ウエンツ瑛士と矢口真里

矢口真里のことについては、モーニング娘。の脱退に端を発した一連の喧騒のあとは特にどうとも考えることはない、少なくとも石川梨華にまつわるあらゆるモヤモヤに比べると 100 分の 1 ほども頭の片隅にはない、しかし「ラブハロ!矢口真里 DVD 」だけは今さら購入してすっかり堪能してしまった・・・くらいのレベルの凡ヲタな我が身である。

しかし巷間なにかと賑わせている 19 日放送の日テレ系「行列のできる法律相談所」での矢口には、これはテレビを見ていて本当に久しぶりに頭に血が逆流した。怒りに打ち震えた。

モーニング娘。を自らの意思かペナルティから未だに謎のままではあるがともかく辞し、「アイドル」という束縛から開放された、とでも感じているのか。島田紳助のいかにも下世話で手練手管なトーク展開に担ぎ上げられるような形で、いわゆる『彼』の話とか、軽くにおわせる程度とはいえもはや平気でしてしまう矢口の姿がそこにはあった。


おまえはウエンツ瑛士か、と。

タッキー、滝沢秀明にも似た抜群に均整の取れたバタくさいルックスを天から授かっているにも関わらず、まるでそんな運命に逆行するかのように、どこまでも自分を「よごれも辞さないタレントだ」「お笑いがわかるのだ」と別にこちらが求めていない方向性によって売り込んでくるウエンツ瑛士である。

彼と最近の矢口真里がダブって見えて仕方ない。視聴者の求める感覚とまるで噛みあっていない、むしろ乖離しているようだ。


ぼくはアイドルと呼ばれる人たちの「簡単にあけっぴろげようとしない」ところが好きである。たとえば異性関係のことなんて、あけっぴろげにしちゃうのはあまりにも容易い、と思う。状況に乞われるがままに言ってしまえばいい。しかしそんなスタンスよりかは、なんとか本気で隠そう隠そうとして、それでもポロっと横溢しちゃうようなほうがいい。「モロリズムよりチラリズム」である(「もうこれ以上」スズキさんの至言)。


で、矢口は写真週刊誌による「スキャンダル」によって、たしかに「あけっぴろげざるを得ない」状況に置かれた、と、もしかすると言えるのかも知れない。いくら必死に隠そうとしても「嘘だろ」ということである。

しかしアイドルってやつは、別に本当に彼氏がいることがはっきりしたからといって、アイドル辞めなきゃいけないのだろうか? いやさ答えは当然、んなわきゃない。


あなたは「行列のできる法律相談所」で矢口と共演していた西村知美を見たか!?

元「 CHA-CHA 」の西尾拓美と結婚して、三十代後半を迎えて、子どもまでいて、なんか 24 時間テレビでマラソンをしたりして、それはそれはいっぱしのベテランタレントである。なのに、未だにあの可憐さだ。かわいいじゃないか。そして圧倒的に頭がおかしい。いや、アニメやマンガのオタクとして立派に培ってきた、オンリーワンのすばらしい言語感覚である。


西村知美矢口真里

パッと対比して今どちらのアイドル性が強いかといえば、少なくとも「行列」だけ見たかぎりでは西村知美に軍配があがるだろう。そう生き急いでガツガツしなくても、三十代になっても潰しはいくらでも利くのだ。何を自ら滝壺の中にごぼごぼ落っこちようとしているのだ矢口は。それが矢口真里の生きる道、「矢口さんらしい」ということなのかも知れないけれど。テコでも動かないというか。

しかし、ひとつ大きく気になったことがあって、矢口が自分のことを「おいら」と称するのはモーニング娘。に軽く触れたことのある人間にとっては常識中の常識なんだけど、「行列」の中で矢口が「おいら」といった瞬間、スタジオの中には軽く苦笑が起こったのだ。

みんな、所詮その程度の認識なのだ。

ちっちゃくてかわいくて元気な元モー娘。です、ハイ、がんばります! でいいじゃないか。事務所や矢口、テレビ局の総意で「バラエティがんばっていこう」「ちょっとつっこんだ話もアリにしよう」ってことなんだろうけど、適材適所ということもある。

今回のバラエティ出まくりラッシュで矢口は数々のタレントと共演してきたが、若槻千夏のバランス感覚にも、鈴木紗理奈の世捨て人ぶりにも、相田翔子の天使のような悪魔の笑顔にも、客観的にさっぱり叶うものはないじゃないか。今さらバラエティ番組の実戦で一から模索なんてしていかなくても、結果はわかりきったことである。

ちっちゃくてかわいくて元気で歌も踊りもすごい人。それだけで、最高なのに。