絶命です。

ぼくも去年のビリージョエルさんのコンサートのとき会場入りしてからチケット落としてマジで焦りました。あの背中が総毛立つようなゾッとする感覚は未だに忘れられません。そのまま背中に羽根が生えて純白のハッピーエンジェルちゃんになって天国まで飛んでいってしまえばよかったのかも知れない。