「キングオブコント」生放送におけるダウンタウンの役割

生放送ならではの醍醐味ってのがあります。

特になかなか台本どおりに事を運ぼうとしないダウンタウンが司会の番組というのは、特にその傾向がよけい強くなりますね。

誰が言ったか「ダウンタウンは生放送に向いてない」。

もちろんそんなわきゃないんですが。

1.裏番組いじり

「KOC」の裏番組は「救命病棟 24 時」の最終回でした。

1 巡目の 8 組のネタがすべて終わり、いよいよ 2 巡目が始まるよ、という時点でのこと。

出場者がおおよそ全員いったん集まって控え室にたむろして、緊張感とひとやすみ感に包まれながら、大きな机をぐるっと囲んでひとつのテレビモニターを眺めている、という場面です。

テレビモニターはカメラに背を向けていて、そのため出場者たちが見ている画面にはいったい何が映ってるかわからない。もちろん映ってるはずなのは「KOC」なんですけど、その確証はありません。

そこに松っちゃんが食いついた。

松本「これまさか裏番組見てるんじゃないよね?
浜田「あー、今日ちょうど『救命病棟』の最終回やもんな」
松本「おまえら救命病棟見てんのか!

すばらしいです。

そして 2 巡目のネタがあと残り 5 組になったところで、いわゆるところの「天丼」。

浜田「さ、松本さん、ここからはファーストステージ TOP5 の登場でございますから」
松本「そうですねー、ちょっと江口洋介のことも気になってきましたですけれども」
浜田「いやいや大丈夫大丈夫。彼はやりますよ

このリアルタイム感。前提となるメジャーな知識を共有している上での裏番組いじり。

このやりとりで俄然「救命病棟」が気になっちゃう視聴者も出てくるでしょうし、ちょっとだけ TBS 的にはデメリットのありそうなやりとりではありました。でも面白いから関係ないです。

2.スタッフ泣かせ

逆に生放送におけるダウンタウンについて、ムズムズとむず痒く感じる人がいる、というのもわかります。

浜ちゃんがいちいちスタッフの現場での指示に逆らったりして、スムーズに進行しようとしない。わざと「時間が『押す』」みたいなことを仕掛けようとする。

もちろん冗談なんです。ただ、そんなことがやたら目立つです。


オープニングでのこと。

浜田「3 時間のナマ!ということでね。どんどん『押して』いきましょう


その後もスタッフ泣かせの進行。

浜田「あ、VTR 行くの? まだまだ行かないです」


そして 1 巡目のネタが終わったあと。

浜田「さぁここでファイナリスト 8 組の順位をダイジェストで振り返ってみたいと思います」
松本「おー、『時間無い』言うてるのに、そんなことはやるんですね」
浜田「(略) ただ前半押してたんですよ。後半なったらね、『時間戻りました』って言うんですけど。
クソッ!と思ってます今。もっと押せ、と
松本「この喋りでもっと押していきますから」


「押す・押さない」に関する浜田とスタッフのこぜりあい。

一応ひとつの笑いどころですし、生放送ならではのことでもある。

ただ、ずっと昔からダウンタウンの生放送ではこういう「押す・押さない」が行われている気がします。「HEY!HEY!HEY!」の特番でも毎回いつも同じようなことをやってる。正直ワンパターンな気がしてます。

浜ちゃんの全方位的なツッコミ気質を「職業病」だと好意的に思えばいいでしょうか。死ぬまで反抗期。

3.睨みをきかす

ダウンタウンのふたりは司会進行役ですが、基本的にネタの最中は完全に舞台裏にまわっています。

今回アシスタントをしていた TBS 出水アナが自身のブログにも書いてるように、浜ちゃんと出水アナは同じ空間でコントを見てたそうです。

ネタが始まると舞台裏に退き、ネタが終わると司会者席に戻る。

この独特の手法は「KOC」第一回でもそうでしたし、同じ TBS の「ドリームマッチ」のときも同じです。


ただ、 1 巡目の東京03 のネタ終了後、まだ舞台裏にいる浜ちゃんのこんな声がいきなり聞こえてきました。

浜田「それやったら最初に向こう行っとくで!」

怒気を含んだ語調で「それやったら最初に向こう行っとくで」。

本来は放送に乗せるべき言葉ではないのですが、生放送でした。いわゆるオフレコってやつに近いです。顔は見えず、音声だけがしっかり拾われていた。

なにかスタッフに段取り的なことで文句を言ってるように聞こえました。意訳すれば「ネタ後に慌ただしく急かされるくらいなら最初からステージに立っておくで」くらいの話でしょうか。

前後の脈絡が謎なので単なる憶測になりますけど。


ただどのみちダウンタウンには奧に引っ込んでもらわなきゃいけない。そのことに変わりはありません。


ロッチの長岡(メガネのほう)が一本目のネタ披露後にこんなことを述べていました。

長岡「後ろでダウンタウンさんが見られてると思うとより緊張が…」

若手にとっては、たとえステージ上にいなくても、ダウンタウンが後ろで見ていると思うだけで緊張しちゃうらしいんです。

姿を見せてさえいないにも関わらず、次の世代が勝手に脅威をおぼえている。

「死せる孔明生ける仲達を走らせる」って感じでしょうか。

もしもこれで「ダウンタウンがステージ上に居残る」みたいな演出だったら、いよいよ出演者は気もそぞろに違いないですね。「顔色うかがう」みたいな感じでミス連発必至です。

凄まじいダウンタウンの威光。

そんな威光すら「ダウンタウンなんぼのもんじゃーい!」とはね返すようなマブいお笑い芸人の出現に期待、ってところなんですけれどもねー。