中居正広のいいとも司会はポストタモリ論に拍車をかける

14 日火曜日放送のフジ系「笑っていいとも!」は引き続きタモリ不在で、中居正広さまぁ〜ずタカアンドトシ里田まい柳原可奈子椿原慶子アナが出演。月曜レギュラーよりはるかに安心感がある布陣であるのは否めない。ちょっと「ぶ厚い」。

ポストタモリは誰なのか。そんな話はタモリが「いいとも」やってるかぎりは永久に浮かんで消える。たまに「次の司会は中居正広に決定!」という断定調のデマが堂々とまかりとおることもあってイヤになる。

とはいえ、本人含めてそういう「空気」があることは、みんなわかってるはずで、これはもう仕方ないことのような気がする。


中居正広の様子を含めたタモリ不在のいいとも火曜日の様子を、以下に。

オープニング

いいとも出演時にほぼ毎回カブっている帽子の類を、今回中居はカブッていない。そんなときの中居はどこか少しよそ行きだ。こないだ「婚カツ」最終回の宣伝で月曜日にゲスト出演したときも帽子はカブってなかった。ここぞというときにはカブらず、トサカのように髪を立ててくる。気合のあらわれでもあるだろうか。

今回オープニングは、これまで火曜にやってきた「女装男子」コーナーの最終回で「チャンピオン大会」というふれこみ。タモリ不在のまま最終回を迎えることになった。スカートを履いた男のときおり見せるパンチラに反応してしまう自分が悲しい。

オープニング司会のさまぁ〜ずが、ふたりとも声を張り上げ、身体を張ってゴロゴロ転がったりしていた。アラフォーならではのグダグダなはりきり感によってタモリの穴埋めをしようという魂胆だ。しかし中居は開始 5 分にして「間がもたないってスタッフが焦ってる」と証言し、さまぁ〜ず大竹も「そんなに客席が盛り上がってない」的なことをネガキャンしていた。

月曜日も似たようなことを出演者がこぼしていた。「間がもたない」がタモリ不在時のキーワードになりそうな気がしてきた。他のレギュラー出演者を即興でいじって場をかきまわしたり、一般人に斜めから絡んでいって思わぬハプニングを呼び起こしたり、というようなタモリ流の司会者ぶりがいいとものリズムの基底にあることを思い起こされた。

テレフォンショッキング

中居が単独で司会進行していく。2001年の目のケガによるタモリ不在のとき、テレフォンは中居と久本ふたりが進行していた。純然たる中居のソロテレフォンは初ということになる。

「そうですね!」のお決まりのやりとりは、前日の香取慎吾ほどはつらつとはしておらず、含みを持たせたテンポで渋々じわじわと、という感じであった。もともとやる理由のよくわからないものだから中居が苦渋の表情を浮かべるのもわかる気がする。

そうですね! を一通りやったあと、中居はアルタの客に向けて「タモさんがいなくても、いいかな?」と問うた。アルタの客は「いいと・・・」と答えようとして口をつぐんだ。巧妙なトラップであった。「いいともと言ってはダメなことで客にいいともと言わせようとする」という工夫でうまく笑いを取っていた。

ゲストは泰葉。持参してきたポスターを手渡されると、中居はいいとも少女隊に対して「これ張っといてくれよ!」とワザとぞんざいな語調で強く命令した。

ただ、以前のタモリこそポスター貼りを要請する際は「これ張っといて!」という荒い語調であったものの、最近のタモリは「これ張っといてちょうだい〜」とすこしやわらかい表現を徹底している。60 歳を過ぎて分別がついてきたというのもあるだろうか。中居の荒さは現在進行形のタモリの模倣ではなく、むかしのタモリ流を現代に甦らせた感がある。

泰葉が中居ファンをカミングアウトし始めた。厄介なことになってきた。昔のライブ DVD を見過ぎて DVD プレーヤーが壊れたとか。中居が扱いに困り始める。しかし泰葉もよく喋るためトークはスムーズに回転している。

泰葉は「中居の話芸がすばらしい」と絶賛しながら、いざその中居が話に割って入ろうとすると「ちょっと黙っててください」。壊し屋の本領を発揮し始めた。口調はそれなりに丁寧ながらも、ちょっとわけわかんない。

やがて「中居に照れる」という体裁を装った泰葉が中居に対して「見つめないでください」。しかしそうなると中居は当然わざと泰葉をガン見することになる。にじり寄る中居。逃げる泰葉。アルタのセットの裏側に自らの姿を隠す泰葉。と、そのままコマーシャルへ突入した。即興コントであった。和田アキ子の耳にタモリが息を吹きかけるやりとりを彷彿させた。

CM 明け、「 100 分の 1 アンケート」の質問は「初恋の人と結婚した人」。で、ちゃんと 1 人ゲットしていた。前日デーブ・スペクターが出てきた時のハズし具合との番組テンションの微妙な差異が、こんなところでも結果として現れた。

「お友達紹介」のくだりで、泰葉がいいセリフを言っていたので書き起こしておく。

中居「ではお友達を紹介してもらいましょう」
アルタの客「えーーっ?」
泰葉「この予定調和はニッポンの美ですね」

いきなりめちゃくちゃ批評的なことを言った。いいともの予定調和。しかしそれがニッポンの美であると。泰葉が端的に表明したこの「いいとも観」に乗っかるのも悪くないと思う。

結果、中居と泰葉のトークは、さむいダジャレを泰葉がわざと披露して中居が「ファー!」とか二度ほど叫んだ以外は滞りなく、極めて順調に終わった。そりゃもう中居も手練手管のベテランだし泰葉も腐っても海老名家だ。

明日のゲストはケンドーコバヤシ爆笑問題が進行役らしい。絶対おもしろい。

メインコーナーからエンディングまで

後半コーナーは「オシャレ自慢芸人 SP 」というテーマで、麒麟田村、髭男爵ひぐち君、フットボールアワー岩尾、そしてアンタッチャブル山崎がおのおののオシャレぶりを披露していた。オシャレとか言いながらあえてイケメンから限りなく遠い所にいる人たちを集めているのがいい。

山崎が一発ギャグをやるようにさまぁ〜ずあたりから振られて、その考え中の時間を適当なトークで延々グダグダつないだあげく、「お弁当箱の歌」の替え歌で適当に逃げ切っていた。そしてまともなトークもないままコマーシャルへ突入。これがふしぎと成立している。「アメトーーク」の「後輩の山崎に憧れている芸人」を経て、いよいよ山崎の扱いが定型にハマりつつある。

ゲストの磯野貴理子麒麟田村について「ごぼうが服着て町歩いてるみたい」といじっていた。すると麒麟田村は「誰がごぼうやねん! ごぼうが服着て町歩いてんねん!」とリアクション。一応ツッコんではいるが、このあまりにもそのまますぎる反応に対して、さまぁ〜ず三村は「ただ繰り返してるだけだけど大丈夫?」と単刀直入に厳しい批評をしていた。

わりとこういう「ただ繰り返してるだけ」をしてしまうお笑いの人は目立つ。もう一工夫あってもいいと思う。とはいえ他人の指摘をしている三村も「見たままツッコミ」ってのをよくやるけれど。

山崎のファッションは「イタリアのコメディアン」をイメージしたものだった。やがて山崎は実際にイタリアのスタンダップコメディアンのような立ち振る舞いを見せ始める。タモリの四カ国語マージャン的なでたらめイタリア語風味を交え、身振り手振りででたらめイタリアンを演じていた。

また、無茶ぶりによって一発ギャグとして直前に即興で開発していた「お弁当箱の歌」ギャグもここで活きることになった。適当にギャグをとっ散らかしているようでいてチャンスがあればきっちり回収してくるあたり山崎一流の技とも思えてくる。

どのみち山崎ワンマンショーになっていた今日の企画は、もとから中居が司会のコーナーということもあって、タモリ不在でも完全に成立していた。ただ、必ずしもイケメンとは言いがたいお笑い芸人たちによる少し粋がった夏ファッション、というわかりやすいターゲットがあっただけに、タモリ視点によるぞんざいな芸人いじりも聞きたかった

エンディングは、この日ひそかにゲストだったアンタッチャブル柴田の動物好きが極まって出版されることになってしまったという動物本の宣伝を中心に、山崎のもうひとボケも挟みつつ、つつがなく放送終了。中居の仕切りによるラストの一言「明日もまた、見てくれるかな?」は心なしか少しテンション抑え目だった。

ちなみに 1945 年生まれのタモリが「笑っていいとも!」を始めたのは 1982 年。タモリが 37 歳のときだった。1972 年生まれの中居正広は、2009 年の 8 月に、同じく 37 歳になる。年齢的にはいよいよ並ぶことになるが、はたして。