なっちはなっち

先週サッポロファクトリーホールで催された安倍なつみさんのアコースティックライブに仕事帰りにスーツ姿で行ってきたのだった。

なっちはいつまで経ってもなっちだった。

10 年記念隊コンでついこないだ観たばっかりなんだけれどソロだとその魅力がいっそう可憐に花開いてしまうようで、MC から歌から客煽りからすべてなっちの世界。オンリーワン。正味な話、体重の増減やら取り巻く環境の激変やら、あともろもろの騒動、そして最近の重要トピックではなんとガツンと事故っちゃったアレとかいろいろあるはずなんだけれど、当の本人はいたってケロッとしまくっていて 10 年経っても変わらない。歌ってる最中にマイクを持ってないほうの手をおなかにあてながら腹式呼吸を意識して発声している様子など、「 ASAYAN 」でのまだモーニング娘。結成前の寺合宿でのボイトレそっくりそのままで 15 歳のときの北海道民のド素人安倍さんがそのまま時空を超えて眼前にいる。なんでもないことのようだけれどめちゃくちゃ感慨深すぎてそれだけで泣ける。

で、そんな安倍さんが当該公演では JUDY AND MARY の「小さな頃から」を歌ったんですね。ご当地ソングということで各地で選曲は違うらしんですけれど、この曲は安倍さんにとって特別な意味を持っているらしく、デビュー前の中学生時代になんか周囲のガキどもから虐げられたりしていたときにラジオから流れてきて死ぬほど励まされたとかそんないわれのある楽曲らしく。ぼくはガチガチのなっちヲタではないためそこらへんうっすら漠然としか理解してなかったのだけれど、それでもステージ上の安倍さんがとてつもない深みのある表情、歌声、たたずまい、要するに全身全霊による表現をもってしてジュディマリ YUKI を模倣しつつオリジナリティも兼ね備えた歌を歌っていることだけはわかった。

あとでネットでいろんなレポ見ると、なんと安倍さん公の場では「小さな頃から」を 10 年間の歌手生活で初めて歌ったとか、どうやらレアにもほどがある処女作的な出し物だったらしい。それを地元のライブハウスで生演奏でじっくり。エポックメイキング。後付けで得した気分にさせられた。

それにしても全編にわたって安倍さんはゆるぎなく、十代だろうと二十代だろうと変わりなく、今のままの調子だとあと数年後には自ら照れながら「なっち三十路になっちゃったよォ〜」、十数年後には肩関節をコリコリ駆動させながら「なっち四十肩で腕あがらないよォ〜」、六十歳を過ぎてちゃんちゃんこに袖を通しながら「なっち還暦になっちゃったよォ〜」 でしまいには「なっち死んじゃったよォ〜」 まぁそれはいいんだけどわりとありそうな未来が見える。