2009 年の「ユーキャン新語・流行語大賞」に、お笑い芸人にまつわる言葉はこれといって選ばれなかったようです。
選ばれるのは名誉なことでしょうが、その一方で「選ばれたお笑い芸人は一発屋になる」というジンクスがあったりして、過去にはパイレーツの「だっちゅーの」、ダンディ坂野の「ゲッツ!」、テツ and トモの「なんでだろう」、波田陽区「って言うじゃない…」「○○斬り!」「…残念!」、レイザーラモン HG「フォー」、小島よしお「そんなの関係ねぇ!」。そして去年はエドはるみの「グー!」などなど、華開いたとおもったら翌年にはしぼんでしまった淡い記憶ばかりが残っています。
オードリーの「トゥース!」は選ばれなくて良かったかも知れません。
そんな傾向があるなか、「聞いてないよォ」で 93 年の流行語大賞・大衆部門の「銀賞」を受賞しているダチョウ倶楽部は、ベテランになった今でも一線級で健在。他のお笑い芸人もおおむねそれなりに生き残ってはいるものの一発屋感は拭えず、その点でもダチョウ倶楽部の存在は突出しています。
ダチョウ倶楽部がすごいのは、「聞いてないよォ」のあとも次々と新しいギャグを生み出して、しかもそれを流行語大賞にノミネートされるようなクラスにまでしっかり育てているところです。2 つ 3 つの流行ったギャグを使いまわすのではなく、きっちり新作ギャグをコンスタントにヒットさせている。どれも後世に残るギャグばかりです。
あらためて見ると驚異的なんですよね。
「ヤー!」
「つかみはオッケー」
「訴えてやる!」
「ムッシュムラムラ」
「すみません取り乱しました」
「押すなよ、絶対押すなよ!」
「ごめーんチャイチャイチャイニーズ」
「ヨゴレでごめーんね」
「チェックメーイト!」
「殺す気か!」
「すまん金貸してくれ」
「フェーフェーフェーおじさん」
「甘からず、辛からず、かといって美味からず」
「豆しぼり」
「クルリンパ」
「水中からあがって寝そべって人口呼吸で上島が水をぴゅっぴゅ噴き出す」
「(上島)俺は絶対やらないぞ!(肥後)じゃあ俺がやるよ!(寺門)いや俺がやるよ!(上島)…じゃあ俺がやるよ。(肥後&寺門)どうぞどうぞ!」
とんでもない量と質!
単純な一発ギャグといえるものからメンバー 3 人がいないと実現しないもの、さらにはテレビ番組を使ったもっと大きな集団を巻き込んだ団体芸まで、そのバリエーションも豊富です。まだまだたくさんあるはずで、このレパートリーには「ミスチルとかサザンってこんなにたくさんヒット曲があるんだ!」って半年に一度感心するのと同じくらいの贅沢を感じます。
1 日放送の日テレ系「踊る!さんま御殿!!」に上島竜兵が出てました。劇団ひとりとのペアでの出演です。
この日は序盤こそ上島の「くるりんぱ」に対してさんまが「そろそろやめたら?」と言うなどスベり気味でしたが、そのかわり今度はまた別のギャグで徐々に周囲を巻き込んでいって、最後の立食パーティの締めの場面まで上島のギャグで彩ることになるのです。
今回はふたつのギャグを推してました。
ひとつは劇団ひとりと口論になって、極限まで顔を近づけあった後、最終的にはなぜかキスをして仲良くなって収拾がつく、というアレ。ギャグというか「芸人同士のあうんの呼吸による一連の流れ」とでも言いますか。これ上島竜兵の持ちギャグですよね。
お笑い芸人同士でキスをすることくらい取るに足らないことなんでしょうけど、キスの一瞬のインパクトはやはり絶大で、いろんな芸人と絡むことができて汎用性があるし女性客もキャーとか盛り上がってくれるのでローリスクハイリターンって感じです。
もうひとつは、トークの中でふとしたことで上島が怒り、その怒りのあまり足を地面にドンと叩きつけると、その衝撃で周りの出演者が「ピョン」と飛び上がる、というアレ。「アメトーーク」とかいろんな番組でやってます。戯画的で特に誰も傷つかない平和なギャグなのがすてきで、最近のヒットだと思います。
「さんま御殿」ではこのピョンと飛ぶギャグは最初のうち劇団ひとりだけしか飛んでなかったのですが、二度三度と繰り返すうちに参加者が増えてきて、最後にはスタジオ観覧のお客さんまで飛んでました。ちょっとしたライブ会場です。日ハムの「稲葉ジャンプ」を彷彿させます。しかし実際はなんて名前のギャグなんでしょうね。しいて言えば「上島ジャンプ」?
トークには安定感を欠きながら、次々と新たなギャグを送り込んでくるダチョウ倶楽部。特にピンでもなんだかんだと周囲を味方につけて笑いを生み出す上島竜兵の存在感は、今さらながらすごいです。
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