電気グルーヴ「レオナルド犬プリオ」をただほめそやす


電気グルーヴのライブ DVD 『レオナルド犬プリオ』初回限定盤を amazon で購入しまして、当該紹介ページに「お届けに 1〜3 週間かかります」って書かれてたので気長に待とうと思ってたら 3 日で届いたので拍子抜けでしたが、ひととおり消化したのでだらだらと感想文を書いてゆきます。

2008 年秋に行われた電気グルーヴのライブツアー「叫び始まり 爆発終わり」の模様を収録した本作は、公演自体がただでさえ 3 時間近く 35 曲もやっているので必然的に中身たっぷりですし、また初回限定盤にかぎって「 DVD×2+CD×2 」からなる全 4 枚組の倍々大ボリューム! 「 Audio-CD 」なライブ CD がくっついてるのがおまけにしてはやたら豪勢なのでさすが限定盤の名に恥じません。テレビやラジオでめぼしいものが放送されてない夜中 3 時から早朝 5 時までという間隙をぬって見ないといけませんからそりゃ露骨に睡眠時間が削り取られます。

ぼくは 2008 年 11 月 13 日に札幌のライブハウス「ペニーレーン 24 」で開催されたものに地元だったからがっつり観に行ったんですけど、そのときがナマ電気グルーヴ初体験で、おもえば最初にラジオ「電気グルーヴのオールナイトニッポン」を聞いてなんだこれ半分以上なに言ってるかわかんねーけどおもしれーって深夜に腹抱えて笑いながら CD とかも聞きだしてやっぱり総合的に好きってなったのが 1992 年とかくらいだから、かれこれ 16 年越しの遠距離恋愛が結実したよって流れになってます。遅すぎだろって気もするし、むしろよく電気グルーヴのほうでも不定期的にとはいえここまで活動を続けていてくれたもんだなとありがたく思っている次第なのでした。まぁ北海道で毎年やってるライジングサンロックフェスティバルとかいわゆる夏フェスに赴けば容易に見られたのですけれど。

ちなみにその夏フェスでの地元興行会社「 WESS 」との密なつながりがあったからこそもともと予定になかったはずの札幌公演が急遽追加されたよってわけらしいので結果的に電気グルーヴを招き寄せてくれている夏フェスっていうか夏の北海道の屋外の爽快な気候に最敬礼って感じにもなります。

ふりかえれば電気グルーヴが活動小休止状態に陥る直前、2000 年に世紀の奇作「 VOXXX 」アルバム発売に乗じて敢行されたツアーその名も「ツアーツアー」札幌公演は当時ぜひとも馳せ参じたいという気持ちがすこぶる昂ぶっていたにも関わらず、ちょうど就職試験と日程が丸かぶりしていてそれはいくらなんでもダメだろってことで断念したこともあり、いよいよ念願かなったって意味でもありがたみはとんでもなく付与されているので色めがねのえこひいきもやむなしという具合なのでご了承ください。

話は戻って、この昨年のツアーは公演地域こそ「名古屋、大阪、札幌、東京、東京、東京」と、かつての美勇伝の「東名阪しか回らない全国ツアー」並に少なかったのだけれども、一公演あたりのボリューム的にはなにを出し惜しみすることもなく充実してました。

ことごとく踊れるというよりも自然に血が沸き立つというか肉体が不可抗力で疼きだしちゃうような音がブリブリ出てきちゃう空間。レーザー光線とか炭ガスとかの特殊効果は、もうエコって何?って感じで惜しみなく出まくりだしピエール瀧の珍奇な衣装七変化は街に出てそのへんぶらぶら歩いてたら確実にお縄頂戴ってくらいのキテレツぶりで中年太りぶりも見事だし、石野卓球も右に同じって感じで中年太りだし、それでいて往年の若々しいハイトーンなボーカルを十二分に聞かせてくれるうえに瀧が抑制にまわらなければいけないほどギャグ 100 連発ってくらいフル回転でおもしろいもつまらないも関係なく生放送の太田光みたいに奇弁を述べ続けるし、そんなふたりのトークは破廉恥で卑猥でデンジャーで自虐的でちょっとだけお客さん思いで基本的には頭おかしいし、ってんでとにかく大満足すぎた。

そして出し惜しみのなさは留まるところを知らずこの DVD 「レオナルド犬プリオ」では東京の「 SHIBUYA-AX 」で 11 月 22 日に撮影されたライブをほぼ完全収録しているらしく、頭おかしい幕間のトークもいったいどこに連れて行かれるのかわからない軟禁的な不穏な空気感をそのままにパッケージ。一部のトークがカットされていたり、またアンコール後のくだりではあまりにもえげつない発言がなされてるところだけ「ピー音」で自主規制がかけられてたりするけれど、それも 20 代のパンクバンドとかが俺らイカレてるぜぇぇぇぇみたいなアピールしてるだけなら単なる若気の至りかそれともストレートなバカかって感じで別に見向きもしませんが、これが 40 歳過ぎたおっさんたちがもうこれ以上売れようというよけいな気負いもなく心底楽しそうにそれも自然と溢れ出ちゃうというくらいの人間性の発露で真性おもしろスピーカーぶりを発揮してるだけだから胃もたれしません。

根本的にはダンサブルな楽曲の連発なわけで、センシティブでエキセントリックでメランコリックでうんこみたいな音やリズムしか聞こえてきません。そこを堪能するだけでも十分です。

さらに純粋に電気グルーヴの笑いを希求するとなれば副音声で通称「オーディオコメンタリー」がついてまして、これが笑えすぎておなか痛い。ライブ部分が 3 時間ならオーディオコメンタリーもきっちり同じように 3 時間分が収録されていてお得な気分です。サポートメンバーでライブ中もずっと卓球の横にいる KAGAMI とかあと牛尾君という楽器担当スタッフの人などもまじえて、本人たちはワインとかビールとか飲みながら、卓球も収録中トイレに 2 回ほど中座するなどぐだぐだな感じで、でも前日に朝まで呑んでそのあとも自分の野球チーム「ピエール学園」の忘年会の予定があるという瀧がわりとシラフ気味にしっかりしていて、楽曲ごとのまともな裏話やら昔の思い出話やらくだらないギャグやら画面に映ってる自分たちへの茶化しやらが連爆。ゆるくてバカなネットラジオを聞いているような感じで尋常じゃなくたのしいのです。

ここにも何度も自主規制的な「ピー音」が入っており推測するにどうやら精神病棟とかキチガイとか言ってるらしいけど背伸びしてるんじゃなくてごく当たり前な話の流れの一環としてそう言ってるのでそのこと自体が既にキチガイじみているといえばそうかも知れないけれどもぜんぜん何の違和感もないというのは感覚がめっきり麻痺してるからかいちいち直感的におもしろすぎるからか単に盲目なファンだからかはよくわかりませんがわざわざ駄弁を弄し続けてそれを無意味にとっ散らかし放題しっぱなすということがトークにおいていかに大事なことかという教訓を勝手に得ていたりはしています。

またツアー密着ドキュメントのようなおまけ映像「ぶーやんのツアー同行日記」が 30 分間たっぷり収録されてもいます。これも意外と充実していてさほど奇をてらわず貴重なオフショットが満載、といったところで大半はおっさんが移動とか楽屋裏とかで弁当食ったり与太話を展開したりしてるだけなんだけど、先述した牛尾君による舞台上のシンセなり楽器群の簡単な解説とかが挟み込まれていてステージをただ見ただけではわからない部分の詳細になるほどと感心させられたり、 KAGAMI が楽屋に持ち込まれたお菓子の手土産「マカロン」を喜んで食べたあげくステージにまで持ち込んで周囲からこぞって生暖かい感じで苦笑されていたり、電気のふたりもいろんなかぶりものや珍奇な衣装を着てみてはゲラゲラはしゃいでいたりで、オーディオコメンタリーで語られていたエピソードの映像的な裏付けにもなっています。札幌公演でぼくもナマで見た「ピエール瀧が観客をステージにあげて口に含んだビールを男同士で口うつし」という昨今の性の乱れを象徴するバカ映像も漏れなく収録されています。

音楽はもちろん、映像、オーディオコメンタリー、オフショットと複層的に愉しめる構造になっていて、一からまともに堪能するのにトータルで「 CD 3 時間+ DVD 3 時間+オーディオコメンタリー 3 時間+オフショット 30 分」と 9 時間 30 分、なんだかんだでおよそ 10 時間かかる計算になります。初回盤だけの Audio-CD はお手元にカーステに PC 取り込みにと汎用性が高いですし、これに加えて DVD にはふつうのステレオの他に「 5.1ch 」で聞ける用の音源も収録されているので、インフラが整ってる人には部屋中のあらゆる方向から、電気でつくるいかしたグルーヴなり、四十路のおっさんによるきちがいトークなりが聞こえてくる。とこんな具合にどうにもこうにもおなかいっぱいメタボな仕上がりです。サービスが極まった。

レオナルド犬プリオ(初回生産限定盤) [DVD]
KRE (2009-02-25)
売り上げランキング: 171
おすすめ度の平均: 5.0
5 かっこいい
5 相変わらず副音声は脱線トーク
5 副音声にピー音が
5 電気の出血大サービス!! 、 安過ぎるぞこれ!
5 お笑い芸人より面白い副音声