笑い飯さんにインタビューして冷や汗かいた話

2010年7月28日に発売されたお笑い本「笑い飯全一冊」(ワニブックス)が増刷されたよ! という知らせを編集の方々より拝受しました。
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この本では、ぼくも非常に微力ながら「笑い飯大辞典」「笑い飯年表」などの項を担当させてもらっています。なので脊髄反射的に「増刷よかったな」です。
今年2010年「M-1グランプリ」で結成10年目の笑い飯がラストチャンスを迎えるにあたり、おそらく決勝にコマを進めるであろうふたりのことをざっくり深く知るのに最適な本ですので、ご興味のある方もない方もぜひちらりとご一読くださいませませ。
ところで、この「笑い飯大辞典」を書かせていただいた縁もあり、過日、笑い飯のおふたりに面会させてもらえる機会を頂戴しました。そうそうあるチャンスではなく超嬉しいことなのでウキウキ気分で臨みました。
しかし実際リアルに対面したところ、当然のこととはいえ、それはもう尋常じゃない緊張感に襲われることとなったのです。今回はそのお話です。
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現場では、編集の方を介しておふたりに初対面。
「こちら『大辞典』を書いて頂いたピエールさん(仮名)です」
すると哲夫さんや西田さんからは「これはこれはありがとうございます」「大変だったでしょう」などと優しく声をかけてもらえました。本当にありがたい。こちらとしては「いやいやそんなそんな……どういたしまして」とかなんとかゴニョゴニョ言いながらひたすら平身低頭です。
ひと通り挨拶させてもらった後、あらためて別室に通して頂き、お話を伺うことになりました。
そこには食卓のような角テーブルと椅子。おふたりはやおらタバコを取り出し、少しオフ的な雰囲気のモードに突入して、黙って煙をふーっとくゆらせはじめます。その場には、ぼくと、向かい合わせに座った笑い飯。編集の方は物陰からそっと様子を伺うような感じです。
お笑い好きにとってこの状態は申し分のないパラダイスであり、と同時に、未だかつて経験したことのない絶体絶命の窮地です。
アイドルさんの握手会とかではよく愚にもつかない会話をしたりしますが、あらたまってじっくり話をさせてもらう、というのはほとんど初めての経験でした。ましてや相手が相手。こんな緊張するかくらいの緊張感です。
笑い飯全一冊」発売に関するごく短いコメントを頂戴するのがこの日の使命。ICレコーダーをかばんから取り出し、ペンとメモ帳を片手に、見よう見まねで笑い飯さんにお話を伺います。
事前にメモっておいた質問事項をおふたりに投げかける。西田さんも哲夫さんももちろんサービス精神旺盛に返してくださる。
ちなみにぼくの話の聞き方は、たまにコントやドッキリ番組とかで見かける「こんな雑誌の取材はイヤだ」的な風景の記憶を総動員したもの。はいはいそうですねエヘヘヘとペン片手に相槌を打ちますが、内心気が気じゃありません。
そのうち、哲夫さんの表情にうっすら影がさし始めたのがわかりました。決して不機嫌ではないが確実に上機嫌でもない! こちらの緊張感やあたふた感がモロに伝わってしまっている……! とてつもなく申し訳なく思いながら、もはやどうしようもありません。
やや焦り気味にこまごまとしたことをなとなくお聞きして、5分くらいで、ほとんど逃げるようにしてその場を去りました。目的を達成することはできましたが、プロセスがとことんヘタレでした。
その言葉ひとつひとつが意味を持つ人からお話を引き出すのがこちらの仕事。逆にこちらが主張することは何もない。それにしても百戦錬磨のおふたりを目の前に自分が言葉を発するということ自体が尋常ではない体験のように思えました。
下調べをとことんしたうえでの心の余裕。大胆さ、度胸、そしてうらはらの冷静さ。たとえ本番が想定どおりにいかなくても対処できる臨機応変な対応力も必要……。冷や汗じっとりかきながら、つくづくそう痛感した次第です。ありがたいやら申し訳ないやらで、ともかくいい経験になりました。
今後、万が一吉木りささんにインタビューするようなことがあれば、全部そのときの糧にしようと思います。