高橋英樹のプロ論


フジ系「ボクらの時代」で高橋英樹と高橋美恵子(奥さん)と高橋真麻フジテレビアナウンサー(娘)が家族で鼎談した放送回が 6 月にあって、このとき高橋英樹がすごく良いこと言ってたんです。

こないだたまたま再放送があったので、あらためて録画してみました。

印象的だったのは、高橋真麻の「 2 世」なればこその苦悩と、そこを穏やかにたしなめようとする親・高橋英樹の仕事論。特に高橋英樹の言葉は俳優・タレントとしての心構えや世間との付き合い方などにビシッと筋が通っていて、力強く聞こえました。

真麻の辛さもわかるのですが、そんな娘の物言いを鏡とした英樹の発言が、俄然重みがあって素敵です。

真麻
いちばん辛かったのが、アナウンサーになりたいと思って
アナウンススクール通って、いろいろエントリーシートとかも考えて、セミナーも行って
で、就職試験のときも大変だったじゃない?


英樹
わかってる。大変だったなー


真麻
今日受かったかな、次の第二次行けるかな、第三次行けるかな、とか言って
あれだけ苦労したのに、入社した瞬間
もう「コネ」っていうひと言で片付けられて


英樹
そうそうそうw


真麻
もちろん誰にも頼んでないし、言ってないのに


英樹
知らないもんねだって


真麻
「あ、コネっていう言葉だけで私の努力は全部片付けられちゃったんだ」
と思ったのがもう辛くて


英樹
「いやーたしかに最初コネだと思ったけどアイツ凄いよね」
「仕事も凄い良いし、やってるよね」
ってなったら誰もコネだなんて言わなくなるから!


真麻
わたしそこまで行けてない。がんばろう


英樹
たとえば長島一茂が、あれ絶対コネだってみんな思ってるでしょう?
野球でデビューしたときは


真麻と奥さん
(苦笑


英樹
だけどそのあと彼は野球を辞めてからでも自分として
生きざま見てると、頑張ってない? すごく
そういうの見てると「あ、凄いな」って思うわけよ


真麻
だからすごく 2 世の人の辛さとか大変さとかがよくわかるわけ
あーたいへんだったんだろうなって
世間の人って、ひとの良いところしか見ないで
その人がどれくらい辛くてどれくらい努力したかってことを見ずに


英樹
それは人生ってそう


真麻
まぁそうなんだけど


英樹
自分たちがやってる映画とかテレビでもそうだけど
「出来上がった物」しか見ないんです
それはオーケーしたもの
その影でどれだけのものが NG として処理され捨てられているか
っていうのなんかお客さんは必要ない


あなたにとっても
つまり「自分がどれだけ苦労したか」
とかなんとかっていうのは NG の部分であって
見る人にとってみれば関係ないんですよ


(中略)


英樹
時代劇やってるときって俺いつもこんな怖い目してて
人ばっか斬ってたから
誰かがコショコショって言ってるときはギロって睨んでましたからね
もうすごい怖い。誰も声もかけてこない


それがあなた(=真麻)に言われて
「バラエティに出なかったら役者じゃない」みたいなこと言われて
SMAP と共演できないのは芸能人じゃない」みたいなこと言われて
「そういうのに出なきゃダメなんだ」って思うようになったでしょ?
あなたに言われたからやるようになったわけだけども


それからヨソにいくとこんなガキがさ
「あ、高橋英樹だ!」なんて呼びつけだよな
「おい、英樹!」みたいな


それ、まったく気にならなくなるわけよ
「あ、見ててくれるんだ、ありがたいな」って


それと同じように常にポジティブに物事を考えるようになって
ひとは悪口だけじゃない。良いことも言ってくれてる


真麻
その役者であり俳優である人間が
バラエティに出ておもしろおかしくするっていうのは
賛否両論あると思うの


英樹
賛否両論は何やったってあります
だってそれはもう「最高の賞を獲りました!」って言ったって
「あんなものは…」って言う人だっているんだから
だからそんなこと気にしてられないわけ
どんなものでも頂いた仕事はそれに向かって精一杯がんばる
楽しんでがんばる。うん。それしかない


真麻
わたしすごい覚えてるのが小さいときに
(パパが)足を痛めたときにもテーピングとかすごいやってて
そのテーピングが目立たないようにやるわけ
わたしとか“不幸アピールタイプ”だから


英樹
ウッヒャヒャヒャw


真麻
「なんで見せようとしない?」
むしろ「これだけテーピングしてがんばってます」みたいな


英樹
最良の状態でお客さまに見ていただく
その最良の状態を作るのがプロの仕事だから
体調が悪いとかどこどこが悪いとかってのは
絶対に言っちゃいけない