川島なお美の集大成「宇宙一おいしい結婚披露宴」テレビ視聴記


結婚披露宴前の記者会見で、「今日の日をワインにたとえると?」という記者からの質問に、川島なお美はこう答えていた。

「私という名のワインを完熟に向かわせてくれる器にようやく出逢えました。彼というグラスの中で熟成していければと思います」

記者は記者でうまいこと言わせようとするし、川島なお美もそれなりにうまいこと言えてしまう。win-win の関係? しかし川島なお美がいつしか「ワイン大喜利」から永久に逃れられない運命を背負って生き始めたのもまた事実である。「わたしの血はワインで出来ている」を代表作に人生をワインにたとえっぱなし。

すべては「お笑いマンガ道場」で培った大喜利センスのたまものだ。

そんな川島なお美の芸能生活の集大成が「宇宙一おいしい結婚披露宴」だった。


23 日放送の日テレ系「サプライズ」は『川島なお美・結婚披露宴独占中継』という触れ込みで、川島なお美と「トシ・ヨロイヅカ」ブランドで世界的に有名だというパティシエ・鎧塚俊彦との披露宴の模様を放送していた。季節は見事なジューンブライドだ。でも番組の途中には、なぜか長山洋子美川憲一ウェンツ瑛士のグルメ旅みたいな企画が、なお美の「お色直し」の間にかなりの長尺で挟まれたりしていたので、披露宴特番としてはかなり中途半端な印象ではあった。なお美の披露宴だけでは一時間もたないとの判断があっただろうか。

「独占中継」は事実だったものの、実際には「生中継」の部分と「録画部分」とを折り混ぜた半生中継みたいな放送形態が採られていた。例年の「日本アカデミー賞」や藤原紀香陣内智則の結婚披露宴とかと同じような体勢だ。たしかに披露宴の様子なんてそのまま流したらダレちゃうだろうし、かといって完全に録画中継ならライブ性が損なわれてしまうので、なるほどこの形態がベストなのかも知れない。ちなみに披露宴そのものは 4 時間(!)催されたという話で、結果的にはその大部分がカットされたことになる。

披露宴会場のロビーとおもわれる場所に設えられた「サプライズ」の中継現場には日テレ馬場典子アナと菅谷大介アナが常駐していた。中継現場の背景には北野武テリー伊藤市村正親篠原涼子、そして古谷一行という面々から贈られた花輪が並んでいる。テレビの画角に映り込んでいるのはこの 4 組からの花輪だけだったものの、無論届けられたのがこれだけのはずもなく、要は「番組サイドが恣意的に絞りこんでこの 4 組」と相成ったのだろう。ここに「古谷一行」の名前が並ぶのは、さすが日テレという他ない。ドラマ「失楽園」の記憶がまざまざと甦る。

出席者の顔ぶれは、秋元康林真理子神田うの永井大(NEW!)、片岡鶴太郎西川史子、ドン小西、山田まりや、高橋克典荒川静香山田邦子南野陽子城咲仁的場浩司小沢真珠石田純一さかもと未明らが(翌日放送の「スッキリ!」を含めて)視認された。なお美の披露宴に相応しく濃いメンツだ。さらにはこの日なお美着用のドレスをデザインしたという桂由美、そしてデヴィ夫人たかの友梨、うつみ宮士理、かたせ梨乃などの重量級が勢揃いして愉しげに集合写真を撮っている場面にもお目にかかった。マダむんむん…。

しかし柏村武昭、富永一郎、そして「だん吉・なお美のおまけコーナー」で一世を風靡した車だん吉らの「お笑いマンガ道場」レギュラー陣は、この披露宴にははたして出席していたのだろうか? 見ていたかぎりでは把握できなかった。そもそも招待状は届いたのだろうかしら。悲しいことに鈴木義司先生だけは 2004 年に既にお亡くなりになっている。草葉の陰ならぬ空き地の土管の中から唇とがらせて祝福していることだろう。ちなみに「とくダネ!」によるとデーブ・スペクターはなお美と面識があるのに呼ばれなかったらしい。

披露宴の司会は徳光和夫でこの人選は鉄板。なお美の長年にわたるオファーが結実したらしい。徳光はなにかの感動的なセレモニーの途中のふとした拍子に「私どもとしましては“すぐに忘却に結びつく”感動の一コマではございました」などとサラッとニヒルな毒を吐くなど持ち味を発揮していた。禁忌とか絶対に言っちゃいけないことはプロとして確実に抑えつつ、こういうちょっとしたほろ苦いユーモアを巧みに組み入れながら披露宴の司会者仕事をこれまで何百何千とこなしてきたに違いない。ちなみに徳光の「すぐに忘却に結びつく」という失礼コメントに対してなお美は「私は一生忘れませんよ!」と毅然として反応しておりこれはさすがにベテランならではの切り返しであった。

素人目にも圧巻だったのはやはり鎧塚俊彦が 2 ヶ月かけて制作したというウェデイングケーキだ。1m70cm の高々と屹立した巨大タワーは自分たちのフランスでの船上プロポーズをイメージしたものらしい。このケーキはたしかに立派な「作品」で、なお美も「シナモンとココナツに見せたい」と涙ながらに語っていた。「シナモン」と「ココナツ」はなお美の二匹の飼い犬のことだ。ケーキにも精巧な造形をもってあしらわれている。犬に見せても価値なんてわかりゃしないだろ、なんて無粋なことは申しません。

ただ、このコメントからひとつ分かるのは、愛犬といえども披露宴会場にまでは連れて来られなかった、ということだ。よくテレビの収録現場には連れてきて暗に迷惑がられていたような気がするけど。

またケーキ入刀のあとは「ファーストバイト」の儀式が執り行われた。新郎は「俺が一生くわしたる」、新婦は「わたしが一生ご飯をつくってあげるわ」という意味をそれぞれ込めてお互いにケーキを食べさせあう。そんなファーストバイトを始める徳光の合図は「セシボン!」だった。髭男爵の「ルネッサーンス!」と意味は変わらない。


さて川島なお美は自らの披露宴についてあらかじめ「『おいしい披露宴』にしたい」と記者会見で言っていた。糸井重里おいしい生活」以来のシンプルにしてキャッチーなコピーだと思う。そもそも披露宴にコピーなんか要るか? というのは前提としてあるけどテレビタレントの煽り方としては間違っていない。ただ『宇宙一おいしい披露宴』と本人が言ってるのは聞いたことないけど、そのほうが大げさで耳目を集めるというのは事実ではある。

そんな『おいしい披露宴』の中核となったのはやはり「スターシェフ七人奇跡のフルコース」だ。

ざっとフルコースの内容を書き出してみる。読み飛ばしていいです。

1.イタリアンのカリスマ「アラポルト片岡護の「幸せを分かち合う旅立ちのアンティパスト 7 種盛り」 2.フレンチの鉄人「ラ・ロシェル坂井宏行の「揚げたてコロッケはパティシエ・トシの原点 フォアグラのクロケット 3.トリュフのソースとパルメザンチーズのさくさくチュイール添え」  四川料理「szechwan restaurant 陳」菰田欣也の「フォアグラの茶碗蒸しとタラバガニの旨味たっぷりフカヒレスープ新婚仕立て」  4.イタリアン「ラ・ベットラ」落合努の「北海道産エゾバフンウニの甘くて濃厚な抱擁スパゲティ」  5.フレンチの巨匠「オテル・ドゥ・ミクニ三國清三の「鎧のような伊勢海老を妻が優しく抱む天然真鯛の幸せスフレ仕立て ソースアメリケーヌ」  6.披露宴会場「グランドハイアット東京」総料理長ジョセフ・フデの「北海道産牛フィレ肉のソテー モリーユ茸ソース&ホワイトアスパラガス添え」  7.日本料理「麻布かどわき」門脇俊哉の「宇宙一官能的なトリュフの炊き込みご飯」  8.デザートは新郎の鎧塚俊彦自ら制作した「タルト・フロマージュ 妻に捧げるグラス・ゴルゴンゾーラ添え」
(登場順。ソースは披露宴の翌日に放送された日テレ系「スッキリ!」)

過剰な情報の洪水に溺れそうだし「幸せ」とか「官能」とか能書きがいちいち胃もたれしそうだけど、正直めちゃくちゃ美味しそう。

人も金も並々と注ぎ込んだ披露宴は昨今のいわゆる「地味婚」の流れに真っ向から反発するバブリーなものだ。新郎もケーキ制作にデザートにと自分の披露宴でフル回転している。このとにかく使えるものはなんでも使えというとことん派手にぶちあげた豪華絢爛な一大イベントは、なお美の集大成ともいうべき膨満感に溢れていた。


翌日「スッキリ!」で引き出物の数々が紹介されていた。

川島なお美プロデュースのペアワイングラス(刻印入り)、鎧塚俊彦の焼き菓子セット『ほっこり』、桂由美デザインの水が入ったミニボトル(花瓶として使える)、フランスパン『ほっこりバゲット』(「T&N」のイニシャル入り)、当日発売の本「熟婚のすすめ」(川島なお美著・扶桑社刊)、シングル CD 「 Actrice 」(二曲入り・歌はもちろん川島なお美)、「女優ミラー」(ライトつき手鏡)

これも見事な大盤振る舞いだ。物量で圧倒しようという試みが本当に好きなんだと思う。

引き出物に入っている著書「熟婚のすすめ」の中には、なお美流の美意識が記されているという。披露宴前の記者会見では著書に絡めてなお美はこんなことも言っていた。

「『エッチ』という言葉は嫌い。『アムール』と言いたい」


おめでとうございました。


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杉本彩ファンと川島なお美ファンはかぶるらしい