さよならビリージョエルさん

ビリージョエルさんの札幌ドームでのコンサートのチケットを、どこかへ無くしてしまいました。


それも自分の座席につく前に、です。


札幌ドームで12 月 3 日(日)に開催されるビリージョエルさんのコンサートを見物するため、ぼくはその日、開演の 30 分ほど前に札幌ドームに到着して、入口でスタッフの人にチケットをちぎってもらい、また今やほとんど形骸化している持ち物チェックなどを受けて、札幌ドームのロビーの中へ入りました。

そこまでは良かったのです。

しかし、そのチケットの『半券』が、いくら探しても見つからないのです。


「ドームの中に入場できたんだから、それでいいじゃないか」


と一瞬思いますが、違います。


半券持ってないとまずいのです。


なんとなれば、コンサートとかよく行かれる方はご存知のように、会場の中に入ってからも我々立場の弱い客は場内のバイトの係員などから手持ちチケットのチェックなど受ける仕組みになってまして、ドームのアリーナ席ならスタンドからアリーナへ踏み込むときにまず一度、そして前のほうの座席に行くなら前のほうの座席にいく寸前の通路の入口あたりでもう一度・・・・・・と、自分のお目当ての座席に辿り着くまで再度の関門が待ちかまえているわけです。

それというのはもちろんチケットも持ってない人間をいけしゃぁしゃぁと前のほうの座席に行かせないための、正しい対処法ではあるんですよね。

だけどぼくは本当に前のほうの座席のチケットを持っていたはずなのに、その肝心の半券が無い。無くしてしまった。そんなわけで一瞬にして「チケットを持たざる人」になってしまったのです。


これはちょっとやばすぎる。顔面蒼白です。



そりゃ必死に探しましたよ。


上着ジーンズのポケットの中、カバンの中、財布の中、パンツの中、鼻の穴、腋の下、肛門・・・・・・とにかく考え得るだけのありとあらゆる部分を探しましたが(一部ウソ)まったくどこにも見当たりません。

おそらく途中で鼻をかんだときにそのティッシュと一緒に札幌ドーム内のごみ箱に捨てたという可能性がいちばん高かろうとは思うのです。しかし公衆の面前でごみ箱の中を漁るのはあまりにもリスクが大きすぎる・・・。

それでも背に腹は替えられませんので必死でめぼしいごみ箱を漁りました。さながらホームレス。


で、そんなことをやっていると女性の警備員が無言ですーっと近寄ってくるわけですね。案の定というべきか、もう確実にバリバリ怪しまれています。

どうしょうもないので諦めてその警備員の人に「チケットなくしちゃいました・・・」と半泣きで申告しました。これは正直に言うしかない。あとはどうとでもなれ。


すると、ちょっと背の低い女性の警備員が、意外と優しかった。


「お連れの方はいらっしゃいますか?」
「いえ、特にひとりですが・・・」
「座席番号は覚えていますか?」
「あ、はい! アリーナ A-5 ブロックの 1 番です」
「え、1 番?」
「 1 番です」
「わかりました。ちょっと待っててください・・・」


この流れ。

すなわちどうやら、なんとかなりそうな空気です。


ここで最大級に運が良かったことには、僕が座席番号を即答できたことで、それがそもそも「アリーナ A-5 ブロック 1 番」という、とても簡潔にして明瞭だったものだった、ということです。

ヤフオクで「アリーナ A-5 ブロック」といういかにも良さげな座席を競り落としていたのですが、それだけならまだしも、いざチケットが届いてみたら、なんと座席番号が「 1 番」なのでした。超良席っぽいし覚えやすいし。これでもしも「 274 番」とかだったらたぶん覚えてなかったでしょう。

そして道は開けた。


警備員は手持ちの携帯電話で各所へいろいろ連絡を取ってくれて、「もしもその座席に誰も座ってなければ、いいですよ」と言ってくれました。また「もし誰か座ってたらごめんなさい」とも。僕は自分がどこかへ無くしてしまったチケットを誰が拾得することなく、また悪用することのないことをただ祈るだけでした。


結局、10 分くらい連絡を取ってくれたのち、「誰も座っていないのでお通しします」ということになりましたよ! そして開演時間の直前も直前、札幌ドームのロビーに客もあまりいなくなってから、僕は別の係員の女性に金魚のフンのように連れられて、チケットチェックの関門も「この方はお通ししてください」と妙な感じでくぐり抜け、無事、最前列の座席に到着することができたのです。


まとめると

・「座席に着く前にチケットを無くしてしまう」という地獄に叩きつけられるような凡ミステイク
・女性警備員がいい人だったという幸運
・自分が自分の座席番号をちゃんと覚えていたという奇跡


これらの激動が重なって、最終的には事なきを得ました。


開演前にすっかりくたびれてしまいました。