息切れグレイト亜弥&美貴

1 日に開催された ZEPP SAPPORO での GAM コンの話。

ライブ前からさっそく酒に逃げて鑑賞してしまったので詳しいことはよく覚えていない。会場近くの中島公園というところで夕暮れ空の下、 500ml ビール缶を一杯。

開演 10 分前に ZEPP に近寄る。

屋外に設営されたグッズ売り場には、なんとひとりの客もいなかった。バイトの売り子が立ち話に興じている。「ラクでいいよね」的な笑顔の花が咲き乱れていた。会場の入口前にもバイトしかいなかった。ハロプロ系で初めて体験するような閑散というか殺伐とした雰囲気に、内心ワクワクしながら、そしてフラフラしながら会場に入る。

チケットをもぎってもらった。それはいいのだが、アルコールで手が既にブルブル震えているため、いつもは 5 秒で済むはずの続いての「カバンの中身チェック」が、なかなかはかどらない。まずカバンのチャックを自分で開けることができない。バイトの係員に開けてもらおうとしたが、「ご自分でお願いします」と言われたため、1 分ほどかかってなんとかチャックを開けることに成功した。バイトには「お手数おかけして申し訳ございません」とこれまでにない温かい言葉を頂き、心がなごんだ。

カバンの中には、サイリウム、双眼鏡、綿棒、コンドーム、縄、山芋、ぬた、もぐら、日本刀、パーティーバーレル、手錠、知恵の輪、しびん、甲冑、ミヤマオオクワガタ等が入っており、バイトからは「たいへん失礼ですがライブが終わるまでこちらの品は預からせて頂きます」と、サイリウムともぐら以外のすべてを没収された。自業自得でありその点に関しては納得している。結果的にはもぐらをサイリウムでつつきながらの鑑賞になった。

ワンドリンク制ZEPP なのを当て込んで、本当はライブ中にも飲もう(※二杯目を)と計画していた。しかしなんと今回 ZEPP では「アルコール類の配布はしません」とのことだった。おいおいなんでだよ、とぼくは憤った。結果的に MC 中にあややミキティもさんざん酒の話してたのに、だ。むしろその話しかしていないと言っていい。仕方ないので三ツ矢サイダーで我慢した。

二階のファミリー席には、ファミリーが一組もいなかった。そもそもお客がいなかった。それでも子どもの姿は何人か見たような気がしたが、彼らは全員この ZEPP SAPPORO 建設時の取り壊し作業で死傷者を出すほどの大事故が発生したさいに不運にも巻き添えになった近隣住民の子どもの地縛霊である。黙ってほうっておくのがいちばんの供養と思われた。

僕の手元のチケットに記されている座席に赴くと、推定体重 150 kg の巨大なスーツ姿のハゲが股を広げて新聞を読んでいた。これも地縛霊かと思ったが試しに「あのー、そこの席・・・」とそれとなくチケットを見せながら伺いを立てると、無言で隣の席に移動したのでおそらく現世の人間であろうと思われた。しかしその巨大なハゲは隣でも股を広げて座るので占有面積が広く厄介であった。こういうときのためにぼくは縄を持参している。座席と座席の間をビシッと区切ることもできるし、もちろん縛ることもできる。カバンの中身チェックのあげくバイトに剥奪され手元にないのが悔やまれた。

ライブ前から無駄にはしゃぎまくっているバカなヲタ芸集団がますます会場の空気を不穏なものにする中、暗転。サイリウムが会場を煌々と照らし、いよいよ始まりだとテンションがあがる。

聞き覚えのある音楽と共に最初に出てきたのは、ハゲヅラをかぶり顔を黒塗りにしたミキティだった。ミキティはヘッドセットのマイクを頭部に装着、ゴムチューブを手に持ち、その場で単調なステップを踏みながら、いいか、みんなで鍛えるんだ、そうだ、その調子だ、ヴィクトリー!! などとうわごとを呟きながらエクササイズめいた動作を繰り返した。

品川庄司もやっているというビリーズブートキャンプだ。なかなか旬の時事ネタ&自虐ネタオープニングで出だしは快調と思われた。

ZEPP に汗くさい空気が充満したところであやや登場。音楽がぷっつりと止まり、あややが「そういうのいいから」とミキティのヅラを脱がせたところで再び暗転。キャピキャピとした二人の黄色いはしゃぎ声がこだまする中、一曲目のイントロに至るまでの導入ライブ版インストが流れ出した。


甘い誘惑
まともな格好になったミキティによる「とんでもねぇ、あたしゃ美貴様だョ!」のお約束のシャウトによって会場は一気にヒートアップ! さっきの前座は無かったことにして一曲目だ。

さすがツアーも終盤ということで遠方から駆けつけた北海道外のファンの息はぴったり。いっぽう置いてけぼりを喰らう北海道のファンは、曲名に引っかけてステージに向けて膨大な量の北海道名物ジンギスカンキャラメルを投げ入れる。あややはしかとしていたが、ミキティはステージに落ちたそれを嬉しそうに拾って瞬時に口に放り込んだ。しかし露骨なまでの嫌悪感を表情に浮かべ「まじぃ」と一言、後方に顔を背けてペッと一気に吐き出した。バイトスタッフの mixi 日記によるとミキティの唾液キャラメルとしてあとで壮絶な争奪戦になったらしい。

LuLuLu
マイナー歌謡曲路線でいじり甲斐のない曲調とはうらはらに話題を呼んだへんてこな振り付けは生の舞台でさらなる進化を遂げている。あややは芸能の王道をいくジャニーズばりの宙づりで「♪アイラビュー フォエバー でーも さよならー」とわけのわからないことを歌いながら激しく中空を舞い、いっぽうミキティ暗黒舞踏よろしく再びハゲヅラをかぶりなおすと三名ほどのヲタをステージへ無理矢理引きずり出し、踊るでもなくたたずむでもなく、なにか痙攣したような動きに終始しながら真顔で「♪ルールルルー」と意味不明な歌唱をまっとうした。この四次元殺法的なステージングはユーミンこと松任谷由実のシャングリラさえ凌駕するのではと著しく興奮した。

愛情オアシス
ミキティが黒縁メガネを装着してインドネシア語で歌い出すと「それはオアシズでしょ!」とあややからツッコミが入りすぐに曲が終わった。

MC
「もうみなさまご存知とは思いますが、このたびモーニング娘。を脱退することになりました。お騒がせして申し訳ありません・・・」と神妙な面持ちで泣きながら報告するミキティと、「詫び入れるんならそれなりの態度っちゅーもんがあるやろがい」と胸元のチャカを時折ちらつかせながらそんなミキティににじり寄るあやや。「本当に、このたびは、このたびはァァァ!」と半狂乱になって平伏、ステージの床にひたいを擦りつけて土下座するミキティと、「このされこうべか! 足りねぇ脳みそカスカス音立ててモーニング娘。としての約束を破るような淫らな愛欲に溺れちょるのはこのされこうべかァァァ!!」とミキティの頭をハイヒールの尖った部分でおもいきり踏んづけるあやや

イチャイチャsummer
主従関係をはっきりさせた MC から一転、従前の期待どおりイチャイチャとお互いの秘境をまさぐりあい始めるあややミキティ。ぼくは手元のもぐらの局部をサイリウムで刺激することでその場をやり過ごす。

Shall We love
GAM 」の G は後藤真希の G ! を地でいく選曲にごっちんの幻影を追い求めた。

MC

好きすぎてバカみたい
美勇伝説Ⅲで梨華ちゃんが見せた椅子蹴飛ばしおっぱい丸出しプレイを超えるのは難しいと思われたが、そこはさすがのあやや、両手両脚をスタッフに縛られ目隠しをされたあげく巨大な箱に入って穴から頭だけ出して歌い出したかと思いきや、その箱が爆発! 白煙がもくもくと巻き上がり、すわ、あやや爆死か、というかつて日テレの正月番組で披露されたようなイリュージョンを仕掛けてきた。曲は一時中断、あややはいったい何処へ・・・? という緊張と失笑が降り混ざったステージに登場したのは、全身血みどろで立っているのもおぼつかないボロボロのあややの姿・・・そういう過激なショーだった。大迫力であった。

シャイニング愛しき貴方
頭部にツノを生やし関節本ミキを自称すると気持ち悪くヌメった触手に全身を支配されながら鼻声の裏声で独唱し、やがていやらしく絶頂を迎えた。あと、もう嘘つくのやめてダイジェストでいきます。

「シャイニングは大好きな曲なんで歌えて良かった」とかのミキティ MC のあとは「蜃気楼ロマンス」でこれはスケバン刑事の悪夢が甦る。雰囲気だけ地下というかアングラな感じだけどイイ曲じゃないよね。「メロディーズ」は聞けば聞くほどいやな歌詞。実際に歌うと気持ちいいんだけれどもね。間奏で突然拍子が変わるところはハロプロ史上有数の趣深い間奏ぶりなので耳に焼き付けておかなきゃと思った。「愛の船」はスローバラードだけれど骨太でこれが案外よかった。「熱い魂」は今のところ CD 化されていない新曲で初聴だが特にヒネりもないロック的なアレで定型どおりの盛り上がりを演出する。

質問コーナーの MC を挟んで「ここでキスして」。椎名林檎ではない。サビ前の「♪タタッ タタッ」みたいなブレイクは椎名林檎の「本能」を彷彿させるものでワザとなのかなとか思っている。GAM 版「ここキス」は 1 番をミキティが、2 番をあややがそれぞれソロ歌唱という構成。ミキティが演歌とかムード歌謡みたいにおもいっきり歌をメロから遅らせて歌ってるのがあざとい反面、気持ちよさそうではあった。「 From That Sky 」はあややオリジナルでありながらミキティの女郎蜘蛛のような手足の動きに夢中。魅せる動きに限ってはあややよりもミキティに一日の長がある。あややは生来的に色が真っ白なのが依然として目に凄い。

スタンドマイク使用でなんと振り付けがパラパラ風味な「純潔〜only〜」は娘。のセクボとかギャルルとか美勇伝の一切合切とかいろいろ連想させるものではあって軽快にして安直な感もアリアリ。しかしながら会場中を巻き込むのはたしかで音だけ聴くより五割増で愉しい。続いての「涙Girl」は元来ミキティソロ曲でありながらも GAM としての曲の傾向を象徴しているようでもある。激しいながらも渋みが強い。本編ラストの「 FAMILY 」はステージ上も客もタオルを振り回すのが恒例となっているのであった。そんな事実など知らず汗もかくまいとタオルも持参してなかったのでここはベタにサイリウムをぶん回すことで難を逃れる。ちなみにハロプロにおけるタオルミュージックといえば美勇伝「唇から愛をちょうだい」を超えるものはない。

アンコールを挟んで「 …H 」はやっぱりドーンと核になるようなよくできた曲だと思うな。タイトルがアレすぎるから印象うすすぎるけど。間奏のヨレヨレ音色も生きるアジアン優雅な振り付けに酔いしれる。なごやかな最後の MC を終えて最後は「 Thanks! 」。当たり前のようにここに配置されてしまうと、もはやダメな曲には聞こえないんだなぁ。

で、ファミリー席なのに筋肉痛。