君が人生のとき

基本的に石川さんのスチャラカな態様に毒されっぱなしの美勇伝のコンサート観覧の中で、ぼくの脳内岡田唯さん比率がいちばん高まるのは、幕間のおなじみ VTR 人形劇コントのときです。今回が第三弾。『好評につき』という宣伝文句がこれほど何の後ろめたいこともなくそのままの意味で当てはまるのも珍しいだろう。

セリフの滑り出しはたしか三回とも同じはずで、岡田さんお約束の「すいませーん、お水くださーい」に、いよいよ来た来た来た来たと昂ぶりを抑えられない。

そう、この人形劇コントではいつだって岡田さんが完全に主導権を握っているのだ。意気揚々と全編ボケッぱなし。さすがのリーダー石川さんもこのときばかりは画面にセンターポジションで収まっているとはいえ脇役に徹している。いや一応ピンク色の声を張り上げてヒステリー気味に突っ込んだりはしているのだが、両脇の猛獣をなだめる役割を課せられているためいちばん目立っていない。生ステージでの目立ちぶりを考えるとそれくらいの地味さが妥当ともいえる。

関西人だからという安直な理由で片付けてよいものかともかく天性の勘がありありと覗える岡田さんは、MC などでもそれくらい前に前にとグイグイやってくれればいいのだが、残念なことに石川さんや三好さんがあまり的確なツッコミを入れてくれるような人たちではなく、また岡田さん自体もたまに要領を得ないふしぎなすっとぼけ方をなさるお人なので、結局は台本どおりの人形劇が逆にみんな安心、ってことになるだろうか。

三作目にして未だに誰が書いているのか作者未詳の謎めいた台本は、おそらく同一人物の手によるものに違いない。テレビと漫画で育った関西文化系 30 代芸人のエッセンス丸出しで、僕らみたいな世代の男性客にとってはことごとく外すことがない。演出も演出で、たとえば「岡田ぴょーん&スタッ」のコンボにおける「スタッ」なぞ、岡田と三好の息抜き気味の絶妙なイントネーションは思い出すだけでも笑いがこみあげる。

また三好が「岡田キーック!」(もはや定番)を喰らったあとにいきなり劇画チックなアニメーションが展開される「グハッ」もあまりにも鉄板すぎる。いくら見てもこらえられない。「同じグループの年下メンバーに跳び蹴りを喰らって女の子アイドルが血ヘドを吐く」なんて、たとえ戯画的に処理されていることとはいえ、いい意味でバカだとしか言いようがない。

楽屋裏でナマのニンジンを貪り喰らっている、というトチ狂った岡田の様子を三好が報告するくだりで、岡田が「くそっ、どうせなら最初っからナマにしとくんやった」って言ってたよ、みたいなのも本当に意味はわからないのだけど深みと味わいがある。

唯一、石川さんがツアータイトルであるところの「ウサギと天使」について真面目に訥々と語るという場面で、しかしそのあとの処理が、ただ石川さんをさらっと軽くスルーするのみで、くだりとしては弱めに終わってしまったのが消化不良だった。そこだけは変に間延びした。

それ以外の出来は完璧に近いと思う。三回とも笑った。この人形劇の出来が「美勇伝説」シリーズのすてきなイメージの一翼をたしかに担っている。