四期

さて、もうそろそろ吉澤さん脱退にまつわるモーニング娘。コンサートツアー最終公演のセレモニーは、さいたまスーパーアリーナに飛行機が突っ込んで客席のヲタは全員爆発したにも関わらずなぜかステージ上のモーニング娘。だけは全員無事だった、みたいな愉快な事故が発生したりしてないかぎり、涙と笑いのうちに大団円となったのだろうかな。どうなんだろ。

公演終了からおそらく一時間以上は経過しているはずなのだが、未だにどのヲタさんのレポめいた文章も、 mixi なりはてななりいろいろ含めてまったくひとつも拝謁していない。動きが見えない。これはもしや本当にさいたまのヲタ全員死んでたりしてな・・・とこみ上げてくる笑いを抑えながら、さいたまのコンサートには赴いていないというハロプロ絵師 sato さんのサイトに上がっていた一枚絵を目の当たりにして、不意討ちにグエグエと苦しく胸がつまってしまった。

http://drawingdaughters.fc2web.com/daughters.html

自分の役割を終えて一息ついた吉澤さんに、エンジェル石川さんと、急性胃腸炎とかで休養中のはずの辻ちゃん、そして加護ちゃんが、まるで何ごともなかったかのように祝福の笑顔を送っている。でも、石川さんも辻ちゃん加護ちゃんも、存在がちょっと半透明で、なんとなく現実味には乏しい。そんなすてきで複雑な一枚絵だ。二頭身がより哀愁を誘う。

ほんのちょっと前までは、これ、別に半透明の絵空事でも夢物語でもなんでもなかったのだ。テレビでもコンサートの舞台裏でもワイワイガヤガヤ。それがごくふつうの日常の光景だった。いやまぁ石川さんはずっと変わらず元気にキャピキャピやってるんだけど。でも、なんだか、辻加護は。

モーニング娘。四期メンバーというのはよく自他共に評していることだけれども「家族」の構図におそろしいほど似ている。父な吉澤さんと母な石川さん、そして辻加護が双子みたいなのに双子じゃないこどもたち。今の状況は、よっすぃ〜パパおつかれさま、って苦楽をともにしてきた妻の石川さんがその労をねぎらっているあいだ、辻加護のこどもたちはわーいって無邪気にはしゃいでいるような、そんなところなのかも知れない。

しかし実際、オヤジが定年退職を迎えた家庭ってのは、あんがい冷め切ったものだったりするのかも知れないのよね。子どもはとっくに独立して両親のいる家になんていなかったりもするだろう。実家からはるか遠方に住んでいるか、あるいは親不孝な者は行方をくらましたりしている。夫は辛うじて妻といっしょに細々と定年を祝う。あれだけ手の掛かったこどもが成人して親離れ子離れはしたけれど、華々しさや達成感の裏側に、孤独や虚脱感やら、淋しさがやるせなく潜んでいる。

四期の絆を家族の絆と形容するならば、家族であるかぎり避けられない運命もあらかじめ想定しなきゃいけないのかも知れない。幸も不幸も偶然も必然もすべて飲み込んで。飲み込めなければ吐き出して。家族って一口で言ってもその姿はもちろんひとつひとつ違っていて、これでもかというくらい愉しい思い出もあれば、必ずしもハッピーなことばかりがあるわけじゃない。

そんなことは吉澤さんが誰よりもいちばんよくわかってる。

そしてまた一家離散とかオヤジが絶望的な DV 野郎とかそんな極端な例ではないかぎり、家族の絆というものは、ちょっとやそっとのことでは何人たりとも解きほぐすことのできない、もっと言えば、誰か家族のひとりが逮捕されて牢獄にぶちこまれても、だれが死んでも、死ぬまでも死んだあとにも、どこまでも永久不変のつながりであることを、吉澤さんはまたわかっているに違いない。

吉澤さん・・・なんかふしぎな感傷だ。