「アメトーーク」DVD 第 2 弾は見どころ三昧

テレ朝系「アメトーーク!」の DVD シリーズ第 2 弾(4 巻・ 5 巻・ 6 巻)が 7 月 15 日に 3 巻同時で発売される予定らしく、その収録内容が 5 月 28 日放送の「アメトーーク」内で発表になったので、「おそらくここが見どころであろう」という部分をまとめてご案内します。

基本的に「発売前レビュー」って成立しないことのような気もするのですが、いったんテレビで放送されてるものについては収録内容に言及しても構わないんじゃないか、とも思います。なにとぞご容赦のほどお願いします。

Vol.4


越中詩郎芸人vsガンダム芸人(07年1月25日)

出演:「ガンダム芸人土田晃之千原せいじ濱口優品川祐若井おさむ 「越中詩郎芸人」ケンドーコバヤシ&博多大吉&バッファロー吾郎

越中詩郎芸人」はケンコバ出世作ともいうべき快心の企画だった。もともとプレゼン企画でケンコバが提案したことからスタートした越中芸人。実際の放送では「越中詩郎で一時間はさすがに無理」との今思えば冷静な判断が下ったのか、この回では DVD 1 巻にも収録されている「ガンダム芸人」との対立の構図が描かれている。

しかし、かつてテレビでこれほどまでにハナから勝敗の成立を前提としていない「vs」はあっただろうか。最終的には大団円を迎えたわけだけど、なんだか正常な価値観の彼方を肌で感じる仕上がりだった。まるで擬人化した「中央線vs総武線」バトルを最終的にはカップリング萌えに落とし込む格闘系腐女子鉄子の気分だ。

また後日放送された「腰痛い芸人」(09年4月2日放送)によると、最近「腰椎すべり症」の診断を下されたバッファロー吾郎・木村がこの越中芸人の収録時に座っていた椅子と身体の相性が合わず、ひそかに辛苦に耐えて悶絶しており、この日をさかいにスタッフの配慮がタレントの腰かける椅子の形状にまで行き届くようになったという。

お笑い芸人の労働環境の改善に一躍買ったといういわくつきの回でもある。


・ハンサム芸人(08年10月23日放送)

出演:チュートリアル徳井&ますだおかだ岡田&シャンプーハット小出水&フットボール後藤&麒麟・川島&ロザン菅&ハイキング松田&ライセンス

あからさまに女性向けの回と思われたしアメトーーク側も「女性からの評判が良かった」とかいう評判を得ているようだけど、内容的には徳井を筆頭にお笑いとしてはハンデになりそうな「ハンサム」を戯画化したあげく集団芸として推しまくっており、いい意味でとてもくだらなかったので録画したのを 2 度見返した。

あえて「イケメン」ではなく「ハンサム」を強調したのはその語感や言葉の辿った歴史のイメージがいい具合にレトロ風味を帯びているからだろうし実際成功していた。草刈正雄的なハンサムのあり方の呈示。

これ書いてる人間は一応男なのだけど、ロザン菅ちゃんの愛くるしいマスコットぶりが際立った回としても印象に残っている。相方のロザン宇治原が京大卒の高学歴を武器にクイズ番組で名前を挙げたその後押しを影でしていたという菅ちゃんもほどほどに頭いい感じではあるものの、そのルックスに似つかわしくない低身長(公称 162cm)、そして菅の来し方を「京大芸人」という著作で出版するなど、妙な得体の知れ無さ具合がぼくを惹きつけて離さない。

あと Wikipedia 見てたら 01年秋に「TBS オールスター感謝祭」の「第 20 代チャンピオン」になったりもしてた。なんなんだ菅ちゃんってば…。


・竜兵会(06年9月18日、25日)

出演:上島竜兵肥後克広土田晃之&デンジェラス&有吉弘行カンニング竹山劇団ひとりインスタントジョンソン

有吉弘行のあけすけな世渡り上手メソッドが公開されたりついにはまとめて書籍化されてしまったりするなど、古くも新しい芸人づきあいのあり方を内幕から長期的に暴露してくれている竜兵会。ほぼ太田プロ連合。

ダメ先輩と有能な後輩という構図はわりと一般的でそう珍しくもない話だとは思うものの、後輩が先輩を「このダメ人間!」「クズ!」「ひとっつも面白くない!」と罵るような間柄のまましかし友好を保つというのはかなり特殊な関係性のようであり、上島竜兵の「人徳」ということに結果的にはなるんだろうか。


・【映像特典】おぎやはぎ小木の有名人じゃない名前を言うゲーム

共演者に 50 音からひとつの頭文字を言ってもらい、それを頭文字として瞬時に「有名人じゃない名前」を言う、というゲームが得意だと豪語するおぎやはぎの小木。しかし自ら胸を張るわりにはゲームがまったく成立していない。

「ね」というお題に対しては「ねじまはじま」、「の」というお題に対して「のじまはじま」などと凄まじくパターン化してるし、もはや名前じゃないし、というつっこまれどころの余白が満載で、だからこそのフリオチ遊びです。エスパー伊東ハイキングウォーキング Q 太郎の「スーパーイリュージョンショー」と同類だ。

ゲームとしてはある種の無理問答として成立しないようなものでもなく、その後「笑っていいとも!」月曜日でも似たようなことやっていた。香取慎吾の巧妙な交わし方( SMAP メンバーの名前をあらかじめ用意しといて使うなど)がゲームの本気の勝ち方として憎たらしいほど小賢しかった。

Vol.5


・出川ナイト(08年2月7日、14日放送)

出演:出川哲朗有野晋哉濱口優勝俣州和ウド鈴木&千秋&カンニング竹山土田晃之

密着 9 ヵ月という長期取材で「情熱大陸」風に出川を追いかけた「出川大陸」は問答無用に超傑作。腰をいわした四十男がボロボロになりながら芸に遊びにと生きるさまをドキュメンタリー風に半リスペクト半笑いで切り取っていく。

出川の言語感覚や行動原理は「ふつう」の人とはちょっとづつズレていて、時としてそれはむさくるしい、キモイ、抱かれたくない、みたいな表層的には叩かれやすい要素にはなってしまうのだけれど、しかしむしろ取材に取材を重ねた結果わかったのは、その人間性にブレがないこと。

一挙手一投足が微笑ましく、ときにカッコよくさえ思えてしまう。そしてマジであればあるほど笑えるしそんなクサした反応にも寛容だ。公式サイトでも垣間見えるのだけれど、それは出川の芯の強さであり、恥ずかしげな言葉でいえば「ダンディズム」みたいなもんである。


エヴァンゲリオン芸人(08年4月24日放送)

出演:くりぃむしちゅー有田哲平オリエンタルラジオ中田敦彦加藤夏希世界のナベアツアンガールズ山根良顕バッファロー吾郎

オリラジ中田の語り部としての能力は突き抜けたものがあると思っていて、エヴァあんまりよく知らない自分でもワンシーンをひとりでまるまる再現しちゃう中田の再現(であろう)能力に魅了された。

また主人公の碇シンジにまつわる「性のめざめ」的なドキドキシーンもまったくの初見で、多感な時期にこんなアニメ目の当たりにした日にゃうっかりいろいろ勃興してしまうのも必然だろうと思った。

個人的には藤子・F・不二雄の「T.P(タイムパトロール)ぼん」の特別アニメ版で主人公格の少年少女ふたりがキスするシーンを見て、もうどエラく覚醒させられた記憶が蘇った。20 年前の小学生のときで「藤子アニメ絵なのにラブシーン!」みたいなことが強烈だった。一生残りますこういうのは。


・ひな檀芸人(06年3月20日放送)

出演:土田晃之モンキッキーカンニング竹山品川庄司

これまであまり語られることのなかったバラエティ番組のスタジオトークにおける知られざる役割分担のメカニズムを土田や品川らが解明していく。この回が大きな反響を呼び起こして本格的に「ひな壇」というジャンルないし「ひな壇芸人」という呼称がテレビ界に定着するようになった。

そんな「ひな壇」解説のトークぶりをひとつのきっかけに、品川は各番組で「語り」にやたら活路を見出すようになった。その意味では有吉弘行による後の「おしゃクソ事変」を引き起こす最大の要因となった回と言える。


・【映像特典】関根勤一人モノマネ

アメトーーク」には準レギュラー的に出演してる関根勤。しかし「浅井企画」や「コサキン」特集の回はあるものの、こと「関根勤ナイト」みたいな個人の特集は一度も組まれたことがない。

ことあるごとに得意のモノマネを披露してはいるわけで、「関根勤一人モノマネ」という謎の表題からして、おそらくいろんな回からの詰め合わせみたいな形になるのだろう。アメトーーク DVD 1 巻の特典「有吉あだ名ダイジェスト」みたいに。これはあくまで 5 月末時点での予測です。

Vol.6


徹子の部屋芸人(08年4月10日放送)

出演:「出演して惨敗芸人」ガレッジセール&おぎやはぎ友近チュートリアル次長課長麒麟&インパルス 「今度出演する芸人」小島よしお&サンドウィッチマン

お笑い芸人が「徹子の部屋」に出演するとことごとく黒柳徹子の返り討ちに遭う、というその惨劇を VTR でまとめ、また友近を「仮想・黒柳徹子」と見立ててスタジオでシミュレーションをおこなったテレ朝ならではの回。

黒柳徹子のお笑い芸人に対する意図的な「すかし」、「トークのオチを先に言ってしまう」という失礼、そもそも応対が冷たい、など、たしかに笑いの物種にするには十分異様で、また黒柳徹子という容易には揺るがない人だからこそ気楽に笑えもする。

ただ黒柳徹子をいわゆる「天然」っぽく見立てるのも行き過ぎちゃいけない。さすがにそこまでバカじゃないというかむしろ大いにクレバーなわけで、別に若手のお笑いが理解できないわけではなく、むしろ笑いの好き嫌いの趣味みたいなものが明確なようだ。

こないだ清水ミチコがピアノ弾き語りモノマネ芸をやってたときは、普段めったに聞かないような嬌声をあげておもいっきり笑っていた。ネタの分析も冷静で「ピアノ弾きながら替え歌を歌って本人が言いそうなことを言う。重層的にできてるんですね」みたいな正鵠を射る感じだった。

徹子の部屋芸人」の放送以来「黒柳徹子×お笑い芸人」のあり方はだいぶメタ的になってきている。黒柳徹子もお笑い芸人がゲストに来たらけっこうワザと意地悪してる。


・たいこ持ち芸人(08年11月6日放送)

出演:サバンナ高橋たむらけんじブラマヨ小杉&小島よしお&ミサイルマン西代&団長安田&アンバランス山本

「ザ・たいこ持ち」サバンナ高橋に尽きる。その物腰の柔らかさ、スマイル、人当たり。吉本のセンパイをヨイショするために生まれてきた男。

エピソードとか聞いてると要はやっぱり内輪ネタなんだけど、上の立場にいる人をうまいことホイホイ持ち上げてどんどん気持ちよくなってもらおう、そして期待はしてないけどあわよくば今後ともぜひぜひよろしゅう(揉み手)…というような、よりよい後輩として生きるための具体的なテクニック、処世術などが次々と披露されていく。

細部までつまっていてすぐにでも新書なんかでノウハウを出せそうなレベルだった。


板尾創路伝説(04年2月23日)

出演:今田耕司木村祐一ほんこん千原ジュニア

「板尾日記」は意外とふつうな板尾創路。収録されているのは超初期 30 分時代のアメトークで未見の人も多いのでは。

ポーカーフェイスとマイペースとあんまり口数多くないところがミステリアスで「伝説」として語り継ぎたくなる要因だろうか。NHK 総合「ケータイ大喜利」での的確な審査ぶりが板尾の見識のブレなさを物語り続けている。

そしてこの放送以来、今田耕司は「アメトーーク」に一度も出演していない。


・【映像特典】宮迫と富田靖子(02年12月7日放送)

まだレギュラー化されておらず単発特番だったころに冨田靖子がゲスト出演したもの。

どうやら宮迫がもともと富田靖子のファンだったらしく、ナマで対面を果たして本当にガチガチになったらしい。超初期のレア映像ということもあって今回の DVD に 6 年半越しで収録される運びとなったのでしょう。


というわけで以上でレビューは終了です。あとはどうぞご贔屓に。